ずっと「ごめんね」しか言えなかった 亡き愛犬が教えてくれた生きることの尊さ
いつか来るペットとのお別れの日――。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。
2021年6月に愛犬のトイプードルの、れなちゃん(享年17歳)を介護の末にみとった圭さん。れなちゃんが亡くなる1カ月半前からは休職して、看病にあたっていたそうです。当時の圭さんの心境や、そこから9カ月経った現在のお気持ちなどをお伺いしました。
慢性腎不全と膵炎を併発
――れなちゃんは病気で亡くなったのでしょうか?
亡くなる1年前から慢性腎不全を患い、確定診断はしていないのですが、最期は膵炎(すいえん)を併発して亡くなりました。
――なぜ慢性腎不全に気が付いたのですか?
もともと少し腎臓の機能は弱っていたのですが、16歳になる直前に、ベッドから落ちて股関節脱臼をし、全身麻酔の手術を2回受けました。手術によって内臓機能が悪くなること、週に1回の皮下輸液をすることになると術前にに説明されました。事前の説明通り術後に腎機能が低下して腎不全の状態となったため、手術後は月1回の血液検査と、健康状態に応じた輸液を週1回から2回程度続けていました。
相反する腎食と膵臓食に悩んだ
――れなちゃんの看病で大変だったことはなんですか?
食餌(しょくじ)の調整でしょうか。手術後は腎臓に負担をかけないよう、たんぱく質を減らし、脂質と炭水化物を中心にした食餌を徹底しました。
でも9カ月目に急に下痢が始まって、病院にすぐ連れて行ったら、炎症とリパーゼの値が悪く、「膵炎かも」と言われ、そこから体調が悪化していきました。
膵臓(すいぞう)と腎臓は相反する食餌なのですが、膵炎を悪化させない食餌を優先することにしました。油を少なくして、たんぱく質を採らせる。でもそうすると、腎臓の値が上がってしまうので、苦悩しながらあげていました。血液検査で数値が良くならないのに続けなければならない……。亡くなるまで3カ月、悩みが絶えず、失う恐怖が常に隣り合わせで、本当につらかったです。
――食餌は最後まで食べられていましたか?
もともと食いしん坊な子だったので、食べることに困ったことがなく、最後の最後まで採れていましたが、量は徐々に減り、食べても吐いてしまうようになりました。食べるけど消化できず、もともと2.6キロあった体重は、亡くなる3カ月前は1.9キロ。亡くなるときは1.7キロまで落ちていました。
やっと「ありがとう」が言えるようになった
――今のお気持ちを教えてください。
亡くなってからずっと「ごめんね」しか言えませんでした。病気を治してあげられなくてごめんね、ちゃんと面倒をみてあげられなくてごめんね、いつもお留守番させてごめんね。何をするのも「ごめんね」でした。でも、最近はやっと「ありがとう」と言えるようになりました。少しだけですが進歩です。
――お話をお聞きして、十分に看病をされて、きちんとみとってあげられたと思いましたが、何か後悔があるのでしょうか?
15歳からの1年間は後悔が残るものの、その時にやれることはやったと思いますが、それよりもその前の15年をとても悔いています。
居ることが当たり前の日常で「すごく大切にする」というよりは、「当たり前に居る」という感じでした。れなが病気になって、色々気づかされました。私の心の支柱が、れなでした。いつかは亡くなるとわかっていたのに、その準備ができていませんでした。
そして、れなに生きることの尊さを教えてもらいました。一緒に過ごす日々の幸せは何事にも代えがたいということ、一緒にいられたことが当たり前のことではなかったと、今はわかります。
れなちゃんを亡くして9カ月が経ち、圭さんは「自分では今は新しい子を飼うことはできないから」と、老犬介護士の資格を取る勉強を始めたそうです。愛犬が元気なうちには気が付けない「生きる尊さ」と、「大切にする」ということを、一人でも多くの方お伝えできればと、涙を流しながらお話ししてくださいました。
最後まで圭さんに愛され、腕の中で息を引き取ったれなちゃんは、きっと近くで今も圭さんを見守っているのではないかなと著者は思います。
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