「調子に乗らないで!」7年もなつかなかった家猫 猫仕様の家でとうとう変化が起きた

 2017年、待望の我が家ができました! 猫のことを考えて作った我が家。猫たちがのびのび暮らしてくれているのが何よりうれしいですが、実は私たちと猫の関係にも、微妙な変化がありました。

(末尾に写真特集があります)

家庭内野良猫・サビ

 サビと出会ったのは東日本大震災の少し前。当時暮らしていた借家の庭に、妹(姉?)猫のボビと一緒に暮らしていました。それがひょんなことから我が家で保護し、妊娠していたサビは帝王切開でエンマを産み……。このいきさつは以前もこの連載で書きました。

 そのサビなのですが、どうにも触らせてくれないのです。いわば家庭内野良猫状態。ご飯どきにはみんなと一緒に食べますが、頭をなでようとするとさっと逃げ出し、振り向いてジロリと迷惑そうににらみつけます。もちろん、爪も切らせてはくれません。

 妹のボビは本当に優しくて甘えん坊なのに……。どうしてなついてくれないんだか。悲しいけれど無理は禁物。サビの気のすむように距離を縮めないまま、暮らしてきました。長年、いろんな猫を飼ってきましたが、ここまでなついてくれない子は初めてです。

 この子が将来病気して、投薬や自宅での点滴が必要になったらどうなるんだろう……。それだけが私たち夫婦の懸念でした。

箱に収まる猫
どう考えても箱のサイズが足りないと思うんだけど……。なぜだかぎっしり詰まりたがるひとたち。奥がサビ、手前のハチワレが息子のエンマ。白三毛が妹のボビ。

寝ぼけているすきに……

 獣医さんに行く時、キャンピングカーに乗せる時、どうしても捕まえねばならないことがあります。そんな時はひとしきり騒いで逃げ回るのですが、どんなに怒っていても、サビが絶対にしないことがあります。
それは、人間を傷つけること。

 どんなに怒っていても、絶対にかみついたりしません。爪もとんでもなく鋭くなっていますが、人間に爪を立てないのです。怒りん坊で怖がりのサビですが、どうやら私たちを傷つけてはいけない人・家族だとは思ってくれているようです。

 新居に越して2年目の秋のこと。ひだまりに置いた猫ベッドで、サビは息子のエンマとよりそって昼寝していました。私はそっとそばに座り、まずエンマをなでます。いつもどおり、ゴロゴロとのどを鳴らし、気持ちよさそうに額をこすりつけてくるエンマ。その動きでサビも目をさましました。

 いつもなら「うわ、お母さんいる! なんで?」とばかり跳び起きて出て行ってしまいます。そのサビが、ちらっとめんどくさそうにこちらを見ただけで、動こうとしません。

「ひょっとして……さわってもいいの?」

 上から手を出すと本能的に怖がるので、下からそーっと。あごの下を、指先だけでこすります。

「……もしかしてサビ、のど鳴らしてる?」

 感動しました。一緒に暮らし始めて7年。サビがのどを鳴らすのを聞いたのは初めてのことです。少しずつ動きを大きくして、のどをしっかりさすってあげます。耳の前、おでこ、後頭部……。5分もそうしていたでしょうか。

 急にサビがキッとこちらを見据えました。次の瞬間、ピョン! つれない態度で行ってしまいました。

 尻尾をピン、と立てて、軽やかな足取りで去っていく後ろ姿は「はいここまで! 調子に乗らないでちょうだい。私はそんなに簡単な女じゃないのよ」と言ってるかのようでした。

触られる猫
触らせてくれるのは、寝ぼけているときだけ。不意打ちくらって、この表情(笑)

初めての抱っこはさらに2年後

 その日を境に、くつろいでいるとき限定で、少しずつ触らせてくれるようになりました。丸くなって寝ているおなかをモフったこともあります。でも、抱っこはさせてくれません。

 そしてその年の秋。サビを定期検診に連れて行きました。当然、大騒ぎして抵抗します。念のために洗濯ネットに入れてクレートに入れて病院へ。「相変わらず、なついてくれないんですか……」。獣医さんも苦笑いです。

 手際よくエリザベスカラーをつけ、てきぱきと爪を切り、耳掃除もしてくれました(そうか、エリザベスカラーを使えばいいのか。家でもできるかも?)。ぼんやり考えていたら、先生が「血液検査の結果が出るまで、抱っこしてみますか?」

 え? どうやって?

 サビに古いバスタオルをばさっとかけて、視界を奪いました。その状態でそっと抱え上げ、椅子に座った私のひざに。

「このまま、力を入れずにそっと抱いていてください。逃げ出しそうなら、エリザベスカラーの後ろ、首をおさえて」

 猫より飼い主のこっちが緊張しました。サビは小刻みに震えながら、低い声でうなっています。

「サビ。大丈夫だよ。ね」

 こちらも低く、優しい声でなだめます。しっかり抱きかかえ、あごの下をなで、タオルを少しだけずらして、顔を覗き込みます。きれいな、透き通った緑の瞳が、こっちを見つめ返しています。その目に怒りの色はありません。やがて体から力が抜け、うなり声もやみました。

「あんたを抱っこできる日が来るとはね……」

 その夜。もしかしたら、抱っこできるようになったかもと、暖房の前で丸くなっているサビを抱き上げてみました。

「ウウウッ……ニャンッ!」

 絶対に爪は立てない。歯も立てない。けれど、決然と身をよじって床に飛び降り、さっさと逃げてゆきます。途中で立ち止まり、キッとこちらをにらみつけて……。

「調子に乗ってんじゃないわよ!」

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浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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