野良の子猫、保健所に届けられる寸前に保護 譲渡先で甘えん坊に

毛並みの美しい「空」
毛並みの美しい「空」

 家の敷地内で野良猫から子猫が産まれた。当初、家人は保健所に届けようとしたが、譲渡先を探すという人に託された。そのうち1匹は、新しい家で、甘えん坊な「お母さん子」になっていた。

(末尾に写真特集があります)

 2007年7月、ある住宅の敷地で、野良猫が4匹の子猫を産んだ。母猫は、その家で外飼いしていた犬のご飯を食べに来ることもあったという。家の人は子猫たちを保健所に連れて行くと言っていた。

 それを知った人が「譲渡先を探すから」と子猫たちを引き取った。母猫も捕獲しようとしたが、逃げて行ってしまったという。

 大阪府内に住む吉本さんは、先代の猫を亡くした後、やっぱり猫を飼いたいと思っていた。
「保護猫で心臓の病気で亡くなってしまったんです。また猫と暮らしたいと思い、息子と一緒にペットショップに行くこともありました。そんな時、知人から、子猫たちの譲渡先を探していると聞いて、4匹の子猫を家に連れてきてもらったんです」

 吉本さんは1匹ずつ抱いてみた。淡いグレーの毛並みの子猫を抱っこした瞬間、目と目が合い、「この子だ」と思ったという。その子猫を家に迎え、「空」と名付けた。

「緊張するわ」
「緊張するわ」

ショップの黒猫はあきらめて

 実は吉本さんは、その保護猫を迎える前にペットショップにも行っていた。売れ残って1万円に値下げされた黒猫がいて、その黒猫を飼おうと息子と相談していた。

「空も黒猫も、2匹とも飼えたら良かったのですが、母は先代の猫が亡くなったのが、よほどつらかったのか、新しい猫を迎えるのに反対していたんです。そんな状態で、1匹しか飼うことができませんでした」

 だが、最初こそ猫を飼うことに反対していた母が、空ちゃんを迎えて1週間も経たないうちに、ケージから出して愛おしそうになでていたという。

すっかり甘えん坊に

 空ちゃんは保健所送りを逃れ、産まれてすぐに保護主さんのもとで育った。そのため、はじめての家でも平気そうだった。テレビの隙間に隠れていたこともあるが、すぐに出てきて家になじんだという。

 だが、ある時、小さな事件がおきた。吉本さんが1週間ほど入院した時のことだ。病院に見舞いに来てくれた親戚が、帰りに家に立ち寄ると、空ちゃんは、吉本さんが“帰ってきた”と喜んだが、親戚だと分かって、がっかりしたようだったという。それ以来、引きこもってご飯も食べなくなってしまった。

 その後も昼間は押入れで休んでいることが多いが、吉本さんが仕事から帰って、「空ちゃん」と名前を呼ぶと、出迎えてくれる。12歳になった今も、吉本さんが大好きで、お風呂に入っていると、ドアの向こうでじっと待っているのだという。

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渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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