8畳2間に犬160匹超の多頭崩壊 すべての犬を保護、愛護団体や新しい飼い主の元へ
島根県出雲市の住宅街にある民家で、160匹あまりの犬が8畳2間で飼われていた。飼い主の許可を得て10月に調査した公益財団法人「どうぶつ基金」(兵庫県芦屋市)によると、多頭飼育崩壊が起きていたといい、「一般家庭での多頭飼育崩壊としては国内最大規模」としている。
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餌不足でやせた犬たち
基金によると、敷地には犬がいる8畳2間の平屋と民家がもう1棟。飼い主の家族3人はこの民家と平屋で暮らしているという。
基金の佐上邦久理事長が10月に平屋に立ち入ったところ、犬は中型犬程度の大きさで、餌不足のためやせていて、一部の犬は他の犬のふんを食べていたという。「成犬のふんが出るのを子犬がお尻の後ろで待っている、悲しい状態だった」と振り返る。
飼い主の家族は、40年ほど前に野良犬1匹を飼い始め、次々に増えてしまったと説明したという。
近隣住民によると、30年ほど前から多頭飼育の状態だったという。頻繁に犬の鳴き声が聞こえ、洗濯物が干せないほど臭いがするときもあるという。近くの公園では、臭いがひどく住民が行くのを控えるようになってしまったという。
「虐待はなかった」と報告
多頭飼育崩壊はなぜ見過ごされてきたのか。
複数の住民によると、県出雲保健所や出雲市にたびたび連絡したが状況は変わらなかったという。同保健所は「住民から連絡があると、飼い主の家を訪問し不妊去勢手術をするよう指導してきた」と話す。しかし、「家族から犬の数は十数匹と説明され、玄関先での指導にとどまっていた」と釈明する。
保健所が現場を確認したのは今年7月。住民らが、保健所の立ち入り調査を求める署名を県や出雲市などに提出してからだ。
保健所は動物愛護法に基づいて立ち入り検査した。しかし、保健所によると、汚物が適切に処理されていたことなどを根拠に、住民らに「虐待はなかった」と報告。実際には、飼育頭数すら正確に数えられていなかったという。ただし、悪臭など周辺の住環境への影響を確認したことから、県がどうぶつ基金に不妊去勢手術の協力を要請した。
佐上理事長は「数年前から苦情があったのに、虐待を認めず、深く関わらなかった行政の対応の結果、この数になったのでは」と話す。
「時間がかかっても慣れてくれたら」
基金は出雲保健所などと連携して、11月上旬に犬を民家から出し、不妊去勢手術とワクチンの接種を実施。保健所内に保護した。
その後、県内の動物愛護団体がウェブサイトやSNSなどで犬の引き取り手を募集し、出雲保健所も保健所内で譲渡会を開いた。県によると12月初旬までに、すべての犬が県外の動物愛護団体や愛犬家らに引き取られたり、一時預かりとなったりしたという。
動物愛護団体は「犬は首輪や散歩をしたことがなく、普通に飼うことができるようになるまでリハビリが必要」と話す。島根県雲南市から夫と譲渡会に来た60代の女性は「犬たちのために少しでも役に立ちたいと思った。時間がかかってもうちに慣れてくれたら」と話し、1匹を引き取った。
(榊原織和)
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