13歳の先住猫の元に生後4カ月の猫を迎えた 「匂いの交換」から始めて距離を縮めた

2匹の長毛猫
カメラ目線のボンボン(右)と奥でくつろぐタルト(かおりさん提供)

 猫好きな夫婦の家で、先代2匹が続けて旅立ち、13歳の猫が1匹だけになりました。すると猫は張り合いを失ったように寝てばかりに……。そこで夫婦で相談し、遊び相手になればと新たな猫を迎えることにしました。しかしその決断までに大きな葛藤があったといいます。迎える前の思い、迎えてからの対応、今の生活を聞いてみました。

(末尾に写真特集があります)

足元がおそろいの柄

「ふたりとも足元がソックス柄の、“ソックスズ”です。生後9カ月の若いボンボンが、13歳のタルトの傍にいたがりますね」

 主婦のかおりさん(45歳)が、にこやかに2匹のメンズ猫を紹介してくれた。どちらもフワフワの長毛。似ているが、ボンボンはメインクーンで、タルトはノルウェージャンだ。

2匹の猫
大好きなタルトをじっと見るボンボン(かおりさん提供)

 かおりさんがボンボンを家に迎えたのは今年4月。その時ボンボンは生後4か月。

 迎えるまでに4カ月くらい考えたという。いちばんのネックはタルトの年齢だった。すでにシニアだったからだ。だが、タルトのために「仲間を迎えてあげたい」という思いもあったそうだ。

「昨年3月、マロンというメインクーンの雌猫をがんでなくしました。マロンは女王様気質だったので、タルトは前を通る時には“失礼しまーす”と少し気を使っていた。特に仲が良かったわけではないけど、タルトはひとりになって退屈そうに見えました」

 一目置いていた存在がいなくなった後、タルトはあまり動かず、寝ていることが多くなったという。

 そして昨年10月、体調を崩してしまった。食欲がなくなってしまったのだ。

「元気はあるものの、ほとんど食べず、うんちが出なくなって。かかりつけの先生に、血液検査やエコー検査をしてもらっても原因がわからず、病名はつきませんでした。結局、消化管系の薬を飲ませて、ひと月くらいかけて体調が戻っていった感じです」

 体調が戻って少ししてから、夫婦の間で、「新しい猫を迎える?」という話が出た。

「13年前にタルトが家に来た時は、先住が2匹いてにぎやかに暮らしていました。多頭暮らしに慣れていたので、ひとりで張り合いがなくなったのなら、遊び相手がいた方がいいと思ったんです。家族を迎えれば一緒に遊んで元気がでるかな、と」

 かおりさんは迷ったが、夫は「絶対うまくいくよ」と新たな猫計画に積極的だった。

“別居”も視野にいれたお迎え体制

 かおりさんと夫は20年前に結婚し、2年目にふたりで雌猫マロンを迎えた。かおりさんにとってマロンが人生初の猫だったが、夫は独身時代にも猫を飼っていた。

「夫はアメリカの留学時代にメインクーンと暮らしていて、帰国時に連れて帰ってきたんです。その子は夫の実家に住むことになりましたが、今回新たに迎える子も、できればメインクーンがいいなということになって。そして、マロンの後に迎えた同種の雄のショコラをタルトが慕っていたので、“男の子に”ということになりました」

 近所に、しっかり健康管理をしているブリーダーを見つけ、年明けに見学にいった。そして子猫を春先に譲り受けることにした。

 念のため、タルトに猫ドックを受けさせたが、シニアにありがちな糖尿、腎臓、甲状腺などの問題も、大型猫特有の心臓疾患の心配もなかった。年齢差の猫を飼うことを書いた本や記事も端から読んだという。

2匹の猫
ボンボン(奥)が来て2週間たったころ。住み分けしながらタルトと徐々に仲良しに(かおりさん提供)

