猫、G退治はできずとも 前足をちょこんと乗せ「そばにいるよ」
「猫の手も借りたい」なんてことわざに使われるほど、猫は身近な存在でありながら、役には立たない生き物の代表だったりします。
役に立たない、というと言い方がよくないですが、“働き手”という意味での役立たずということですよね。しかし、何らかの“役に立たないもの”がそばにないと、生きていけないのもまた人間。
でも、役に立たないように見えて、猫以外には務まらないのでは?というような難しいことを、サラリとこなしてしまうこともあったりする不思議な存在でもあります。
猫に「G」退治はできる?
まずは、役に立たなかった出来事から。先日、我が家に「G」が出たんです。ジャイアンツじゃありません。あの恐ろしい害虫の頭文字です。
白壁の我が家。キッチンの天井の隅に、黒点の違和感がありました。視界のほんの隅に。
もしやと、そこに焦点を合わせると……でたーーー出てしまった! ここ数年見ていなかったのに、ついに出たんです。
「キャァァアアアア!」
自分でも信じられないくらいのTHE 悲鳴が出ました。
2匹の猫も1歳の子どもも、一瞬時が止まっていましたが、私がGに背を向けて深呼吸していると、猫はまた寝て、子は遊びを再開していました。わりと冷静な面々です。
動きはないとはいえ、あいつと暮らすつもりも視界に入れておく気もない! どうにかしなければ……。
そういえば、猫を飼っている人の家では、猫がGをくわえてきて、飼い主が「ギャー!」と悲鳴をあげる、という出来事が起こると聞いたことがあります。Gっぽい猫のおもちゃもあるくらいなので、猫にとって、Gはちょうどいい獲物のはずなのです。
以前、我が家にヤモリが迷い込んできたとき、チョイチョイ触って、たぶん尻尾を切らせてしまったこともありました。
ヤモリにあれだけ興味があったのだから、Gにだって!
猫を見ると、サビ猫のあんずはテーブルの下、キジトラ猫のモモは座椅子で寝そべっています。つまり休めの姿勢で、獲物を捕るような雰囲気はみじんもありません。
ダメだろうなと分かりつつも、声をかけてみました。
「ちょっと猫ら~あそこにいるやつ、捕ってきてよー」
私が叫ぶ前まで爆睡していた猫ら。獲物に向かうどころか、体を起こすことすら面倒くさそうにダラけています。
仕方がないので、入浴中の夫に早めに出てきてもらって(気の毒)、殺虫剤でなんとかしました(省略)。
Gが夫に向かって来るなど、なかなかの大立ち回りがあったのですが、猫は「何かやってんなー……」みたいな顔をするだけで、「G」がいたことすら気づいていなかったかもしれません。
とはいえ、もし猫が近づいてきたら殺虫剤をそこら中に吹き付けることはできなかったし、邪魔しなかっただけよかったのかもしれません。
……ということにしましょう。
心のサポートに大いに役立つ猫
そんな場面においてはさっぱり役に立たないかと思えば、一方で大いに役立つこともあるのが猫。
G事件の数日後、闘病中だった親族に不幸がありました。覚悟していたとはいえ、突然のことで、涙が止まりませんでした。
すると、どこからともなくキジトラ猫のモモがやってきて、不思議そうに私の顔を覗き込みます。そして、お手々をそっと私の太ももに置いたのです。
その時は余裕がなくて、モモの優しさに反応することはできなかったけれど、後からモモの温かい前足のありがたさに気づいたのでした。
「何か悲しいことがあったの? 何もできないけれど、そばにいるよ」
まるで、モモがそう言っているような気がしました。思えば、猫たちは私が体調を崩してぐったりしているときも、辛い出来事に落ち込んでいるときも、ただそばにいてくれました。サビ猫のあんずも、普段は天真爛漫な暴れん坊ですが、そっと寄り添ってくれることもあります。
そんなとき、身近な人に元気づけてもらうこともあるけれど、物言わぬ猫だからこそ、そばにいてくれてよかったと思うこともあります。
猫はいつだって、私の心のサポートをしてくれていたんです。
猫は便利さにおいてはサッパリ役に立たないけれど、情緒の部分で、少なくとも飼い主にとってはなくてはならない存在なんですよね。
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