マルプーの子犬の激しすぎる甘嚙みに一家困惑 ミックス犬は本当に飼いやすいのか?
手に負えない愛犬に悩む飼い主が全国から駆けつけるペットショップ、UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)。最近、カウンセリングや社会化お泊まりの件数が急増しているのが、ミックス犬だ。
マルチーズとトイプードルのミックス犬に一目惚れした家族は、「飼いやすい」という言葉にお迎えを決める。しかし、激しい甘噛みに悩まされることになり……。
激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ。
「一筋縄ではいかない、予測できない子もいる。それがミックス犬!」
「成長したらどうなるかな?」店員の一言が決定打に
「ワンちゃんがほしい!」
幼い娘たちにそうせがまれたが、犬を飼うなんてまったく考えていなかった。ペットショップに立ち寄ったのも、たまたま近所にあったから。しかし、一匹の子犬に家族はメロメロになってしまう。
子犬は「マルプー」。マルチーズとトイプードルのミックス犬だ。クリクリでまんまるの瞳がとびきりかわいく、クリームベージュのキレイな毛色に、胸のあたりにちょっとだけ白い毛が。店員は笑顔でこう言った。
「抜け毛はほとんどありません。お散歩は毎日行かなくても大丈夫ですよ」
お母さんは振り返る。「子育てに手がかかる時期だったので、犬中心の生活は無理だと思っていたのです。でも、毛が抜けない、お散歩もそんなに行かなくていいのなら、もしかしたら飼えるかも……と」。迷うお母さんに店員がかけた一言が「決定打」に。
「成長したとき、この胸の白い毛はどんな風になるのかな? とっても楽しみですね」
当時を思い出しながら、「すごくステキで夢があって、その子をお迎えすることにしたのです」とお母さん。こうしてマルプーの子犬ルルくんは、月齢2カ月で家族の一員に加わった。
激しい甘嚙みに困り果て、UGへ
犬のこと、ましてやミックス犬についてはなんの知識も情報もないままでスタートしたワンコとの暮らし。ルルくんは元気いっぱいで体力底なし。有り余るエネルギーが激しい甘噛みにつながった。
「私たちが歩く足めがけて、ガブガブっ! 仕方なく、噛まれないようにいつもルルを抱きかかえていました」とお母さん。「ルルはかわいいし、いとおしい。でも正直、どうしたら甘噛みをやめさせられるのかがわからず、どんどんストレスになっていきました」
ワンコがいる友人から「プロのトレーナーに見てもらったら?」とアドバイスされ、車で連れていきやすいところを探す中で、UGのことを知った。
最初のカウンセリングを、高橋店長はこう振り返る。
「ルルくんは、一目で頭がいいことはわかりました。でも、ミックスあるある、特にマルプーあるある(詳しくは後述)の危機感はそんなに感じませんでした。ただ、体力は有り余っていて、まったく発散が足りていなかった」
お散歩を見てみると、右に左に好き勝手に歩くルルくん。お散歩がうまくできないこともお母さんを悩ませていた。「確かにまっすぐ歩けなかったけれど、ルルくんはときどきお母さんの方を振り返る。お母さんが好きで頼っていることが伝わってきました」と店長。そして、こう続ける。
「ルルくんは素直ないい子で、甘噛み以外は大した問題はないかな、と。お母さんがとても疲れている様子だったので、そちらの方が心配でした。ルルくんはエネルギーを発散しまくる、お母さんはルルくんから少し解放され心身ともにゆっくり休む。社会化お泊まりは、そのための1週間でした」
うなぎのぼりのミックス犬人気
さて、ルルくんの顛末は後で触れることにして、今回、高橋店長に語ってもらうテーマは「ミックス犬」だ。
ミックス犬とは、違う犬種同士を交配させて生まれた犬のことで、いわゆる「雑種」だが、最近流行のミックス犬は異なる純血種の両親を人工的に交配させるケースがほとんど。マルチーズとトイプードルで「マルプー」、チワワとトイプードルで「チワプー」、チワワとダックスフントで「チワックス」……などなど。
ペット関連のサイトを見てみると、「両親の『いいとこ取り』の犬になる」「毛が抜けやすい犬種に抜けにくい犬種を掛け合わせることで、毛が抜けにく飼いやすい子犬が生まれる」「見た目も性格も『オンリーワン』の個性的な犬になる」といった表現が見受けられる。
