上野博士の墓に、妻の遺骨を合葬 隣はハチ公の碑

青山霊園で営まれた墓参会。上野英三郎博士の墓に八重子夫人の遺骨が納められた=東京大学農学部農地環境工学研究室提供
青山霊園で営まれた墓参会。上野英三郎博士の墓に八重子夫人の遺骨が納められた=東京大学農学部農地環境工学研究室提供

 忠犬ハチ公の飼い主で、東京帝国大教授だった上野英三郎博士(1871~1925)の墓に八重子夫人(61年死去)の遺骨が納められることになり、東京都港区の都立青山霊園で19日、遺族や関係者らが墓参会を開いた。墓の傍らにはハチ公をまつる碑もあり、夫人の没後半世紀を経て一家がそろった形だ。

 

 上野博士が亡くなってからも約10年間、渋谷駅で主人の帰りを待ち続けたハチ公。32年に朝日新聞が「いとしや老犬物語」と報じて注目された。34年には彫刻家・安藤照の手がけた銅像(初代)が渋谷駅前に建ち、翌年3月にハチ公は生涯を閉じた。
 

 白根記念渋谷区郷土博物館・文学館の松井圭太学芸員によると、銅像の製作時にハチ公は八重子さんが姿を見せると元気を取り戻し、銅像のポーズはその姿を参考にしたとされる。ハチ公の死は多くの人の悲しみを誘い、別れを告げる式典で喪主を務めたのは八重子さんだった。
 

 八重子さんと上野博士は、家族の反対もある中で結ばれたこともあり、入籍できなかった。上野博士の墓は出身地・三重県にあるが、教え子らによって青山霊園にも墓が建ち、分骨された。茶道を教えるなどして過ごしていた八重子さんも墓参りに訪れたが、上野博士と同じ墓には入れなかった。
 

 松井さんは「ハチ公にとって博士が父親なら、八重子さんはお母さんと言っていいほどだった」と話す。上野博士の没後、八重子さんは転居が必要で、ハチ公とは離れて暮らさなければならなくなった。これに対し、「八重子さんが犬嫌いだとか、ハチ公の世話をしなかったという誤解も広まった」と松井さんは話す。

 

「八重子さんの名誉を回復したい」。松井さんと、上野博士の教え子らの系譜を引く「農業農村工学会」の思いが一致したのは2013年。同館が開いたハチ公の企画展がきっかけだった。八重子さんが生前、上野博士と同じ墓に入るのを望んでいたことを記す文献もあり、農業農村工学会で学会長も務めた塩沢昌・東大教授(63)は、「正しい歴史を次の世代に伝えていくことが学者の務め。上野博士の墓に八重子さんの名を刻むことが重要だと考えた」と振り返る。
 

 塩沢教授らは青山霊園を管理する都と交渉を重ねた。松井さんは上野博士と八重子さんの遺族から了承を得た。動き始めてから約3年。今月21日の上野博士の命日を前に、八重子さんの合祀(ごうし)に至った。

 

 19日の墓参会には約20人が集まった。八重子さんのひ孫にあたる高橋将美さん(65)=川崎市=は納骨を見届け、「家族を一つにすることができて感無量。これからは仲良く同じ場所で過ごせるので、曽祖母たちもほっとしているでしょう」と話した。

 

(辻健治)

 

朝日新聞
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