動物病院は怖い所? ネコの不安を取り除くために出来ること
山で保護され我が家にやってきたビビリなネコ「くまお」は、山とは勝手の違うマンションでの暮らしに慣れず、しばらくは怯えて暮らす日々でした。そんなくまおとどうコミュニケーションをとってよいのか? 距離は縮まっているものの、どこかお互い遠慮のある暮らしを3年近く送っていました。
病院に行く気配を察知するくまお
超ビビリなくまおにとって、中でも一番ストレスなことは通院。毎回連れて行くキャリーの中からガッチガチに緊張し、常に目を見開いているか、漬物石のように丸まっているか、診察台でも肉球にグッショリ汗をかいていました。
それを見ると申し訳ない気持ちになりながらも、「くまおのため」と自分自身に言い聞かせ、捕まえて病院に連れて行っていました。「くまおのため」と言いながら、飼い主の安心のためでもあったんですよね。そんなくまおの様子が変わったのは去年くらいから。
グリーフケアを教えている阿部美奈子先生によると、どうぶつが普段飼い主とどのようにコミュニケーションをとっているかというと、(私は言葉を理解していると思っていましたが)実際は飼い主の表情や、声色、行動から日々家の中で信頼する飼い主の様子を観察して理解しているそうです。
通院前はいつもと違い、飼い主がソワソワしているな? 何か嫌な事が起こるかも? とそんな様子を素早く察知するのです。
くまおは動物病院に予約の電話する私の会話を聞き分けて、速攻で隠れるという特技をもっています。それは私が動物病院との電話の後に、嫌な事が起こると学んでいたのですよね……。そして、「また嫌がるくまおを病院に連れていかねば……」という私の憂鬱なオーラも敏感に感じ取っていたようです。
生活する家は「安全基地」
どうぶつにとって、普段暮らしている場所は「安全基地」でなければならない。そんなことも先生は教えてくれました。
安全基地から連れ出され、慣れないイヌや他のネコの鳴き声が聞こえる待合室で飼い主も緊張のなか、びくびくしながら待ち、呼ばれたら慣れない診察台の上で、先生と飼い主が神妙な表情で話をしていたら、誰でも逃げたくなっちゃいますよね。「ここはよくないことが起こる場所」とインプットされます。
「グリーフ」=「飼い主のペットロス」のように考えがちですが、山から人のお家に生きる場所が変わるのは、山の暮らしの喪失であり、通院も安全基地から病院に行くのは短い時間であっても安全基地の喪失であり、これらの喪失がネコの視線からはグリーフなのだと知りました。くまおが不安や緊張を高めていたのはグリーフだったんだと……。
まず安全基地から出て、緊張する場所に行くこと自体が、どうぶつにとってグリーフとなることを理解して、好きな飼い主の匂いがついたものや、いつもお気に入りに入りのブランケットなど、安心できる匂いのものを一緒にキャリーに入れたり、どうぶつを包んであげたりというケアをするだけでも安心感が違うそうです。
それを聞いてから、まずはいつも私の感情はくまおにバレていることを認識して、自分自身が病院に行くときに緊張しない努力をし、行く途中も鼻歌など歌いながらリラックスし(怪しい)、くまおの名前を優しく呼びかけるようにしています。
名前を呼ぶのも安心させることに
名前は飼い主がどうぶつにつけた贈り物。飼い主が呼ぶ名前は、正式名称ではなく、呼び名であったり、時には全然違う名前で呼んでいたり……その普段の呼び名が大事だそうです。
我が家の場合、くまおは「くま~」「くまくま」こぐまは「こぐ~」と呼んだりしています。
聞き慣れた名前を優しく呼んで、病院の先生たちにも、呼び名で呼んでもらいどうぶつたちに安心してもらうのも方法のひとつかもしれませんね。
我が家はくまおのことをよく理解してくださるかかりつけの先生に出会い、病院は「ただ怖い場所」から「体が辛いときに行くと楽になれる場所」とくまお自身が気付いてくれたようです。
家にどうぶつを迎えるのは、飼うのではなく、「命」を預かり責任を持つということ。どうぶつにとってその家が安全基地になるように、そして、そこから出る時は少しでもストレスを軽減できる工夫を、病院や飼い主の間でも情報共有できるとよいですね。
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