元気すぎるトイプーの子犬 その命を引き受ける覚悟を決めたお父さん、頑張りが炸裂
「飼いやすいですよ」というペットショップ店員の言葉に子犬を迎えてしまった家族。ところが、その子犬は決して飼いやすくなかった。
「育犬ノイローゼ」に陥った家族がたどり着いたのは、UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)。高橋信行店長の叱咤激励を受け、愛する愛犬のために頑張った家族の記録。
激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ。
「子犬はファンタジーじゃない!」
(前回のお話はこちら)
安易に犬を売りつける店の姿勢に怒り
カウンセリングにやって来たゼリーちゃん一家の様子を、高橋店長はよく覚えているという。
「お母さんはずっと泣いていて、マスク越しにも顔色が悪いのがわかった。心も体も限界を超えていることがひしひしと伝わってきました」
一方で、ゼリーちゃんにも危機感を感じたという。
「めちゃくちゃ強くて、決して『飼いやすいトイプードル』ではない。でも、UGではこのぐらいの強い子はたくさん預かっているので驚きません。それよりも、家族から理解されずに追い詰められているようで、そちらの方が深刻だと感じました」
それまでの顛末を聞き、店長の怒りスイッチオン! 聞こえのいいセールストークでゼリーちゃんを売ったペットショップの店員に対してだ。
「生まれて間もない乳飲み子がいる家に子犬を売りつけるなんて、子育ても子犬育てもナメてるのか! と」
妊娠中や赤ちゃんのいる女性に「子育てホルモンが出ているから、子犬を育てるのにもいい」などと言って売りつける店員がいる、という話を聞いたこともあるという店長。怒りは収まらない。
「車や時計なら、気に入らなければ交換したり売り払ったりすればいいかもしれません。実際その感覚で『思っていた子犬と違う』『かわいいと思えない』という理由で捨てられてしまう犬はたくさんいます。
捨てる人はもちろん許せないけれど、安易に売りつける店にも責任はあります。犬を売るということは、家族の十数年にかかわること。売れればいい、そのあとどうなろうと知ったこっちゃないという姿勢は、同じペットショップで働く人間として疑問です。プロの自覚がないのでしょうか?」
覚悟を問う店長に、お父さん「やります!」
さらに、こう続ける。
「正直、お父さん、お母さんにも言いたいことは山ほどありました。でも、責めたところで何も変わらない。今できることを考えようと思いました」
3人のお子さんの育児に忙しいお母さんがゼリーちゃんとガッツリ向き合うことは難しい。店長はお父さんに問いかけた。
「間違いなくいばらの道にはなるでしょう。お父さん、それでもやりますか? やりきれますか?」
人が変わらなければ犬は変わらない。店長はお父さんの気持ちを確かめたかった。「お父さんが本気でゼリーちゃんと向き合う気持ちがあるのなら、僕もスタッフも全力で応援します。でも、そこまでの覚悟がないのであれば、UGで預かったところで結局はゼリーちゃんも家族も幸せにはなれない。ゼリーちゃんをうちで引き取ることも考えます」という店長の言葉に、お父さんは決心する。
「やります!」
ゼリーちゃん、社会化お泊まりで発散
ゼリーちゃんはその場で社会化お泊まりに突入。UGの群れに入ると最初こそ驚いて腰が引けていたものの、すぐにほかの犬たちと激しく遊び始めた。
「お散歩ができないと聞いていましたが、僕やスタッフと行くとほぼ問題なし。ゼリーちゃんは頭の回転が早いので、どう対応していいかわからないお父さんの様子を見て自分のペースに持っていっていたのでしょう」と店長。
体力底なしで、夜になるとケージの中で絶叫する。「手ごわい。これは時間がかかるかも、と思いました」
それでも日を追うごとにゼリーちゃんは変わっていった。日々の様子は画像や映像で送られてくる。お泊まり前には昼も夜もほとんど眠らなかったゼリーちゃんが遊び疲れてウトウトと立ち寝する様子に「見たこともないゼリーの表情と姿に感動しました。そして、これまでゼリーを理解しようとしなかった自分に気づかされました」とお母さん。
