接客、営業、商品チェック……元ノラ猫「どらやき」はデキる愛され部長!
革小物を作る会社「Kanmi(かんみ)」には、仕事のデキる猫部長がいます。元ノラである「どらやき」部長(推定4歳♂)の、ある日の一生懸命な仕事ぶりをのぞいてきました。
「接客なら任せて」
浅草雷門から歩いて2~3分。「Kanmi」のアトリエの小さなドアを開けると、木と革のいい匂いが立ち込めていた。ここは、経営者の松永豊・由紀子さん夫妻をはじめスタッフ全員、ものづくりと甘いものと猫が大好きな会社。「部長」の肩書を持つ看板猫は、「どらやき」というおいしそうな名前の茶トラ猫である。
仕事中のスタッフの間にいた彼は、性格のよさそうな大顔をこちらに向けた。ポテッとした体格に、短い足とシッポが愛嬌たっぷりだ。だが、こう見えてどらやきくん、なかなかの敏腕部長なのである。
まずは、徹底した接客サービス。出入りしている人はもちろん、初めての客でも、その会話に自分の名が出るや、いそいそと接客に出てくるという営業熱心さ。
「猫が大の苦手だった宅配便のお兄さんも、お腹を見せて転がって、手なづけちゃいました」と、由紀子さん。
「ボクの仕事は接客だけじゃないよ」とばかり、どらやきくんが見上げる。
道ばたのノラだった
どらやきくんは拾われ猫である。3年前の3月の朝。自宅から自転車通勤をしていた由紀子さんは、大通りの駐車場に所在なさげにポテッと座っている黄色い猫を見た。
「すぐそばを車が行き交う場所なので『危ないよ~』と声を掛けたら、『ニャア』と。その後も毎朝そこで会い、未去勢でもあったので、ノラと判断して会社に保護しました」
会社では、やはり保護猫だったキジトラの大福くんを見送ったばかり。由紀子さんが連れてきた猫はみんなに大歓迎され、こんがり色から「どらやき」という名に。キャリーに入り、由紀子さんの自転車で自宅からアトリエに出勤するようになった。「猫部長」の肩書を与えられ、スタッフに負けない「いい仕事」をするようになっていく。
多彩な仕事ぶり
どらやきくんは、ここぞというとき以外は、脱力系だ。一番甘い美奈さんの膝の上がお気に入りで、基本寝ている。しかし、やるときはやるのだ。
仕事[1]…来客への接待・営業。
仕事[2]…会議や打ち合わせの司会進行(座の真ん中をぶんどり、みんなの顔を見渡す)。話の進行についていけなくなると、首をかしげる。
仕事[3]…在庫チェックや出荷商品のチェック(匂いをクンクン嗅ぐ)。
仕事[4]…新作バッグの内容量と、持ち手の強度チェック(中に入ってみる)。
仕事[5]…スタッフの間を巡回してやる気を引き出す(足をトントンして「部長をかまえ」とひと休みを促すときもある)。
仕事[6]…会社のHPへの写真提供、自分のツイッターを更新(部下にやらせている)、ブローチのモデルなどの販促活動。
仕事[7]…スタッフの慰労と親睦に尽力(トロい動作や、消防車の音にも隠れるビビりぶりで、いつもみんなを笑わせている)。
寝ている時間の方が圧倒的に長いとはいえ、どらやき部長の緩急を心得た仕事ぶりは、かくも一生懸命なのだ。
いつもみんなの真ん中に
最後に、人間スタッフたちに、部長の魅力を聞いてみた。
「呼ぶと、くるっと一回まわってきてくれる律義さ」と、豊さん。
「諦めない心。ご飯が出てくるまでお皿の前で佇み、それでも出ないと、みんなの机の上を鳴きながら巡回します」と、由紀子さん。
「寝ていても、名を呼ばれると、半分寝ながらやってくるところ」と、美奈さん。
「商品のチェックを手伝ってくれる仕事熱心さ」と、入社1年目の真依香さん。「猫のいる会社」で検索して応募したという。
「どらと呼ぶと、どんなときにも元気に返事をしてくれる明るさ」と、新人の眞悠子さん。
仕事がデキる男は、やはり魅力的。愛され部長のどらやきくん、これからも、皆さんの真ん中でお仕事がんばってね!
(写真・文 佐竹茉莉子)
- Kanmi
- 東京都台東区雷門1-1-11
TEL:03-6280-7225
https://www.kanmi.jp

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