どんな猫でも人と暮らせる 全身タイツ猫「カッパちゃん」の教え
全身タイツをまとったような白黒バイカラーの毛柄が特徴的な人気者「カッパちゃん」。ノラ猫から地域猫へ、そして飼い猫になってからも警戒心丸出しだった猫が、保護から3年経ち大きな変化が見られてきたという。前回の取材から1年と少し経った今、再び会いに行った。
カッパちゃんは、地域猫・保護猫活動をおこなう団体「NPO法人ねりまねこ」の亀山知弘・嘉代夫妻のもとで暮らす。亀山さんのシェルター兼自宅を訪問すると、カッパちゃんは、陽当たりのよいダイニングでくつろいでいた。目が合うと、「誰!?」と言いたげな表情を見せるものの、逃げずにこちらの様子を窺っていた。
「取材や保護猫たちの面会で来客があるので、人に見られるのに慣れてきました」と、亀山嘉代さん。
以前、訪問したときは、まだ飼い猫1年目。人慣れしていない猫や保護したばかりの猫専用の部屋で生活していた。当時は亀山さん夫妻に心を開いてきた頃で、体を強張らせながらも私にも軽く体を触らせてくれた。飼い主以外との初めてのスキンシップだったという。
その後、飼い猫2年目には、階段や踊り場まで出て来られるように。そして3年目。ついにほかの飼い猫たちと生活を共にできるようになった。
優しい人間の存在を教える
飼い猫らしい穏やかな暮らしを手に入れたカッパちゃん。大きな前進の裏には、夫妻の徹底した関わり方があった。
「 “配膳係”の夫が、食事の前のスキンシップを習慣にしました。保護当時は衰弱していて強制給餌だったので触り放題でしたが、元気になってきたらシャー! 噛む! 猫パンチ! それでもかまわず触っていました。『怖くないぞ〜』と、怯まず素手でいく。次第に、カッパちゃんも自分から無防備にお腹を見せてくれるようになったんです」
触れ合い、愛情を伝える時間をもつ。接する「長さ」や「頻度」よりも、接し方の「密度」を大切にした。そのままを受け入れて、深い、広い愛を認識してもらう。
「外の暮らしが長い猫は多くが人から疎まれた経験があるから、優しい人間の存在を“学習”させないといけない。人でも親がどんと構えていれば、子供も落ち着いてきますよね。猫も同じなのかなと思いました。飼い主が怯まなければ、猫にも通じるんじゃないかって」
「平和な暮らしを」
カッパちゃんは、ブログでたくさんのファンに見守られる人気猫。亀山さんは、だからこそ人に慣れてほしいという想いもあったそうだ。
「警戒心が強いノラ猫がハッピーになるロールモデルになってくれたら、と。『ノラ猫』も、『地域猫』も、『飼い猫』も、分類上はどれも同じイエネコ。カッパちゃんはそのすべてを経験しました。今、奄美大島などで課題となっている野生化した猫『ノネコ』だって同じ生き物。環境によって呼び分けているだけです」
どんな猫だって、関わり方を深めれば、人と暮らせる素質をもっている。カッパちゃんがその実感を持たせてくれたのだという。
「外での暮らしが長かったカッパちゃんには、これからも『あるがまま』を与えてあげたいです。快適に暮らせるための医療ケアはするし、もちろん長生きしてくれたら嬉しい。だけど、殊更な幸せなじゃなくていい。目指すのは、のんびりできる時間と、平和な暮らしです」
亀山さんが、そっとカッパちゃんの体に手を添えて自分の膝にやさしく誘導する。カッパちゃんは、身を委ねて甘えていた。平和を象徴するような、穏やかな表情を浮かべながら。
(本木文恵)
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◆全身タイツ? ブログで大人気のカッパちゃんは元地域猫
- NPO法人ねりまねこ
- 練馬区と協働の地域猫活動に加え、登録ボランティアのアドバイザーとして後進の育成、ネットや講演活動による地域猫活動の普及・啓発、保護・譲渡活動などを行っている。
公式HP:https://nerimaneko.jimdo.com
ブログ:『ねりまねこ・地域猫』https://ameblo.jp/nerimaneko/
Instagram: @nerimaneko
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