「イノシシ飼っちゃった!?」 体当たり、噛み、破壊……暴れまくるパグの子犬

 子犬の行動に悩める飼い主が全国から押し寄せるペットショップ、UG DOGSアトラスタワー中目黒店(文中UG)。高橋信行店長が犬と飼い主に愛とゲキを飛ばし続ける。今回は、まるでイノシシのように猪突猛進で暴れまくるパグの子犬と、悩める家族のお話。

 群れをもぶっ壊すクラッシャー登場に、激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ!

「現実を、広い世界を見せてあげる!」

お迎えと同時に始まった、笑えない日々

「どうせボクじゃないんでしょ……」

 ふとのぞいたペットショップで、とびきりかわいいパグの子犬に出会ったのは2カ月前のこと。仕事が落ち着き再び足を運ぶと、子犬は売れずに残っていた。ケースをのぞくとどこか哀愁漂う姿で座り込んでいて、冒頭のセリフが聞こえたような気がしたという。

「でも、ケースを開けようとしたら『もしかしてボクなのっ?』とうれしそうに飛んできた。抱っこしたら『連れてって!』と全力でお願いされました」

パグ「ピグくん」
子犬のころからこの貫禄(飼い主さん提供)

 パグのピグくんのお母さんは、懐かしそうに笑う。が、微笑ましかったのはここまで。2018年の年末。月齢4カ月のピグくんをおうちに迎えたその瞬間から、一家の笑えない日々が始まった。ピグくんはペットショップの狭いケースから解き放たれたことがよほどうれしかったのか、狂ったように暴れまくったのだ。

パグを迎えたはずが、イノシシだった!?

「家の中をぐるぐる全力疾走し、『遊ぼう!』と体当たり、『遊んで!』と家族の手や足をガブガブっ! ……ピグはパグにしては大きい方で、月齢4カ月ですでに6キロほどあったので、ピグは遊びのつもりでも、私たちにとっては襲撃されるようなもの。当時3歳だった息子も『怖いよ』と怯えていました」

パグ「ピグくん」
子犬とはいえ、パグは本当にパワフルなワンコなのです(飼い主さん提供)

 体力を発散させようと散歩に出ると、また大騒動。家を出た途端にロケットダッシュ! グイグイひっぱり、電柱を見つけると突進しクンクン。「道の両側にある電柱すべてをめがけ、ダッシュ、クンクンの繰り返し。とにかくなにごとにも全力の猪突猛進で……」。お母さんはこう思ったという。

「もしかして、イノシシ飼っちゃった!?」

 パグは鼻ぺちゃで愛嬌のあるルックスとは裏腹に、筋骨隆々のたくましいボディが特徴。体力も力もある。ピグくんはまだ子犬だったものの、その破壊力に家族は困惑した。

「ピグに悪気はなく、ただ遊びたいだけだとわかってはいても、部屋の中に出すとすごい勢いで走り回って手がつけられないし、体当たりも噛みも痛い。私たち大人はともかく、体の小さい息子はケガをする可能性もあり近づけられませんでした」

 興奮がモノに向くと破壊行為に。リフォームしたばかりの部屋の壁紙を豪快に引きちぎられときは、「本気で泣きそうになった」とお母さん。

無残に引きちぎられた壁紙。これは泣きます(飼い主さん提供)

 フリーにしていると目が離せないし、ピグくんも走り回って寝てくれない。必然的にケージに入れっぱなしの時間が長くなっていった。その間はいいが、ケージから出すとその開放感からピグくんはますます興奮するように。

頼った犬の幼稚園には断られ

 何か解決法がないものかと、お母さんはネットで検索。目についたのは、「犬はほめて育てる。怒らずにほめましょう」という「ほめしつけ」と、「人間がリーダーになれていない。犬になめられないようにしましょう」という「飼い主がリーダーに論」。ネット上に散見されるしつけ法だ。

