真っすぐに意思を伝える猫「くま」 朝はごはん、と言いながら顔をかんで起こした
くまが他の猫を受け入れるとは想像もできなかった。
ここは私の場所
友人たちと暮らす家にくまが居着いたとき、すでに福ちゃんという三毛猫が住んでいた。あとから来たくまは「ここは私の場所」と言い張り、気の優しい福ちゃんを追い出してしまった。
こまった福ちゃんは隣のおじさんの家へ出入りするようになった。福ちゃんを溺愛するあまり、甘党のおじさんはかりんとうや大福をあげていると言う。
かわいがってくれるのはありがたいが、 猫に甘いものはいけない。おじさんには申し訳ないけれど福ちゃんを取り戻しに行き、悩んだ末に実家へ送りこんだ。
両親は長年一緒に暮らした茶トラの猫を看取ったばかりで、福ちゃんを快く迎え入れてくれた。今年で18歳になり、 いまも穏やかに暮らしている。
「久しぶり」と出迎える
くまは真っすぐに意思を伝える。 庭に出て陽の光を浴びたい。カリカリじゃなくて缶詰が食べたい。して欲しいことがあると大きな声で呼びかけて、その方角をちらっと見てから視線を合わせる。
朝は「ごはん」と言いながら顔をかんで起こした。
以前の同居人が遊びにくるのを喜んだ。会わない時間が長くても全員を覚えていて、「久しぶり」と目の前に座って出迎えた。
みんなで食卓を囲むと当然のように参加する。ひざの上で眠ったふりをして、目を離したすきに、いつのまにか肉の端っこを食べている。
夫婦で家を空けるときは友人たちが世話をしに来てくれた。くまは移動を嫌うため、ホテルに預けたことはなかった。
誰が泊まっても必ず枕元で一緒に眠り、朝は顔をかんで起こした。
◆この連載「家猫庭猫」が、来年1月に書籍化されます。詳しくはこちらからどうぞ。
(次回は12月30日に公開予定です)
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