いつもの公園で、元気だったころの慎之介くん(景子さん提供)
いつもの公園で、元気だったころの慎之介くん(景子さん提供)

優しい亡くなり方だった タイミングを見計らって虹の橋を渡った愛犬と愛猫

 いつか来るペットとのお別れの日――。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。2021年7月にコーギーの慎之介くん(享年14歳)、そして今年6月に雑種猫のうにちゃん(享年21歳)をお見送りした景子さん。動物に囲まれて過ごす生活を大切にされている景子さんにいろいろお話をお聞きしました。

(末尾に写真特集があります)

菌に体が勝てず亡くなった

――コーギーの慎之介くんはどのような経緯で飼うことになったのですか?

 私がブリーダーさんから買ってきて、母の誕生日にプレゼントしました。コーギーは介助犬になるとどこかで聞いたので、父と祖父母の介護をしていた母の助けになってくれればなと。

――その慎之介くんはなぜ亡くなったのでしょうか?

 褥瘡(じょくそう)による敗血症でした。ばい菌が体に入って、菌に体が勝てなくて亡くなりました。

 14歳で、老化による筋肉低下があり、ほふく前進をするようなことが度々ありました。歩けたのですが、立ち上がるときにうまく立ち上がれず、床のじゅうたんで体がこすれてしまっていたようです。発熱して呼吸が苦しそうだったので病院へ連れて行ったら、肉球のこすれと、ひじのほうは骨のほうまで穴が開くくらいこすれていました。

――病院へ連れて行ってから亡くなるまでの期間はどのくらいだったのでしょうか?

 病院で傷をみてもらってから2日で亡くなってしまった。もともとクッシング病もあったので、熱はそちらが原因かもと言われていたのですが、亡くなった後で届いた採決データを見たら、炎症値(CRP)が24で、敗血症ショック状態に近い状態だったと判明しました。でも、2日くらいしか苦しそうな姿は見せませんでした。

コーギー
亡くなる前日、熱があったのでアイスノンをあごに置いていたが、ぐったりしていた慎之介くん(景子さん提供)

タイミングを見計らって旅立った

――「あの時こうしていれば」のような後悔はありますか?

 いえ、後悔はないです。

 慎之介が亡くなる1カ月前、私の妹が生きるか死ぬかという、とても大変な出産をしました。2回ほど手術をして退院する際に、「産後は実家に戻りたい」という話があったのですが、家には慎之介がいたので、新生児と一緒はどうなのかな?と家族で話していました。でも、妹が退院してすぐ、慎之介が亡くなって……。結果、バトンタッチで産後の妹が実家に帰ってくることになりました。

――絶妙なタイミングでしたね……。

 慎之介は聞き分けのいい子だったので、自分でタイミングを見計らって逝ったのかなと感じました。

 苦しむ姿をほとんど見せずに、最後まで周りに負担をかけずに旅立ちました。母も妹も私も、家族みんなが「慎之介、ありがとうね」という感じです。家族の状況を見ながら、「赤ちゃんもくるし、自分の役割は終わった」と慎之介が自分で判断したのかなと。

コーギー
慎之介くんの遺影。「きっと今も短い手足で走り回ってる」と景子さんは思っている(景子さん提供)

21歳の愛猫も優しい亡くなり方だった

――猫ちゃんも飼っていらっしゃるのですよね?

 愛猫の「うに」は私の家で21年間飼っていました。でも実は、おととい亡くなり、昨日葬儀でした。

 20歳のとき、友人の家で生まれた子猫のうにをもらって育ててきました。今年の5月初旬くらいから痩せ始めて、歩いても転んだり、排泄(はいせつ)障害なども出ていました。ちょっとずつ弱っていったので、私は亡くなることへの覚悟ができました。

 ずっと頑張っていたうにに「もう頑張らなくていいよ」と声をかけたのですが、本当はうにが私に声をかけたのではないかな?と思うんです。最後、腕の中で呼吸が止まったかもわからないくらい静かに息を引き取りました。

 目を背けたい気持ちと見届けたい気持ちもあって、その気持ちを察してくれて、優しく亡くなったと思いました。

雑種猫
20年前のうにちゃん。1歳のころ、浴槽に入って遊ぶのが好きだった(景子さん提供)

ペットの死に向き合うことで学んだ事が多かった

――2年続けて大切な愛犬と愛猫を亡くして悲しいですよね……。

 いえ、悲しくなくて、さみしいだけです。お互いがそんな思いなのかなって。

 慎之介にしても、うににしても、ありがとうという感謝しかないんです。後悔は残っていません。ペットロスにもなりませんでした。

――景子さんにとって「死に向き合う」ということはどういうことでしょうか?

 私は医療従事者なのですが、すごく勉強になりました。仕事柄、往診へ行くのですが、先週行った老人ホームのおじいちゃんとおばあちゃんが、今週行ったらいない、みたいなことがしばしばあって、「死」に慣れてしまっていました。

 でも身近なところで死があると、「見ていられない」「逃げ出したい」という思いにかられるようになり、業務であっても業務的にではなく、患者さんやご家族からもお話を聞くことが増え、いろいろと話せるようになって、よりよい関係を築けるようになりました。仕事に活かせています。

 そして、「お別れの時」は誰にでも絶対くるので、それは「そういうもの」だと思い、それまでにいっぱい思い出を作っていくことを学びました。

コーギー
景子さんの結婚式にも特別参加した慎之介くん、これも良い思い出(景子さん提供)

 景子さんのお母さまは、慎之介くんを亡くしてから丸1年、今も毎日2回、慎之介くんの写真を首からぶら下げて、お散歩をされているそうです。景子さんはうにちゃんを亡くして「席がひとつ空いたので保護猫を迎えたい」とお話ししてくださいました。優しい亡くなり方をした慎之介くんとうにちゃんのご冥福を心よりお祈りしております。

【前の回】また会いたいといつも思う 20歳の愛猫と家族を立て続けに亡くした飼い主の思い

岡山由紀子
某雑誌編集者を経て、2016年からフリーのエディター・ライターとして活動。老犬と共に暮らす愛犬家。『人とメディアを繋ぎ、読者の生活を豊かに』をモットーに、新聞、雑誌などで執筆中。公式サイト: okayamayukiko.com

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この連載について
ペットの死に向き合う
いつか来るペットとのお別れの日。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。みなさんの思いを伺います。
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