 すぐに試してみたものの、「一生懸命ほめても、体当たりも噛みも止まらない。今度はなめられないようにと低い声で強めに怒ってみましたが、やはりピグには通じない。まったく意思の疎通ができませんでした」。

ケージのなかからのぞくパグ「ピグくん」
「ケージから出してください…」(飼い主さん提供)

 もう一つ、ネットで知ったのが「社会化の重要性」。お母さんはパピーパーティーに参加することに。パピーパーティーとは、主に月齢6カ月以下の子犬が集まり、遊びや触れ合いを通じて社会化の基本を学ぶ場だ。

 ピグくんを含め数匹の子犬が集まり、おとなしい子から順々にフリーに。「次はボク? ボクだよね?」と興奮してドタバタするピグくん。ようやく順番が回ってきて放たれるとうれしそうにほかの子に突進し「こんにちは、こんにちは!」。

「ピグはワンちゃんが大好きなのですが、ほかの子はグイグイ来るピグに驚き、逃げたり怒って吠えたりしていました」とお母さん。おやつタイムになると、われ先に!とばかりに、ほかの子を押しのけておやつへGO

 冷や汗をかいたお母さんは、すがる思いで犬の幼稚園へ駆け込んだ。パピーパーティーの様子を正直に話すと、「もう少し落ち着くようになってから来てください」と、やんわりと断られたという。

ピグくんの第一印象は「高倉健」…だったけど

「本当にどうしよう!と困り果て、再度ネットを検索しまくっていたときにUGの店長のブログにたどり着いたのです」

 UGでのカウンセリング。「ここでもダメと言われたら……」とお母さんはとても緊張していたという。ところがピグくん、このときはなぜかネコをかぶり、いつもよりおとなしい。そんな様子に店長は「高倉健さんみたいですね」。

「今だったら、なんで? どこが?と笑えると思いますが、あのときは危機感の方が強く理由を聞く余裕もありませんでした」とお母さん。高橋店長は「そんなこと言いましたっけ?」と笑いながら、こう続ける。

「強くて不器用なことは一目でわかった。でも、そこをうまく伸ばせたらどっしりしたいい男になる。そう感じたことは確かです」

 1週間の社会化お泊まりが決定。しかし、UGの群れに入れてみて店長もビックリ! 高倉健さんを彷彿とさせるどっしり感はいずこ。ピグくんはUGの群れのワンコたちに満身の体当たりを繰り出し、みんなを蹴散らした。「群れをぶっ壊される!と、本気で焦りました」と高橋店長。

社会化お泊まり初日のピグくん。群れの犬たちもビックリ(UG DOGS提供)

 その様子をUGから送られて来た動画で見たお母さんは、再び不安に。

「本当にピグは私たちの手に負えるのだろうか、このイノシシを飼いきれるんだろうか……」

(後編に続く)

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高橋信行店長 プロフィール
物心がつく頃から動物関係の仕事に就きたいと考え、動物系の専門学校を卒業後、ペットショップに就職。いくつかの転職を経て、現在はUG DOGSアトラスタワー中目黒店店長。これまでカウンセリングは1300件以上、お泊まりで預かった犬は1000匹を超える。愛犬は、最近家族になったジャック・ラッセル・テリア「ロイス」。
UG DOGS アトラスタワー中目黒店
住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/
店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。

中津海麻子
フリーライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、ワインや日本酒や食、ペット事情、人物インタビューなど幅広く取材、執筆。JALカード会員誌「AGORA」、同機内誌「SKYWARD」、「ワイン王国」「朝日新聞デジタル &w」「好書好日」などに寄稿。

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この連載について
だから犬って最高だ!
「育犬ノイローゼ」に陥った飼い主が藁をもつかむ思いで全国からやってくる「駆け込み寺」=UG DOGSアトラスタワー中目黒店。ハイパーな子犬たちと悩める飼い主を相手に日々奮闘する店長・高橋信行さんの実録ルポ。
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