完全室内飼いの猫にワクチンやノミ予防は必要? 災害時など、万が一に備え予防しよう

 猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回も、入交先生が読者から寄せられた質問に答えます。

病気やノミの予防、外に出ない猫も必要?

 今回も多くのご質問を皆様から頂きました。ありがとうございます。少し今までのお話の内容の復習にもなるかもしれませんが、ご一緒に猫の気持ちになって猫さんの困った行動について考えてみましょう。 

 今回最初のご質問です。

 Q、完全室内飼いでも、ワクチンやノミ予防は必要でしょうか?(たまさんからの質問)

 A、多くの猫のご家族が思うご質問だと思います。ずっとお家にいるのに、ほかの猫さんたちと会うようなこともないので、病気もノミダニももらってくる可能性は低いのに、それだったら、ワクチンなど身体に負担をかけたくない、と思ってしまいます。

 それでも動物病院でお勧めさせていただいているのは、万が一のこともあると考えているのです。例えば急に家を空けるのでホテルに預ける場合、災害時に猫さんたちを一緒に避難所に連れていく場合、ちょっとしたはずみで猫さんがお庭に出て行ってしまった場合など、実は基本的にはお外に出さないでも、病気の予防やノミダニの予防はしておいた方が安心である場面は多くあるのです。 

完全室内飼いでも、ちょっとしたはずみで外に出てしまうことも。病気やノミダニの予防はしておこう

 うちの猫も先日洗濯物を干していた際にちょっとベランダから庭に出てしまっていました。すぐに戻しましたが、何が付いていてもおかしくありません。災害大国日本ですから、いつ一緒に逃げてどこに行くかわかりません。その時に「予防しておけばよかった」では後悔しそうです。

 実はノミは人が洋服などにつけて持ち込むこともあり、私がその経験者なのです。昔飼っていた、絶対に家から出ない猫がある日、ノミアレルギーを発症して慌てました。私が持ち込んだようです。そんなこともありますので、ぜひ予防できる病気の予防はしてあげてください。

子猫の甘がみをやめさせたい

 Q、子猫の甘がみがすごいです。6カ月すぎたのでとても痛く、何とかやめさせることは出来ないですか?(くぅさんからの質問)

 A、6カ月の子猫さん、遊びが盛んなお年頃です。遊んでほしくて人をかんでいます。「ママ、ママ、遊んで」という声が聞こえてきそうです。

 そんな時は「かむ子は遊ばないわよ」と教えてあげるのが一番です。かんできたらすぐに手を引っ込め、その場を立ち去ってください。子猫同士の遊びと同じことをします。

子猫がかんできたらその場を立ち去って、「かむ子とは遊ばない」と教えてあげよう

 子猫同士も遊んでいて、かみつくお友達がいたら、痛いのでかまれた子は逃げていきます。かみついたら遊んでもらえなくなる、と子猫は学習してかむ力加減を学んでいますので、人もかまれたらその場から逃げて遊ばないようにします。

 10秒くらい待ったら、今度は猫のおもちゃを持って遊んであげましょう。人の手をかんだら遊びがなくなるけれど、おもちゃはかんで遊んでいいのだと学習します。

 かまれたことに対して「こら!」と言ったり、たたいたりして叱らないでください。余計興奮することになったりして逆効果の場合もありますし、逆に叱ることで人が怖い存在だと思ってしまって、そのあとの関係性にひびを入れてしまうこともあります。

 悪いことをしたら大好きな人が「無視をする」という制裁は、猫にとって非常にきついので、そちらで「かんだらダメなんだ」ということを教えてあげましょう。

ご飯前のすりすり、どんな意味?

 Q、ご飯の前だけすりすりします。この行動の意味は何ですか?(りょうちゃんさんからの質問)

 A、甘えているのだと思います。ごはん♪ごはん♪楽しみだな。大好き。といったところでしょうか。

 通常すりすりがごあいさつの意味があったりします。フレンドリーなごあいさつやポジティブな意味合いのある社会性の行動です。

 この猫同士のフレンドリーなコミュニケーションの言葉を食事前のうれしさに使ってみたところ、人間もなんだか楽しそうだしご飯が来るので、「ごはん♪ごはん♪ありがと!」の気持ちはすりすりで伝えているのだと思います。

ご飯前のすりすりは、甘えているのかも

子猫がカリカリを食べない

 Q、4カ月の猫が、カリカリをたべません。(あゆみさんからの質問)

 A、難しいご質問をいただきました。カリカリをまったく食べず、口が痛いなどの問題がありそうなら、動物病院でまずは相談をしてみることもお勧めします。

 この猫さんは缶のフードは食べるのでしょうか?もしそうなら、猫はそもそも腎臓のためにも水分を多くとらせたい動物なので、缶フードを食事として与えることは悪くないと思います。

 しかし、ドライも食べられるようになってほしいですね。まだ4カ月なので、遊びながら興味を持ってもらうのはいかがでしょうか?

いろいろなカリカリを試してみよう

 カリカリを手に乗せて食べるなら食べさせ、そのあとカリカリを投げて取りに行っては食べるゲームをさせてもよいかもしれません。カリカリが大きすぎるのであれば食べにくいだけかもしれないので、ハサミやピルカッターで小さくすることもおすすめです。またカリカリの形やにおいによっても食べやすさがあるので、色々な種類を試されるのもよいでしょう。

 次回もまたご質問にお答えします。

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(次回は4月11日に公開予定です)

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入交 眞巳
獣医師。東京農工大学 特任准教授。どうぶつの総合病院・行動診療科主任。旧日本獣医畜産大学卒業後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を有する。

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この連載について
ねことの暮らし相談室
 獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が、どうやって猫と幸せに暮らすかのヒントとともに、猫たちの困った行動への疑問に答えていきます。
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