犬猫の糞便検査からわかること 病気や感染に気づくためうんちの性状を知っておこう
病気やトラブルから犬や猫を守るため、飼い主さんにぜひ知っておいてほしい知識を、シリウス犬猫病院の院長、石村拓也獣医師が教えてくれます。連載21回目は「犬猫の糞便(ふんべん)検査からわかること」についてです。
便検査の方法~ルーチンに行う検査
動物病院で糞便検査を実施したことはありますか?便は採取が非常に簡単な上に、とても多くの情報が詰まっています。
動物病院では実際にどのように糞便検査を行っているのか、そしてそこから何がわかるのかを、今回はお話しさせていたいただきます。
大体の動物病院では、肉眼での観察、顕微鏡を用いる直接法と浮遊法の検査をルーチンに行うことが多いです。
① 肉眼での観察
見た目はとても重要です。色や硬さ(軟らかさ)、粘膜の有無、匂いなどを確認します。色によって血便、黒色便、白色便などと分類します。血便では大腸付近からの出血を、黒色便は上部消化管からの出血を、白色便は胆嚢(たんのう)や膵臓(すいぞう)の障害などを示唆しています。
ゼリー状の便は粘膜便といい、炎症により大腸からの粘膜分泌が亢進している可能性があります。
② 顕微鏡での観察~直接法
直接法では糞便を直接スライドガラスに薄く乗せ、顕微鏡で観察します。
直説法で見るポイントは、
- 便の細菌活性の様子
- 細菌叢のバランス
- 消化不良の有無
- 細胞成分(赤血球や白血球など)
- 原虫(トリコモナス、ジアルジアなど)の有無 など。
腸内細菌は非常に多くの菌種から構成され、食事内容や体調によってそのバランスは変化します。細菌はその形態から、丸い球菌と細長い桿菌に分類されますが、下痢を起こしてどちらかの細菌が異常に増えていてバランスが崩れていたら異常だと考えます。
消化状態はデンプン粒、筋繊維、脂肪滴などの成分を観察して評価します。いずれも食事中に含まれる成分であり、これらが未消化の状態で糞便中に認められる場合は消化不良が疑われます。
③ 顕微鏡での観察〜浮遊法
浮遊法は、飽和食塩水で糞便を溶かし比重の差を利用して寄生虫卵を検出する方法です。直接法では検出しにくい寄生虫卵などを検出することができます。
便検査の方法~状況に応じて行う検査
ルーチンで行う検査の他に、状況に応じて以下の検査も実施することがあります。
① 遺伝子検査(PCR検査)
外部の検査機関に依頼して、糞便の病原体の遺伝子を検出する検査を行います。PCR検査ではウイルスの感染症や顕微鏡では発見しにくいジアルジアやトリコモナスなどの寄生虫、サルモネラ菌やカンピロバクターというような下痢を起こしやすい細菌の検出が可能です。
② 糞便中ウイルス抗原検出キット
犬・猫に腸炎を引き起こすウイルスを検出する肉眼では検出できないウイルス(パルボウイルス)の感染を診断することができます。
③ ジアルジア検出
ジアルジアは新鮮便でないと見つけることが難しく、検出が難しい寄生虫のひとつです。
このキットを使えば、ジアルジアという原虫の感染を簡単に検出することができます。
正確な診断を得る為に……
検査で糞便を持参する場合は、できるだけ新鮮なものをお持ちいただくといいでしょう。ジアルジアやトリコモナスといった運動性の原虫を検出するためには、採取して2~3時間以内の冷やしていない新鮮便が必要です。採取してから時間が経つと検査結果の信頼性が低くなってしまうんです。
また、糞便はラップやビニールなど水分を吸収しないものに包みお持ちいただくのがオススメです。指の第一関節くらいの量があれば検査は可能となります。
まとめ
毎日するうんち。うんちからわかることはとても多いです。下痢の時はもちろん、普段の時のうんちの性状を知っておくのもいいでしょう。糞便検査をうまく利用して愛犬・愛猫の健康に役立てられるといいですね!
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