「“シニアの子のストレスになる”“迎えるのなら年が近くないと”という記事が多い中、“若返ったし、うまく住み分けしながら過ごしている”とポジティブなことが書いてある体験談(sippoのコラム)を見つけ、こういうパターンもあるんだと背中を押してもらいました。そういえばタルトも家に来た時、先代のショコラがシッポの先で遊んであげていたな、と背を押されました」

 しかしかおるさんにはまだ迷いがあり、新たな子を迎えるにあたり、夫とある約束をしたそうだ。

「タルトは身体的には大丈夫だけど、万が一、子猫と仲良くなれず大げんかをしたり体調を崩しでもしたら、夫婦で“別居”をしようと思ったんです。『私はタルトとワンルームを借りて住んで、ここに通って家事をする。あなたはここで子猫と暮らして別宅にくればいい、それでもよい?』といったら、『いいよ』と言ったので、いよいよ決めたんです」

女性と猫
昨年12月、13歳の誕生日にタルトを抱くかおりさん(かおりさん提供)

 熟考のうえ迎えた子猫に、かおりさんはボンボンという名前をつけた。

 最初の猫が栗のような毛色のマロン、次の子は栗に合うショコラ、次はマロンとチョコが同時に食べられるお菓子のタルト。

「ボンボンは2番目のショコラに少し似ていたので、ショコラに由来するところからチョコレート“ボンボン”にしました。すべて、つながっているんです」

匂い交換作戦が成功

 ボンボンの受け入れは慎重にしたが、想定外のこともあったようだ。

「家にきてすぐケージに入れたのですが、すごく鳴きました。そのうちに諦めるかなと思っていたけど鳴きっぱなし。ブリーダーさんに聞いたら、ケージに入った経験がないという。そこで、急きょ、夫の書斎に入れることにしました。『あなたがノリノリで迎えた子だし、部屋を明け渡して下さいね』と夫に納得してもらいました(笑)」

 夫の書斎にあったとがった物などを片付け、「ボンボンルーム」とした。トイレと水を置き、ごはんもそこに運ぶことにした。部屋で自由になると、ドアが閉まっても閉じ込められ感がなくまもなく鳴きやんだ。そこからスタートだ。

 かおりさんは焦らず、まず、猫の匂いをお互いに周知してもらうようにした。

「タルトがボンボンに興味を示し始めるまでは無理をせず、部屋を閉めた状態で、ボンボンが寝ていたマットをドアの前に置いたり、逆に、タルトが使っているマットをボンボンの部屋に置いて“匂いの交換”をしてみました」

 お互いの存在を知るのに、この作戦はうまくいったようだ。タルトが、ボンボンのにゃーという声に反応してドアの前で待つようになったら、ボンボンを部屋から出し、ケージに入れた状態で短時間、対面させた。ボンボンがケージに入っている間に、タルトにボンボンルームを好きに探検してもらうようにもした。

「ボンボンはブリーダーさん宅でおとなの猫に慣れていたので、ケージの外のタルトに興味津々。一方タルトは『何者?』と困惑気味でしたが、だんだんと距離をつめて、『ボンボンルームの扉がしまればこの子は出てこない』という安心感も持ってもらいました」

 2週間ほどしてケージ越しに“鼻チュー”のあいさつができるようになってから、やっとケージの扉を開けた。1日1時間からスタートして、最終的にはケージ越しでなくてフリーにした。

「ボンボンが家に来てから自由に過ごせるようになるまで、だいたい1カ月かかりました」

ナーバスになった理由

 かおりさんは「超心配性」と自分でも言うが、2番目に迎えたショコラとの別れが関係しているようだ。

「7年前の9月、ショコラが10歳で突然死したんです。定期的に検査も受けていたし、前日もふつうにごはんを食べていました。でも、夜一緒に寝て、朝起きたら隣で寝ていたので、おはようといって脚を触ったら肉球が冷たくなっていたんです……」

2匹の猫
7年前に急逝したショコラ(前)とタルトは仲良しでした。写真は2013年秋(かおりさん提供)

 揺り動かしたが動かない。寝たまま亡くなってしまったのだ。出張していた夫に電話をすると、午後の便で帰ってきてくれた。キャットシッターをする友人も駆けつけてくれた。かおりさんは1カ月くらい途方にくれながら、やっとのことでマロンとタルトの世話をしたそうだ。

