過酷な環境で暮らす野良猫たち もしとーさんの目の前に現れたら、いま何ができる?
月刊誌『天然生活』『ESSE』で編集長をつとめ、数多くのヒット書籍をつくり続けている編集者の小林孝延さんこと「とーさん」は、困り顔の元保護犬「福」と元野良猫の「トモ」「モエ」と暮らしています。今回は、野良猫たちについてです。
植え込みの中からぴかーん
どうも、とーさんです。
21年もあっという間に年末を迎えようとしております。じわじわと朝晩の冷え込みが厳しくなってきた今日この頃、気温の低下と反比例するように、なにやらうちの近所には猫たちが出現する機会が増加傾向にあります。
昨夜も近所の公園を福を連れてお散歩していると、ヘッドランプの光の先、植え込みの中に緑色に光る目玉がふたつ、ぴかーん。
そーっと近づいてみると、まだ生後3カ月くらいでしょうか?子猫がこちらをうかがっています。
嫌がる福のリードをぐいぐいひっぱりながら、子猫との距離をじわじわ詰めると、突然、しげみのほうに逃げ去っていきました(ちょっとかわいかったから、もしもひとなつっこい子だったら……)。
翌朝、その植え込みのあたりにもう一度行ってみると、なんとカラスが食い散らかされてました(猫じゃないですよ、カラスの方ですよ)。もしかして親猫がひもじい子猫のためにカラスを捕まえたのでしょうか……。この公園には野鳥も多いし、バードウォッチャーたちも多数訪れます。猫は野鳥の天敵ですから、こうしたケースが頻発すると保健所が捕獲に乗り出すことになるやもしれず、それはそれでとても心配。
もともと、引っ越してきた頃からうちのまわりは野良猫たちが多いのですが、うちのベランダや駐車場にも出没することが増えてきました。どの猫たちも見る限り、そんなに痩せっぽちではないから、きっと近隣にだれか餌やりさんがいるのだと思います。実際、公園にはだれかが与えた猫缶がそのままに放置されて問題視されています。
ひもじい猫たちにごはんをあげる、気持ちはもうわかりすぎるけれど、餌やりだけするのはトラブルの火種を大きくすることにつながりかねない。近隣とのトラブルや野良猫ちゃんの増加、結果的に不幸で望まれない猫たちを増やすことにもなってしまうから。でも、そんな正論言ってはみても、やっぱりおなかをすかせた子が目の前にやってきたら、チュールやら猫缶やらあげちゃうだろうなあ。ううう、本当に難しい問題です。
ノミだらけで手足にけがも
とーさんの家にもちょうど2年前、この特集でも何回かにわたりその捕獲ストーリーを記しましたが、2匹の元野良兄妹のとも&もえがいます。2匹とも捕獲したときは毛つやなどから栄養状態はさほど悪くはなさそうに見えましたが、手足にけがをしていたり、ノミだらけだったり、外猫がおかれた過酷な環境が容易に想像できる状況でした。
避妊去勢してまた元に戻すTNRも頭をよぎりましたが、あまりにも情がうつりすぎて、いやがる2匹を無理やり拉致して家の子にした記憶がよみがえってきます。2カ月くらいはノイローゼになるか?ってくらい窓辺をいったり、きたり。朝から晩までにゃーにゃー鳴き続けていましたね。それでも、ぐっとそこを乗り越えていまはなんとか、とーさんの家族になりました。(まだまだ知らない人が来るとパニックになって逃げていきますが)
しかし、どんなに可愛い子がベランダに現れても、無尽蔵にうちに迎え入れていく、というのも現実的ではないので、やはり、ここから先はTNRでしょうか。さすがにこれ以上猫が増えたら福もストレスだろうなあ。いまでもともともえの方が数的優位を形成してますから、いつも福は遠慮ぎみ(もともと引っ込み思案な性格ではあるけれどね)。
そうはいっても、万が一どなたかのおうちの子という可能性も0%とはいえないから、その調査からはじめないとですね。餌やりさんを見つけて話を聞いてみようと思います。地域のみなさんが正しい知識をもって、みんなで猫を愛していくことができればどんなにいいか……。
もえは、ベランダに野良たちがやってくると、うらやましそうにじーーっと眺めます。そして、しばらくして野良が立ち去ったあともそのままベランダのほうを見続けているのです。やっぱり自由に外を歩いてみたいんだろうなあ。そんなもえをみるととーさんは胸の奥がすこしチクッと痛くなるのでした。
◆小林さんが発行人を務める月刊誌『天然生活』のサイトはこちら
(次回は12月18日に公開予定です)
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