1週間後のお迎え。家族の姿を見て安心したのか、お父さんの足元で寝始めたゼリーちゃん。その姿にお母さんにも穏やかな笑顔が戻った。
休みの日はお散歩で16キロ歩くことも
店長は、おうちでは次の二つのことをがんばるようにアドバイス。
- 発散、解放のため、とにかくお散歩をすること。
- 家の中ではクレートを使ってハウストレーニングをすること。
家に帰ったその日から、やると決めたお父さんの頑張りが炸裂。朝晩1時間ずつのお散歩に励み、「休みの日には気づいたら16キロも歩いていました。ゼリーはへっちゃらな顔をしていましたが、僕はヘトヘト」と笑う。さらに朝は近所のドッグランに連れて行き、ゼリーちゃんの有り余るエネルギーを徹底的に解放した。
店長に言われたとおりケージの横にクレートを設置すると、ゼリーちゃんのお気に入りスペースに。お散歩と遊びでしっかり体力を使って満たされたゼリーちゃんは、昼間の多くの時間はクレートで寝るようになった。
お母さんは「ほどよい距離感を保てるようになり、お互いが落ち着いて過ごせるようになりました」と話し、こう続ける。
「仕事がどんなに忙しくても、寝る時間を惜しんで夫はゼリーを散歩に連れ出しました。ゼリーが暴れても吠えても、夫は出会ったその日からゼリーがかわいくて仕方ない。大好きなんです。日々の頑張る姿からその愛情が伝わってきました。そして、私もちゃんとゼリーと向き合おう、と」
現在、月に一度はトリミングを兼ねてUGで一泊二日のアフターケア。群れの中で元気に遊ぶ姿に「楽しそうなゼリーを見ているとうれしくなる」とお父さん。UGから送られてくるイキイキとしたゼリーちゃんの表情に感動したお父さんは店長に撮影のコツを聞き、「店長さんと同じカメラ買っちゃいました」と笑う。
ドッグランでは相談できる先輩飼い主さんとの絆も生まれた。「それまでは知り合いにならないような人と仲良くなった。ゼリーがいてくれるおかげで、僕らの世界がぐんと広がっています」
一家が宝物のように大切にしている言葉がある。お泊まりから約1カ月半後、ゼリーちゃんがアフターケアにきた日の店長のインスタグラムの投稿だ。
「ゼリーちゃんは、かなりハイパーで店長も心配していた子なのですが、こちらの予想を見事に裏切って、かなり解放が進んでいました! 口で言う、聞くよりも犬を見ればどれだけお客様が社会化お泊まりの後に頑張ったかがわかります。(略)本当にお客様の努力に感動しました」
「人が変われば犬も変わることを伝えたい」
最近は、お母さんと3人の娘たち、そしてゼリーちゃんだけで「ガールズ散歩」も楽しんでいるという。
「最初のカウンセリングで店長さんに『かわいいと思えますか?』と聞かれたとき、あまりにつらすぎて『思えない』と答えてしまいました。でも、頑張るゼリーの姿に、私たちもゼリーを理解しよう、努力しようと変わることができた。いまは心からかわいいと思える。相変わらず元気すぎて大変なこともありますが(笑)、大切な家族の一員です」
そう言って、お母さんは目を細めた。
プライベートな家族の話を思い切って明かしてくれたゼリーちゃん一家。「知識も情報もなく犬を飼ってしまう人が少しでも減るように。そして、人が変われば犬も変わることを伝えたい」と赤裸々に話してくれた。お父さん、お母さんの経験、そして思いを受け、店長はこう語る。
「子犬は当たり前ですが命あるもの。そこここでおしっこもウンチもするし、甘噛みや吠えがひどい子もいる。子犬はファンタジーじゃない。犬と暮らすということは、その命を引き受け、家族として共に生きるということなのです。ご家族はもちろん、僕らプロも改めてそのことをしっかりと心に留めて向き合っていかなければいけない。
幸せな犬を、犬と暮らすことで笑顔になる家族を増やしたいーー。それが僕らの願いだから」
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。
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