とっさの予感が的中!? 茂みの奥から生まれたばかりの子猫が落ちてきた

保護犬と保護猫
わが家の元保護犬と元野良猫。今はこんな感じだけど……幸せかい?

 月刊誌『天然生活』『ESSE』で編集長をつとめ、数多くのヒット書籍をつくり続けている編集者の小林孝延さんこと「とーさん」は、困り顔の元保護犬「福」と元野良猫の「とも」「もえ」と暮らしています。今回は、自宅の庭に姿を現した子猫と母猫についてのお話、第1回目です。

(末尾に写真特集があります)

玄関先の茂みを覗くと落ちてきた、生まれて間もない小さな黒猫

 本格的な梅雨入りを目前に控えたある日の朝のこと。

 早朝散歩から帰ってきた「福」に玄関先で水浴びをさせようとしていると、1匹のスズメバチが現れました。

 ぶーーーーん(羽音)

 うわ、やば!

 と思うと同時に、なぜだかこの日は「あれ、もしかしてこの辺に動物の死骸とかがあるのかな?」と不吉な思いが頭の中をよぎりました。死肉を求めてスズメバチが飛んでいるのではないか、と。気になって玄関先にある木の茂みを恐る恐るのぞいてみると、なんと生まれてまもない黒猫が、茂みの上のほうからぽとりと落ちてきたのです!

 え!? なに? 子猫?? うそーーん。

以前姿を現していたむぎわら猫が、2匹の子猫を出産していた

 よたよたと歩こうとする子猫に思わず手を出そうたしたその瞬間! 奥から猛烈な勢いで母猫が飛び出してきました。あまりの迫力にとーさんは気圧され、2、3歩あとずさりました。よくよく見ると、母猫はここしばらく姿を見みかけていなかった、時々ベランダに遊びに来るむぎわら猫でした。

 思えば今年の4月、わが家のベランダに突然姿を見せたむぎわら猫。その姿をインスタグラムに載せたところ、「この子はおなかに赤ちゃんがいるんじゃないですか?」というコメントが寄せられました。

 実はとーさん、妊娠している猫を見たことがなく、その時は「まさかやー」と冗談にしか聞こえてなかったのです。むぎわらちゃんはそれから時々ベランダに水を飲みにきていたのですが、いつ頃からから姿を見せなくなっていたのでした。

ベランダに野良猫
初めてベランダにやってきた頃のむぎわらちゃん。確かにお腹が大きい?

 さみしいなあ、でもきっとどこか居心地のいいおうちが見つかったのかな、と思っていたところで、まさかの出産! しかもわが家の敷地で!!!

 よく見ると母猫の少し後ろには、むぎわらによく似た小さなしましまの子猫がもう1匹。どうやらむぎわらちゃんは、2匹の子猫をせっせと育てていたようでした。

過酷な季節の到来を前に、強まる「猫たちをなんとかしなければ」という思い

 さて、困った。これはどうしたものか。

 あまりにかわいい子猫が2匹。しかも玄関のドアを開けると見えるその場所で、母猫が子育てしているのです。もうすぐ本格的な梅雨、そして真夏。空からは腹をすかせたカラスたちも狙っています。しかも今はよい隠れ家になっているこの場所も、夏になると植栽業者が入って刈り込まれることになっています。それまでになんとかしなければ……。

 野良猫の保護に詳しい猫先輩たちに連絡してアドバイスをもらったり、とーさんが暮らす地域でボランティア活動をするベテランの方にも意見を聞いたりしました。しかし、聞けば聞くほど悩みは深まります。地域のボランティアの方からはズバッと、「子猫はきっと飼い主がすぐ見つかりますから、費用負担さえしてくれたらこちらでお手伝いできます。でも、母猫はそうはいかないと思います。どうしますか?」と。

野良猫の親子
子猫と母猫。後ろの茂みにもう1匹潜んでいる

 え、どうしますか? ええ、どうしましょう……。おろおろするとーさん。

 捕獲して、去勢・避妊手術をしてふたたびリリースする「TNR」という手もあります。でも、まだまだ子猫も小さくて、母猫と一緒にいたほうが幸せな時期に、僕が勝手に捕まえて手術して、母猫と子猫を引き離していいものか……。それはぼくのエゴではないか?

 じゃあ、全部うちで引き取る?? しかしすでに犬1匹に猫2匹。ここに親子猫が3匹加わることになるのです。来年には娘も独立して家を出て行く予定の小林家。一人暮らしの初老のおじさんがこれだけの面倒をみるのは逆にリスクではないのか? 人間も猫も犬も元気な時はいいけれど、もしものことが起きた時責任は取れるのか。

 いったいになにが正解なのか……。

 ぐるぐると頭のなかでいろんな思いが巡ります。

優先すべきは今目の前にある「命」であるということ

 犬猫の問題は十人いれば十人の正解があります。同じように「小さな命を守る」ことを目的としていても、その方法論はさまざま。ときに意見が対立することもあるでしょう。だからこそ、誰かが言うから、とか、あの人はこう言うから、と他人任せにしないことが一番大事なのだと、今回痛切に感じました。

 自分で責任をしっかり負うこと。そして、優先すべきは「命」。

 そうした結論に達したのは、信頼する猫先輩たちの教えがあってこそではあるものの……だめだめだめ。一番大切な事実だけにフォーカスしよう。今目の前に命がある。そして、それは今守ってあげなければ、この先危険にさらされる可能性がある。じゃあどうするのか。

 答えはもう決まっています。

 とーさんはアマゾンで捕獲機と手を保護するペットグローブ、そして赤外線温度センサーで生体反応を感知してビデオが撮れるハンティングカメラを購入。

 親子猫捕獲作戦がスタートしたのです。(次回につづく)

(次回は8月20日公開予定です)

【前の回】さっき食べたのにまた「ちょうだい!」 元保護犬「福」と愛猫2匹のごはん事情

小林 孝延
編集者・文筆家。出版社在籍中は『天然生活』『ESSE』の元編集長、『ハニオ日記』石田ゆり子著ほか、ライフスタイル系の雑誌・書籍を多数手がける。2023年10月に著書『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(鳴風舎)を刊行

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この連載について
とーさんの保護犬日記
困り顔の元保護犬「福」の「とーさん」になった編集者の小林孝延さんが、いとおしくも前途多難な保護犬ライフを語ります。
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