そんな「飼いやすく、ほかのどの子とも違う唯一無二のかわいさ」といったキャッチフレーズから、ミックス犬人気はここ数年でうなぎのぼり。アイペット損害保険が発表した「人気飼育犬種・猫種ランキング2020」では、2017年の調査開始から初めて「ミックス」が1位となり、ずっとトップの座にあったトイプードルを超えた。実際、最近はペットショップでもたくさんのミックス犬が売られており、価格も決して安くない。
「いいとこ取り」があるなら、「いいとこじゃない取り」の場合も
ミックス犬人気を、高橋店長もひしひしと感じているという。「社会化お泊まりで預かっている子犬が純血種だけということは、ここ最近はほぼないですね。必ずミックスの子がいるし、その数はどんどん増えてきています」。多くのミックス犬を見てきた経験から、こう語る。
「『いいとこ取り』があるということは、裏を返せば『いいとこじゃない取り』もありえる、ということ。たとえば人気の『ポメプー』は、ポメラニアンのよく吠えるところとトイプードルの神経質な面を受け継げば、神経質でよく吠える犬が生まれることだってあるのです」
犬にはそれぞれの性格や性質はあるものの、純血種の場合、大きさや見た目、性質にある程度の標準=スタンダードがある。しかしミックスは、どちらの親の特徴をどのぐらい受け継ぐかは個体差があり、同じポメプーでもポメラニアンが強く出る子もいれば、プードル寄りの子犬が生まれることも。小型になるのか、想像以上に大きくなるのかなど、どう成長していくかも子犬の時点では予測がつかない。
これまで1300匹以上もの犬をカウンセリングしてきた高橋店長も、「比較的たくさん見てきたマルプーはようやくわかりつつありますが、最近は、ペキプー(ペキニーズ×プードル)、ポメペキ(ポメラニアン×ペキニーズ)、柴コー(柴犬×コーギー)、柴プー(柴犬×プードル)などなど、これまで見たこともないミックス犬も次々と来るようになり、驚くこともあります」と語る。
頭がいいが故の「家族襲撃型のマルプー」
たくさん見てきたというマルプー。店長のブログやSNSにときどき出てくるのが「家族襲撃型のマルプー」という表現だ。文字通り、家族に対して唸る、家族がソファに座ったりしようとすると襲いかかるといった行動をする。
店長によれば、「マルチーズもトイプードルもとても頭がよく、溺愛したり依存したりする飼い主の曖昧なルールや、叱ったらかわいそうという遠慮がちな態度に『自分が管理しなきゃ』と考え、そうした行動につながることもある。両犬種に共通する『活発さ』は、『気の強さ』として現れる場合もあるのです」。
また、日中は大きな問題はないのに、夜になると突然触れないほど猟奇的になるマルプーもいるという。「学術的な根拠やエビデンスがあるわけではなく、あくまでも僕の経験則ではありますが、そういう子の多くは豹変するときに目が真っ赤になったり緑色を帯びたりする。でも朝になると元に戻ることがほとんどです」と店長。
一匹一匹をよく見て適した対応を考え、飼い主との間でこんがらがってしまった関係性を整理し、飼い主の意識を変えていく。それは純血種、ミックスとも変わらないが、「ミックスの場合、そもそもスタンダードがないので一筋縄ではいかない子も」と店長。
さらに、「飼い主さんが知識も情報もあまり持っていないことが多い」とも。純血種の場合は調べようと思えば書籍やネットなど情報もたくさん手に入るが、ミックスはまだまだ情報がそこまで多くないので仕方がない面もある。
そうした状況も手伝い、ペットショップで一目惚れしてして衝動買いするケースが少なくないようだ。そう、ルルくん一家がそうだったように。
お母さんはこう振り返る。「かわいくて仕方がないのに、一方でルルが何を考えているのか、なぜ甘噛みするのか、まるでわからず途方に暮れていました」。店長は、ルルくんのエネルギーを解放しながら、LINEでこれからどういう意識でルルくんに向き合うべきかをお母さんに伝え続けた。
お泊まりを経験し、ルルくんは、お母さんはどう変わったのか? そして、ルルくんと家族を思い、お母さんはある大きな決心をすることになる。
(後編に続く)
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。
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