ポケモンを探しに行って、子猫を拾った 少年と猫は家族になる

   ポケモンGOで遊びに出かけた中学生が、子猫の鳴き声を聞きつけた。声は車の下からするが、おびえていて出てこない。その場で、スマホで検索し、見つけたアプリを使ってみると、かわいい子猫がそろそろと現れて……、子猫は少年と家族になった。

(末尾に写真特集があります)

   昨年9月の土曜、神奈川県横浜市。台風が近づき、小雨が降っていた。中学2年生のはやて君は、前月に買ってもらったばかりのスマートフォンを手に、近所の公園に向かった。

   屋外でポケモンを集めるゲームアプリ「ポケモンGO」で遊ぶためだ。公園でポケモンを見つけて、見事ゲット。その直後だった。どこからか、子猫のかぼそい鳴き声が聞こえてきた。

「ポケモンを1匹捕まえた後に声が聞こえてきたんだ。声を録音してあるよ」

 手にしたスマホで、その時に撮った動画を見せてくれた。車の下から猫の声が「ミュウ、ミュウ」と聞こえてきた。まだ幼い猫のようだ。だが、車の下をのぞきこんで「おいで」と呼んでも、怖がって出てくる気配はなかった。

   そこで、はやて君、その場でスマホを使って「猫の探し方」を検索。「キャットピアノ」というアプリが、猫を呼ぶのに良いと紹介されていた。早速インストールしてみた。アプリの画面の鍵盤を押すと、辺りに「ニャーニャー」と猫の声が響いた。

   すると、その声に反応するように、車の下から子猫がはい出てきたのだという。母のみどりさんにLINEで連絡したが、忙しいのか反応がない。だが、すでに心は決まっていた。

「捕まえるしかないじゃん」

   子猫が濡れないように、自分が着ていたパーカーを脱いで包み、家へと急いだ。

保護当日、ペットボトルにお湯をいれて湯たんぽに…(提供写真)
保護当日、ペットボトルにお湯をいれて湯たんぽに…(提供写真)

母の実家にはいつも猫がいた

   母のみどりさんが振り返っていう。

「連れて来た子猫を一目見たら、もうかわいくて、かわいくて。息子を怒ることもできない。仕事中の主人には『いったん預かるわね』と報告しましたが、できれば私も飼いたいと思いました(笑)。息子はきっと、ダメといえない私の気持ちを見抜いていたんですね」

 みどりさんは、もともと猫好きだ。九州の実家では、それまで何匹も猫を飼ってきて、帰省するたびに、子どもたち2人もかわいがっていた。そこで数年前、今のマンションに引っ越してから、「猫が欲しいね」と家族で話すようになっていた。

「飼うなら保護猫がいいと思い、子どもと一緒に保護猫カフェにも行ってみました。でも何度目かの時、娘の目にかゆみが出てしまい、猫を飼う話が途絶えていたんです」

リビングを歩くこさめ、今は家族の中心
リビングを歩くこさめ、今は家族の中心

「子猫、どうした?!」「超かわいい!」

 弟が子猫を拾った日、高校3年生の長女はるかさんは、修学旅行で沖縄に行っていた。その日に帰る予定だったが、台風で飛行機が欠航し、足止めをくっていた。

「弟から『子猫を拾った』とLINEでメッセージが来て、『え?』と思ったけど、台風の影響でスマホがうまくつながらなくて、『子猫、どうした? 続きは?』とやきもきしていました(笑)」

 一方、はやて君は、その日のうちに自分で調べて、子猫を動物病院に連れて行った。

「猫を飼っている友達に『猫を拾った』とLINEしたら、『まず病院に連れていくこと』と返事があって、動物病院を探して電話しました。診てもらうと、メスで、生後56週。猫風邪をひいていたので、目薬と飲み薬をもらって帰って来ました」

 翌日帰宅した姉はるかさんは、1日遅れで子猫と対面した。

「本当に家にいた! しかも超かわいい!! はやてって、ポケモンだけじゃなく、猫も捕まえられる子だったんだ(笑)」

   猫と相性が合ったのか、はるかさんの目にかゆみが出ることはなく、正式に迎えることにした。家族みんなで名前を考え、出会った日にちなんで「こさめ」と名付けた。

   ケージは100円ショップで見つけた網や結束バンドを使い、姉弟で手作りした。

こさめを保護したはやて君
こさめを保護したはやて君

予想外の鳴き声、発情?

「こさめ」が来て以来、「こさちゃんは何してる?」「ご飯よろしくね」など、家族間のLINEのやり取りは、猫のことばかりになった。こさめは穏やかな性格で、「シャー」といったことも一度もないという。家族みんなに慣れて、よく遊び、よく食べ、順調に育っていった。

   だが、家に来て3カ月後、予想外のことが起きた。

   ある日、「こさめ」が体をくねくねさせて、「アオーン」といつもと違う大きな声を出したのだ。

「何?この声」。はやて君は驚いた。

   その時、「こさめ」は生後約4カ月。飼育マニュアルには、そんなに早く発情するとは書いてない。みどりさんも「早すぎる」と思ったが、動物病院に連れて行ってみた。

「先生もまだ小さいので違うだろうという。でもその後も様子がおかしいので、別の病院に行って調べたら、発情に間違いないと。それで予定より早く避妊手術をしました」

   猫を飼うことはマニュアル通りにはいかないと実感した出来事だったという。

   はやて君には、もう一つ、思い通りにいかないことがあるのだという。ネットには、猫が飼い主の布団に入って、ぬくぬくと眠る姿が載っているが、「こさめ」は“ひとり寝”が好きなようだ。

「一度僕のベッドに入れてみたけど、すぐに出ていっちゃったー。いつか、こさちゃんと朝まで一緒に寝てみたいな。あと、こさちゃんの妹か弟がいたら、走り回ったりして楽しいかもね」

 少年の夢はふくらむばかりだ。

藤村かおり
ペットライター。小説等の創作活動を経て90年代後半から、ペットの取材を手掛ける。2011年~2017年週刊朝日記者、2017年からsippoメインライター。丹念な取材と独自の目線から、動物と人の絆、動物と共に生きる人の心をすくい取る記事に定評がある。ペット関連の著書に『長寿猫』『明日にアクセス』など。現在は保護した黒猫、キジ猫と暮らす。

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