猫が抱っこを嫌がる理由は? 苦手なだけ、自然に寄ってくるのを待つ時間を楽しんで
猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回からは、入交先生が読者から寄せられた質問に答えます。
読者からの質問に回答
この「ねことの暮らし相談室」の連載も8回目となりました。この連載の7回分はお約束だったのでテーマを決めてお話をしてまいりましたが、たくさんの皆様に読んでいただいたおかげで連載をもう少し続けることになりました。ありがとうございます!!そこで、今までいただいていました多くのご質問から毎回いくつか選んで一緒に考えていくことになりました。
抱っこが苦手な猫の心境は?
今回最初のご質問です。
Q.猫ちゃん2匹(オス・メス共に去勢済み)と暮らしています。どちらも抱っこを嫌がります。抱っこを嫌がる理由、心境はどういったものなのでしょうか?(ンシさんからの質問)
A.単純に「抱っこ」されるのが不得意なのだと思います。個性と思っていただいてよいと思います。私たち人間もスキンシップが好きな人と、くすぐったかったり、恥ずかしかったり、さわられるのが生理的に嫌でスキンシップが苦手な人もいます。理由はなく、相手が嫌いというわけではなく、ただ苦手な人がいるのと同じでしょう。
また、幼い時の経験も関係しているかもしれません。子猫の時から抱っこされて人からミルクをもらっていたら人に抱かれるのは問題ないかもしれませんが、大きくなってから人との生活を始めた子は、人の抱っこは、猫の世界としては不自然な行動なので、嫌いな場合もあると思います。
個性なので、「こういう子たちなんだ」と理解して、自然にそばに寄ってくるのを待つ時間を楽しんでください。
特定の素材をなめまくる理由は?
Q.現在6歳8カ月の雄。成猫になったくらいからの行動です。ポリエステル不織布などの化学繊維を執拗(しつよう)になめまくります。ザーリザーリと舌が切れるんではないか?と思うほどです。革靴もなめまくります。この特定の素材をなめまくる行動はどういった理由が考えられますか?(ゆるねこさんからの質問)
A.特定の素材をなめ続けるような行動は「葛藤行動」の中の、「常同行動」と言われるものです。何らかのストレスや葛藤状態になると、私たち動物は「葛藤行動」という行動を出現させます。
例えば、退屈という葛藤(刺激が欲しいのに刺激がない)や、ストレス(同居ねこが嫌い、野良猫が毎日来るなど)があると、その葛藤やストレスの発散として、色々な葛藤行動をします。その中に同じ行動を繰り返す場合があります。
人では貧乏ゆすりとか、爪をかむといった行動でしょう。これが「常同行動」です。猫の特定のものをかじる行動は、この葛藤行動の中の常同行動だと思います。
しかし、ゆるねこさんの猫のように、暇があるとスイッチが入ったように、ロックオンしたかのようになめ続けるのであれば、これは脳の機能異常が始まっている証拠で、「常同障害」という病名が付きます。もともとは常同行動だったのかもしれませんが、ストレスが強すぎたり、長すぎたり、遺伝的要素があると「常同障害」に発展してしまいます。
治療はお薬を使う方法に加え、行動修正と言って、行動を変化させていくことで脳の機能を改善させる方法を使います。
フードの新しい袋を開けると喜んで食べるのは?
Q.ご飯をあまり食べず、新しい袋を開けると少し喜んで食べます。よく吐き戻します。病院では、何も心配ないと言われましたが、どこか悪いのでは?と思ってしまいます。(のりりさんからの質問)
A.猫は新しい袋を開けると、非常に喜んで食べてくれる、は猫あるある、ですね。もし猫さんが病気でないのなら、古くなったご飯を食べず、新しく開けたのを食べるのは、新しい袋のご飯は酸化されていないのでおいしいのだと思います。
わがままを言って食べないで待っていると、おいしいものをご家族がくれることを知っているのかもしれません。猫は賢いので、おいしいものがでるまでがんばって待っている可能性もあります。
猫は水分をたくさん取らないといけない動物なので、この機会に缶フードもあげるようにして、ドライはおやつとして、おもちゃ(パズルフィーダー)に入れて与えると、遊びながらたくさん食べてくれるかもしれません。お試しください。
夜同じ布団で寝ない…信頼されてないの?
Q.夜同じ布団に寝ません。距離をおいてじーーっと見ていますが、添い寝も足元にも寝ません。起きている時は後追いをして、姿が見えないと鳴くのに……信頼されていないのでしょうか?(しず。さんからの質問)
A.きっとご家族のことが大好きな猫ちゃんなのだと思いますが、一緒に寝るのは、よくわかっていないだけかと思います。
私も元野良猫だった初代の猫の小太郎君は、一緒に寝てくれませんでした。今一緒に住んでいる、元実験動物施設にいた猫で、10歳の時にうちに来た子も、添い寝はしません。
でも、子猫の時からミルクをあげて育てた子は布団に潜り込みます。育った環境で、添い寝に関しては違うのかもしれないですね。
ちなみに小太郎は、一緒に生活して9年目に初めて添い寝をしてくれました。当時私は青森県に住んでいて、冬の青森の夜中、その夜は本当に寒かったらしく、寝るとき小太郎はリビングに一人でいたはずだったのに、夜中に私の布団に入ってきました。
各自寝るときは個室を持つクールな関係だったので、うれしい行動変化でした。さむーい場所に引っ越されると状況が変わるかもしれません。
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(次回は3月14日に公開予定です)
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