迎えた子犬は頭突きし暴れるボストンテリア 恐怖すら感じた私に育てられるだろうか

「出せー!」。おうちに来た初日から暴れまくった(提供:お母さん)

 犬との暮らしにずっと憧れ続けた。あれこれ考え、たくさん準備し、満を持してお迎えした子犬。なのにかんで頭突きし暴れる子犬に恐怖すら感じるように……。「私に育てられるんだろうか?」。救いを求めたネットで、UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の高橋信行店長の記事に出合う。

 激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ!

「家族が不安に陥るほどの強い子犬もうちでは『逸材』。遊んで遊んで遊びまくれ!」

(末尾に写真特集があります)

念願の犬との暮らし

「ようやく犬と暮らせる!」

 子どものころから犬を飼いたかった。しかし、出張が多く家を留守にしがちの仕事であきらめていた。そんな二人が結婚。お母さんが仕事を辞めたのをきっかけに一度は実現しそうになったが、病を患いそれどころではなくなってしまった。それから6年余り。

「私の体調も回復。やっと犬を迎えられると、子犬を探し始めました」

 鼻ぺちゃ系がいい。夫婦とも散歩が好きなので、いろんなところに一緒にお出かけできるアクティブな子を、と犬種はボストンテリアに。

 初めはブリーダーから迎えたいと考えていたが、ネットで検索するうちに迷ってしまったという。

「当たり前かもしれませんが、いいことしか書いていない。本当にいいブリーダーさんなのだろうか? 素人の私たちでは判断が難しいと感じました」

「ブリーダー」とひと言で言っても、極端に言えば、特定の犬種を愛しその血統を守ることを使命とする「シリアスブリーダー」と、繁殖と販売を目的とした「パピーミル」まであり、玉石混交。だが、日本ではどちらもが「ブリーダー」と総称されているのが現状だ。お母さんが戸惑うように、詳しくない人がシリアスブリーダーにたどり着けることはなかなか難しいだろう。

 お父さん、お母さんは大手ペットショップのHPをチェック。気になるボストンテリアの子犬を見つけ、早速会いに行った。お目当ての女の子を抱っこすると、おとなしくくっついてきて手をペロペロ……。すっかり心を奪われ、この子に決める。

あこがれの犬との暮らしがスタート(提供:お母さん)

目は血走り充血、これって攻撃!?

 通常は1週間ほどでお迎えになるが、体調が少し不安定だったため、10日あまり経ってからおうちにやってきた。名前は「アビー」に。響きの良さと、ヘブライ語で「神は喜んでいる」という意味があることから名づけた。長年念願だった子犬。しかし、お父さんとお母さんはこう思ったという。

「あれ? 別犬? すり替えられた?」

 そのぐらい、アビーちゃんは最初に会ったときとは印象が違っていた。ペットショップから「3日間はケージから出さないように」と言われ、ごはんの時間以外は守ったものの、アビーちゃんはケージの中で暴れまくり、柵や壁に助走をつけて頭から突っ込んだ。目は血走って充血し、ぶつかった鼻の周りはすりむけて流血沙汰に。「思わず『ひぃっ!』と声が出ちゃったほど(笑)。恐怖でした」とお母さん。

 さらに、「シャー!シャー!」というナゾの鳴き声を発しながら、お父さんとお母さんの手や足をかみまくった。「アビーにしてみれば動くものに興味があって、遊んでいるつもりだけだったのかも。でも、あまりにも激しくて、私たちは『攻撃されてる』という気持ちになってしまいました」。思い描いていた犬のいる暮らしとは、あまりにかけ離れた光景に、お母さんは精神的に追い詰められ食事ものどを通らない。わずか1週間で3キロも痩せてしまった。

 熟睡もできず早朝に目が覚めてしまうものの、物音が立てるとアビーちゃんが起きて暴れ出す。「少しでも長く寝ていてほしいので、私はタオルケットにくるまって息を潜めていました」

おうち初日にのけぞり寝。「ふてぶてしい(笑)」とお母さん(提供:お母さん)

毎日7時に始まるクレージータイム

 夜は夜で恐怖の時間が。7時ごろになると、家の中でもお散歩中でも、アビーちゃんは突然狂ったように暴れた。名付けて「クレージータイム」。落ち着かせようと、アメリカの保護犬シェルターで犬を寝かせるために使っているというヒーリング音楽を聴かせてみると、最初の数回こそ効果があったものの、数日後には元通りの大暴れ。

「知り合いのおうちにピットブルがいたのですが、闘犬の血を引くピットブルの子犬時代でさえここまで激しくなかった。この子は人に迷惑をかけないだろうか、本当に私に育てられるんだろうか……。ものすごく不安になりました」

 アビーちゃんは当時月齢3カ月。パピー時代はあっという間に過ぎ去ってしまう。最高にかわいい時期だが、お母さんはそう感じる余裕すらなかった。

「『かわいい』よりも『どうしよう』の方が勝って、暗然たる気持ちでした。ずっと夢に見てきた犬との暮らしでしたが、もしかしたら私たちには無理だったんじゃないか……と。今思えばノイローゼに陥っていましたね」

 混乱したお母さんは、「育犬ノイローゼ」でネットを検索。sippoの記事、そして店長のブログに行き着く。読めば読むほど、プロの手を借りた方がいいと確信。UGにカウンセリングの予約を入れ、駆け込んだ。

 当初はカウンセリングだけのつもりだったが、アビーちゃんはあいさつがわりに高橋店長の手をガブっ! 「はい、お泊まり決定~」。店長の鶴の一声で、そのまま社会化お泊まりに突入した。店長はしかし、超逸材のアビーちゃんにワクワクしたという。

「爆弾娘降臨!(笑)。アビーちゃんは発散し、お母さんはアビーちゃんの強さを認め受け入れる。お互いが変わり、成長する1週間が始まりました」

UGでの元気いっぱいのアビーちゃん

後編へつづく(4月26日公開予定)

高橋信行店長 プロフィール
物心がつく頃から動物関係の仕事に就きたいと考え、動物系の専門学校を卒業後、ペットショップに就職。いくつかの転職を経て、現在はUG DOGSアトラスタワー中目黒店店長。これまでカウンセリングは1300件以上、お泊まりで預かった犬は1000匹を超える。愛犬は、ジャック・ラッセル・テリア「ロイス」。
UG DOGS アトラスタワー中目黒店
住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/
店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。

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中津海麻子
フリーライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、ワインや日本酒や食、ペット事情、人物インタビューなど幅広く取材、執筆。JALカード会員誌「AGORA」、同機内誌「SKYWARD」、「ワイン王国」「朝日新聞デジタル &w」「好書好日」などに寄稿。

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この連載について
だから犬って最高だ!
「育犬ノイローゼ」に陥った飼い主が藁をもつかむ思いで全国からやってくる「駆け込み寺」=UG DOGSアトラスタワー中目黒店。ハイパーな子犬たちと悩める飼い主を相手に日々奮闘する店長・高橋信行さんの実録ルポ。
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