 そして、昨年3月にはマロンとの別れがあった。扁平(へんぺい)上皮癌(がん)を患い、250日間、闘病をした。

「マロンは病気が見つかった時に16歳だったので、夫婦で話して手術はしませんでした。緩和ケアや終末期医療に力をいれる往診の先生を探し、診ていただくことにしたのです。やり方を教わり、薬を入れた点滴をしたり止血剤を打ったり。ショコラにできなかったぶんマロンにしてあげたいという気持ちもあり、1日の自分の時間のほとんどをマロンのケアに注ぎました」

 その闘病でかおりさん自身5キロも痩せたが、精いっぱい尽くした末、穏やかな気持ちで送ることできたという。

 それでもやはり、突然別れたショコラのことが心にあり、「SOSに自分が気づかなかっただけかな」と、タルトに“過剰”になってしまうところがあった。夫はそんなかおりさんを心配した。

「昨年10月にタルトが具合が悪くなったと言いましたが、その時、夫に『心配のしすぎで病気にしちゃったのではないか』といわれました。時間が経てば自然に元に戻る症状でも、ここがいつもと違うと過敏になって……。確かにタルトが1匹になった時、ずーっと見張るように見ていました。タルトは放っておいてと思っていたかもしれないのに」

 次の子を迎える気持ちになったのは、「愛情の分散」をした方がいいと気づいたことも大きかったのだ。

「夫に『タルトにやるくらい俺にも愛情をかけて』と言われので、『猫くらい可愛かったらね』と答えました。そうしたら『それは無理だな』って(笑)」

 あまりにもつらい出来事とトラウマを、かおりさんは夫と一緒に乗り越えようとしてきたのだ。

いちばんのいたずらっ子

 ボンボンを見て、「可愛いんですよ」とかおりさんは話す。

 今まで暮らした猫たちの中で「いちばんイタズラっ子」なのだとか。

「ボンボンはタルトのことが好きみたい。でも距離感を保ってグイグイいかず、意外とわきまえている。コップを倒す常習犯で、それもまた面白くて見ていて飽きません。朝、タルトと追いかけっこをしている姿や、ふたりでのんびりしている姿をみると、たまらなく癒やされて、ボンボンがいてよかったと思いますね。夫も、タルトファーストにはしてくれていますが、ボンボンを抱っこしたりなでたり。でもしつこいのでボンボンにちょっと引かれている(笑)」

キャットタワーに上った猫
掃除機に驚きタワーを上るボンボン「隠れられたかにゃ」(かおりさん提供)

 じつはボンボンは今も、夜に寝る時だけ「ボンボンルーム」で過ごす。タルトとかおりさんだけの時間を作るためだ。

「ボンボンとタルトは互いに食べるものが違ったし、寝る時にタルトは私の布団で寝ているので、その習慣を守ってあげたいという思いがありました。ボンボンは夜、『寝るよー』といってフードを持って部屋にいくとトコトコついてきて、ドアを閉めるとそのまま朝まで静かに寝てくれる。そのリズムもできていたので、別寝をそのまま続けています」

 ボンボンとの時間も作り、さらに、在宅時もキャットシッターの友人を呼んでボンボンの遊び相手になってもらっている。

「ちょっとぜいたくな話ですが、ボンボンも楽しそうにしているので、友人に定期的に来てもらっています。私の話し相手にもなってもらったり……マロンの時にも高齢猫を飼う友人と、“老猫あるある”を話したり、少しの時間を見つけて一緒にお茶を飲んだりしましたが、猫のことをわかりあって話せる友人がいるのは、すごく心強いんです」

 かおりさんとボンボンとのつきあいはやっと半年。夫や友人とみなに温かく守られながら、ボンボンはおとな猫への階段をあがっていくことだろう。きっと、タルトの優しい手ほどきも受けながら……。

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は18歳の黒猫イヌオと、4歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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