手術をせずに快適に過ごせるように 愛情いっぱいに向き合ってきた愛犬のみとり

たくさん歩いてたくさん休憩するのがあじみくんのお散歩スタイルで、長い時だと散歩に4時間かかったこともあった(朋子さん提供)

 いつか来るペットとのお別れの日――。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。

 2022年5月末に14歳3カ月(保護犬のため推定年齢)で虹の橋を渡ったあじみくん。飼い主の朋子さんに、あじみくんの亡くなった経緯や、治療方法、死に向き合うことについてお話をお伺いしました。

(末尾に写真特集があります)

ある日、口腔内メラノーマを発見…

――あじみくんはなぜ亡くなったのでしょうか?

 口腔(こうくう)内メラノーマ(悪性黒色腫)で亡くなりました。亡くなる3カ月くらい前に、布団などにちょこちょこ血が付いていることがあり、右頰が腫れていたので唇をめくったら、メラノーマがありました。2センチほどの大きさでした。

――メラノーマを見つけたときのお気持ちをお聞かせください。

「気が付かなくてごめんね」と。ずっと泣いていました。

――すぐ治療に入ったのでしょうか?

 この病気は非常に悪性度が高く、進行スピードも早く、腫瘍(しゅよう)発見時にすでに転移があることが多いという点、それからあじみの年齢や体質、フィラリア症などの病歴から外科手術の選択は難しいと判断し、あじみのQOL(※)的にもないな……と、自然療法を選択しました。
(※Quality of life/生活の質)

なんでも味見をしてしまうので「あじみ」という名前になったそう。これはキャベツを味見中(朋子さん提供)

情報収集をして自然療法に長けた獣医のもとへ

――あじみくんの自然療法は具体的にどのようなものだったのでしょうか?

 口腔内メラノーマの確定診断が出る前から、私の判断でコルディM(冬虫夏草)の服用を開始しました。その後、自然療法が得意な動物病院を受診し、ホモトキシコロジーの注射と補液の点滴を2日間続けて行いました。食欲が落ちていたあじみの食欲が、明らかに戻ったのがわかりました。数日後、口腔内メラノーマの確定診断が出ました。

――他にどんな自然療法を行いましたか?

 手作り食を開始しました。ちゃんと食べてくれました。通院でホモトキシコロジー注射に加え、丸山ワクチンの注射も開始。これらは週2回のペースで継続していて、自宅でも行っていました。

 でも、1カ月で腫瘍はあっという間に大きくなり、4センチ×2.5センチほどになり、腫瘍からの出血が気になったため、田七人参の漢方を追加しました。その頃、胸部のレントゲンで肺転移を確認していたので、万が一に備えて酸素濃縮器もレンタルしていました。

――自然療法の効果はどう感じましたか?

 この病気になった犬は、どんどん弱っていき、苦しいのが続いて食べられなくなり亡くなってしまうというイメージがあったのですが、あじみは亡くなる直前まで元気で、普通に散歩をしていました。食事は流動食でしたが食べられていましたし、いい便が出ていました。「もっと生きてくれる」と期待できるような経過をたどっていました。

 寿命が延びたというわけではないですが、自然療法をしたからこそ、亡くなる直前まで普通に過ごせたのかなと思っています。

――普通に過ごせていたあじみくんは、どのように亡くなったのでしょうか?

 亡くなる4日前に急に立ち上がれなくなったんです。それを見て、「肺の転移が進んでいるのかな?」と思いました。

 食べていた流動食は食べられなくなり、その3日後に呼吸が止まったので、人工呼吸と心臓マッサージをしたところ、蘇生しました。翌日も早朝と昼の2回、呼吸が止まりかけたのですが、呼びかけたら戻ってきてくれました。でもその日の夜、旅立ちました……。

亡くなる8日前のお散歩の様子。ゆっくりではあるものの、亡くなる5日前まで自分で歩いてたあじみくん(朋子さん提供)

譲渡されたときから死に向き合ってきた

――朋子さんにとって、「ペットの死に向き合う」とはどういうことでしょうか?

 とても難しい質問ですが言葉にするなら、後悔しないように、毎日、愛を持って向き合うということです。死んでしまったときや死んだ後だけでなく、私は飼っているときからずっと死に向き合ってきたなと思うんです。

 保護施設にいたころからからあじみはフィラリア症だったので、みとる覚悟で引き取りました。その後は愛情いっぱいに接して、死に向き合いながら一緒に生きてきたのだと思います。

――同じ病気を抱えた犬の飼い主さんに伝えたいことはありますか?

 必要なときに最適な選択ができるので、知識はあったほうがいいと思います。もし知らなくてケアができなかったら、悔しいと思うんですよね。

 私はあじみが病気になってからいろいろな文献などを読み、病気の治療方法や緊急時の対症療法などを会得しました。人工呼吸と心臓マッサージは覚えておいてよかったです。知っていたおかげで、あじみの蘇生ができました。

肺転移があったため、万が一に備えて早めに酸素濃縮器をレンタル。本格的に使いだしたのは最期近くになってから。借りておいて本当によかったそう(朋子さん提供)

<取材を終えて> 
 あじみくんを迎えた2015年2月から丸7年間、「毎日を大切に後悔しないように愛情を注いで共に生きてきた」と話してくださった朋子さん。現在のお気持ちをお聞きしたところ「ありがとう、大好きだよ、だけです」と答えてくださいました。常に後悔しないようにしてきた朋子さんが選んだ最期の3カ月の過ごし方は、きっとあじみくんにとっても納得できる時間だったのではないかなと筆者は感じました。

【前の回】夫婦で一生背負っていく 余命宣告された愛犬の安楽死を決断した飼い主の思い

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岡山由紀子
某雑誌編集者を経て、2016年からフリーのエディター・ライターとして活動。老犬と共に暮らす愛犬家。『人とメディアを繋ぎ、読者の生活を豊かに』をモットーに、新聞、雑誌などで執筆中。公式サイト: okayamayukiko.com

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この連載について
ペットの死に向き合う
いつか来るペットとのお別れの日。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。みなさんの思いを伺います。
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