お留守番が長いとお気に入りのタワーでふてくされる事もあったので、いつも早く家に帰らないと、とかおりさんは思っていた(かおりさん提供)
お留守番が長いとお気に入りのタワーでふてくされる事もあったので、いつも早く家に帰らないと、とかおりさんは思っていた(かおりさん提供)

愛猫を亡くし1年半 今も反射的に涙が出る「私は幸せな飼い主だった」  

 いつか来るペットとのお別れの日――。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。2020年12月にスコティッシュフィールドのメイちゃん(享年14歳)をお見送りした、かおりさん。メイちゃんを亡くして約1年半、今でも涙が自然と出てしまうそうです。そんなかおりさんに、当時のお話しや、現在のお気持ちをお聞きしました。

(末尾に写真特集があります)

突然発作を起こすようになった

――メイちゃんはもともと持病などがあったのでしょうか?

 メイは12歳まで病気ひとつしたことがなく元気で、病院知らずの子でした。でも2019年から発作を起こして倒れるようになりました。その発作は、最初は半年に1度くらいだったのが、どんどん頻度があがり、2020年春ごろから2週間、1週間に1回の頻度になっていきました。

――それはどのような発作なのでしょうか?

 意識はあるけれど、歩けなくなり、ばたーんと倒れて5~10分くらい動けなくなる発作でした。そして亡くなる2カ月くらい前に、それまでになかったような、平衡感覚を保てなくなって旋回し、大きな声を出して鳴くような発作を起こしました。

ペットの死に向き合う
2019年4月、初めて発作を起こした日、記録に残さねばと思い撮った1枚。メイちゃん自身が発作に困惑しているように見えた(かおりさん提供)

MRI検査でも原因がわからないまま

――病院ではどのような診断を受けたのでしょうか?

 2019年に発作を起こしてから、ご縁があった動物病院へ1カ月に1回から2回ほどのペースで通っていました。12歳という年齢だったので、腎臓も多少悪いし、心臓に影が見られ、肺も形がおかしいと言われましたが、それ以外の異常は見つかりませんでした。

 2020年の春ごろに発作が増えてからMRIを撮ったのですが、専門家に画像を診ていただいても表立った原因はなく、毎回、同じ分数の発作なので、「脳の異変だろう」と判断されました。脳から出る信号的な問題があるのではないか……とのことでした。

――投薬治療は行いましたか?

 いろいろな薬を飲ませていましたが、亡くなる2カ月前に大きな発作を起こしてから、急激に体調が悪化していきました。食べるのが好きだった子だったのに、食べない日が増え、痩せていき、毛並みが悪くなって、「最期が近づいているな」という感じが見て取れました。

 薬は発作を抑える薬や、食欲を増進させる薬をもらっていたのですが、毎日結構な量の薬を飲ませるのも難しく、その薬の効果も見られず、飲み続けたものの改善はしませんでした。最期は、呼吸も苦しそうで、眠れなかったり、せきが出たりしていました。

ペットの死に向き合う
亡くなる2日前、獣医さんの勧めでレンタル酸素室を用意。一緒に過ごせる日はもう数日しか残っていないとわかっていた(かおりさん提供)

1年半、いまだに涙が自然と出てしまう

――2020年12月に亡くなって、約1年半が経ちますが、現在のお気持ちを教えてください。

 胸が苦しくて痛い思いは、じつはあまり変わっていなくて、夜寝るときに涙が出る回数が当時より減ったかな、くらいでしょうか。小さいころから猫には親しんできましたが、看取(みと)りをしたのは初めてで、よく聞くペットロスというものなのかなと感じています。

 夜寝るとき、「悲しいから涙が出る」というより、「反射的に涙が出る」感じです。メイが亡くなってから、ひとりで家にいるのがつらいので、何かしないと、と思って外出するようにしたり、旅行に行くようにしたりしています。

――コロナ禍で外出というのも制限があって大変でしたね。

 そういう意味では、メイの体調が悪くなってからコロナ禍になり、在宅勤務になって、そのおかげで最後の1年間、しっかりケアをしてあげられたと思います。やれることはやったと。ずっと一緒にいて、ずっと見ていられましたし、発作が起こるときいつも一緒でした。発作を起こした時は、メイもきっと不安だったと思いますが、一緒にいて「大丈夫だよ」と声をかけていました。

――今後また猫と暮らしたいですか?

 そうですね、今はまだその気持ちにはなれないですが、いつか一緒に暮らすとしたら、保護猫や障がいがある猫を迎えたいなと思います。

 メイの調子が悪くなってから、いろいろと猫のことを検索することが増えて、保護猫や恵まれない猫がたくさんいることを知りました。自分の性格と生活環境を考えると、家にいることが好きで、動物のお世話で嫌な思いをしたことが一度もないので、そこの敷居は高くないと思いました。

 今回、看取ったときは、本当につらかったのですが、動物は先に亡くなってしまいますから、自分で看取れたことが本当に幸せだったと自信をもって言えます。私は本当に幸せな飼い主でした。そして、メイにも「この家にいられて良かった」と誇りに思って欲しいなと思います。

ペットの死に向き合う
高齢猫用タワーへ買い替えたころ。タワーのボックスからのぞくお顔がとても愛らしい(かおりさん提供)

 メイちゃんが生後2カ月のころから、14歳6カ月で亡くなるまで、メイちゃんの猫生を共にすることができ、そして、お骨上げをひとりで行ったというかおりさん。メイちゃんの猫生すべてに寄り添うことができたことが、とても幸せな事だったとお話しくださいました。14年という時間を大切に過ごされてきたのだな、メイちゃんはとても幸せな猫生だったのだろうなと感じました。

【前の回】ずっと「ごめんね」しか言えなかった 亡き愛犬が教えてくれた生きることの尊さ

岡山由紀子
某雑誌編集者を経て、2016年からフリーのエディター・ライターとして活動。老犬と共に暮らす愛犬家。『人とメディアを繋ぎ、読者の生活を豊かに』をモットーに、新聞、雑誌などで執筆中。公式サイト: okayamayukiko.com

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この連載について
ペットの死に向き合う
いつか来るペットとのお別れの日。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。みなさんの思いを伺います。
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