「猫いりませんか?」 きょうだいのキジトラを譲渡 …とてもできずにうちの子に

3匹の猫
食いしん坊が増えて我が家は大騒ぎ。キッチンで騒ぐのでいっぺんに捕獲されて不満顔の3匹。左から、エンマ、ベル、アル。

 今から8年前のこと。中古車センターの車両で猫バンバンして我が家にやってきた、永田アルファード君と上条ベルタちゃん。ようやく人に慣れて きたわけですが……。

(末尾に写真特集があります)

きょうだい一緒に譲渡したい!

 ようやく抱っこもできるようになってきたころ。2カ月の隔離も終わって、血液検査の結果は陰性。つまり深刻な感染症はなし。私たち夫婦は、このキジトラきょうだいを誰かに譲渡するつもりでいました。その時点で自宅には、梵天丸、ユーリ、栄町ビリビリ団の3匹の合計5匹がいたからです。

 隔離生活の2カ月の間、私は勤め先の編集プロダクションで、会う人会う人「猫いりませんか?」と声をかけ続けていました。グラフィックデザイナー、イラストレーター、カメラマン。出版社の人まで、もう手あたり次第。

 とはいえ、相手の事情もある程度把握しないといけません。猫が飼えそうな環境にお住まいかどうか。そもそも動物が好きかどうか。仕事の合間の雑談でそれとなくリサーチして、良さそうだと思うと、キジトラ2匹の写真を見せて打診します。

「うーん。帰って家族に相談してみます」

 みなさん子猫の写真に可愛い、と目を細めてくださるのですが、さすがにその場で「引き受けます」という人はいません。そりゃ当然でしょう。

 私たちの希望は、できれば2匹一緒に引き取ってもらえること。片時も離れず、爪切りのときにどちらかが悲鳴をあげると(大げさなだけ)、もう一方が飛んでくるほどの仲良しです。しかし、いきなり猫2匹をまとめて受け入れてくれるご家庭など、そう簡単には見つかりません。

僕がなんとかするよ

 そんなある日。社内デザイナーさんのお知り合いが、2匹で飼いたいと希望している、という話が舞い込んできました。やった! 譲渡先が決まるかもしれない!

 安心したと同時に、一抹の寂しさもよぎります。自宅ではすでに隔離を解いて、先住猫たちとも仲良くなり始めたころ。情が移るといけないから、あえて名前は付けずにおりました。

 自宅に帰って夫に話をします。

「そうか、よかった」

 そういう彼の表情に影が差したのがわかりました。やっぱり寂しいのです。

 とはいえ私たちは賃貸住宅暮らし。多頭飼育は了承してもらっているものの、7匹もの飼育は未経験です。それにその家は建て替えを前提とした3年限定物件でした。退去時期まであと半年、というタイミングだったのです。

 猫を7匹も猫を連れての引っ越し先が、そう簡単に見つかるかどうか(いえ、5匹でもそれは変わりませんが)。とにかく課題は山積みです。つまり、一時の感情で決めていいことではない、はずなのですが。

 一夜明けて、仕事に出る用意をしていると夫が言いました。

「この子たち、うちで飼えないかな。次の家のことも、僕がなんとか考えるから」

猫のきょうだい
いつも仲良しのベル(左)とアル(右)。こうやって毛づくろいしているうちは平和ですが、ここからケンカに発展することもしばしばです。

何といって断ろう……

 夫の申し出は、正直に言えばうれしかったです。私だって情が移っていたのですから。しかし相変わらず課題は山積みだし、譲渡希望者も出てきてしまっています。それをどうするか。

「どうしよう。なんと言おう……」

 通勤電車の中で頭がぐるぐるしました。私が必死なのを見て、あちこちに声をかけてくださった人がいる。あれこれ検討して、せっかく決断してくださった人がいる。それを簡単に「やっぱり差し上げられません」だなんて、言えるはずもありません。

 迷い迷い、デザイナーフロアへ脚を運ぶと、くだんの社内デザイナーさんが申し訳なさそうに「猫ちゃんたちのことなんですけど……」と話しかけてきました。

 聞けば、昨夜そのお知り合いから連絡があり、お子さんに猫アレルギーが発覚したのだというのです。元々小児ぜんそく気味だったそうで、猫を飼うにあたって主治医に相談。血液検査をしてみた結果、アレルギーがわかったのだとか。

 はじめてのペットだし、万全に用意しようとお考えだったのでしょう。真摯な態度にこちらが感動したほどです。

「せっかくのお話なのに残念で。申し訳ありません!」

 こちらの事情など知る由もない彼女は本当に申し訳なさそうです。私はと言えば、安心すると同時にかえって申し訳ない気持ちでいっぱいです。謝る彼女をあわてておしとどめ、こちらの事情を説明。ふたりで大笑いしました。

名前はアル、ベルに決定!

 永田アルファード君はアルに、上条ベルタちゃんはベルに決定。安直ですが、覚えやすいし由来にもつながるので、それがよかろうということになりました。

 さあ、これで未体験の7匹暮らしが継続することになりました。まずは家を探さねば。諸条件を考えたら、そう簡単には見つからないでしょう。退去期限が決まっている以上、見つかりませんでした、では済まされません。

 予想通り、新居探しは難航しました。住んでいた市内には見つからず、近隣にも範囲を広げ、問い合わせと下見を繰り返しました。そうこうするうち、猛烈に猫好きな不動産屋のおばさんと知り合えたのです。

「わかったわ。いくつか心当たりに交渉してみる。その分敷金は高くなるし、物件は古くなるけどいいわね?」

 何と心強い。そしてようやく一軒、みつかりました! 住み慣れた街は離れることになりましたが、ふたりと7匹で引っ越すことになったのです。

7匹体制だったころの、冬のある朝。人間の寝るスペースなどどこにもありません!

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浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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この連載について
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猫と暮らし始めて、気が付けば40年! 保護猫ばかり6匹と暮らすライターの、まさに「カオス」な日々。猫たちとの思い出などをご紹介します!
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