梅雨時に増える犬の外耳炎 夏に悪化して手術に至ることも!その前に気づいて

梅雨時季は犬の外耳炎が増える

 病気やトラブルから犬や猫を守るため、飼い主さんにぜひ知っておいてほしい知識を、シリウス犬猫病院の院長、石村拓也獣医師が教えてくれます。連載11回目は犬の外耳炎についてです。

梅雨時期に悪化しやすい

 毎年5、6月頃から「耳が赤い」「耳をよく掻いている」「耳が臭い」「耳アカがたくさん出る」「頭をよく振っている」といった症状を訴え、動物病院には多くのわんちゃんがやってきます。

 そう外耳炎ですね。外耳炎は多湿になる梅雨時期などに悪化することが多いです。今回は“犬の外耳炎”に関して、お話ししていきたいと思います。

外耳炎ってどんな病気?

 耳介(じかい)から鼓膜の手前までの通り道(外耳道)に炎症が起きる病気です。

 主に耳のかゆみが見られ、耳が赤くなったり耳垢が増えたりします。

 温度や湿度が上がり始める4月あたりから発症が増え、夏の間に悪化がみられることが多いです。放っておくと炎症が中耳や内耳にまで進行することがあり、そうなると神経症状が出たり、手術が必要になる場合があるので早期発見と治療が大事になってきます。

外耳炎の症状1 耳アカが増える

外耳炎の症状

 外耳炎になると、耳の中が赤い、耳がくさい、頭を振る、耳をかく、耳アカがたくさん出るなどの症状が見られます。

 また、重度になると痛みから頭を触られることを嫌がる、元気がなくなる、首を傾ける、まっすぐに歩けないなどの症状が出ることもあります。

外耳炎の症状2 耳の中が赤くなる

外耳炎の原因は?

  1. 寄生虫(耳ダニ・毛包虫症など)
  2. アレルギー(アトピー性皮膚炎・食物アレルギー)
  3. 角化異常症(脂漏症)
  4. 異物(植物の種、小石など)
  5. 腫瘤(腫瘍やポリープなど)
  6. その他(脂漏症、内分泌失調、分泌腺の異常)など

 これらは単独で外耳炎を発生することが可能な因子と言われています。

 よく原因として言われることの多い、細菌やマラセチアなどの増殖ですが、実はこれら単独の増殖では外耳炎は発症しません。

 正常な耳にも細菌やマラセチアは少数みられますが、もともとある耳道の自浄作用の働きが悪化するなどの変化が起こり、 その結果として細菌やマラセチアなどの二次感染を引き起こすと考えられています。

耳ダニ

外耳炎にかかりやすい犬種は?

 犬種特有の耳の形や特性などにより外耳炎になりやすい犬種があります。

  1. 耳道が狭い:フレンチブルドッグ、パグ
  2. 耳毛が多い:トイ・プードル、ミニチュア・シュナウザー
  3. 分泌腺の異常:アメリカン・コッカースパニエル
  4. 犬アトピー性皮膚炎の好発犬種:柴犬、シーズー、フレンチブルドッグ、レトリーバー種

外耳炎の治療法は?

 洗浄液で耳アカを取り除く耳洗浄を行い、点耳薬や飲み薬で治療します。耳ダニなどの寄生虫がいる場合は駆除剤を用います。

 異物が原因の場合や中耳・内耳まで炎症が及んでいる場合は麻酔をかけて処置しなければならない場合もあります。

 寄生虫や異物、腫瘤(しゅりゅう)などが原因の場合は根治できる可能性があります。しかし、アレルギー体質やホルモン異常などが関与している場合は繰り返すことが多く、継続した管理が必要となります。

(左)洗浄液や点耳薬(右)異物が原因の場合は麻酔下で耳内視鏡を用いる

繰り返さないために

 日々のスキンシップの一環として、耳の状態をチェックするのを習慣にしましょう。正常な耳の様子を知っておくことはとても大事です。いつもと違う感じ(赤み、匂い、分泌物)がしたら早めの受診が大事です。

 また、外耳炎になりやすいわんちゃんは定期的に病院で耳のチェックをしてもらいましょう。

自宅でのケア

 耳アカが軽く付着している程度なら、湿らせたコットンなどで軽く拭き取ってお掃除しましょう。ゴシゴシこするのは厳禁です。

 綿棒でのお掃除は耳アカを耳の中に押し込んでしまったり、耳道を傷つけてしまうこともあるので使用はおすすめしません。

まとめ

 耳の中は、肉眼では症状を確認するのが難しい部位です。問題のなさそうな耳でも実は奥でトラブルが起きていることもあります。適切なケアや検診で愛犬の耳を守ってあげましょう!

【前の回】犬の白内障は定期検査で早期発見を 若齢性や糖尿病性は急激に進行する

石村拓也
獣医師。東京農工大学農学部獣医学科卒業。横浜市内の動物病院などを経て、2017年3月にシリウス犬猫病院開院。川崎市獣医師会、日本獣医皮膚科学会、耳研究会、日本獣医輸血研究会所属。

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この連載について
獣医師さんから
病気やトラブルから犬や猫を守るため、飼い主さんにぜひ知っておいてほしい知識を、シリウス犬猫病院院長の石村拓也獣医師が教えてくれます。
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