発見から2週間、やっと子猫を保護 支えはインスタの猫友だった

   自宅マンションの下で、子猫が鳴いているのに気づいた。女性は捕獲器を買って、自分で保護する決意をした。だが、警戒心の強い子猫はなかなか入らない。あきらめかけた時、支えてくれたのは、インスタグラムでつながった猫飼いの先輩だった。子猫を保護し自宅に迎えた後も、交流を続けている。

(末尾に写真特集があります)

「ここです。このあたりからミャアミャアと高い声がしたんです」

 東京都板橋区内の自宅マンション。和香子さんがエントランス付近の植え込みに案内してくれた。和香子さんは40代で、介護の仕事をしている普通の主婦。この場所で今年8月、自ら捕獲器を使って、キジトラの子猫(メス、推定5カ月)を捕獲したのだ。

今はすっかり部屋にも慣れました
今はすっかり部屋にも慣れました

「最初に鳴き声を聞いたのが8月の初め。母猫もきょうだいの姿もなく、1匹でいるようでした。目の前が道路なので危ないし、暑さも心配だったので、『小さい猫がいるみたい、保護できればしたい』と夫に話していたんです」

   和香子さんは猫好きだが、夫にアレルギーがあるため、自宅で猫を飼ってはいなかった。実家で飼っている猫に会いに行ったり、保護猫カフェに足を運んだりしながら、いつかチャンスがあれば……と思っていたという。

   植え込みの猫を捕獲するため、まず、ウェットフードやおやつをプラスチック容器にいれて近くに置いた。家事の間や仕事帰りに見に行くと、何度目かに食べた形跡があった。

「でも警戒心が強くて、なかなか姿を見せないんです。マンションの方も網で捕獲しようとしたけど難しいと仰っていました。それで私は、えさやりを続けて馴れさせながら、インターネットで小動物用の捕獲器を買いました。夫は『本気だな』と思ったみたいですが、反対はしませんでした」

   捕獲器にマンションの部屋番号を書いて、夜中に植え込みに仕掛けた。捕獲できた場合に備え、実家からケージを取り寄せた。だが、思うようにはいかなかった。

捕獲器を仕掛けて4日めに捕獲に成功した(提供写真)
捕獲器を仕掛けて4日めに捕獲に成功した(提供写真)

憧れの猫友に励まされ

 猫は“捕獲器の中のえさ”に手を付けないのだ。和香子さんは心が折れかけて、猫に気づいてから10日目、インスタグラムで初めて弱音を吐いた。

〈あれこれ手を尽くしていましたが、結局保護できず…もう諦めモードです〉

 すると、以前からインスタグラムで「おかあしゃん」と呼んでフォローしていた「ゆうさん」から、こんなコメントが続けて届いた。

〈なかなか保護は難しいんですね、でも、もう少し頑張ってみましょうよ〉

〈ニャンコさんは警戒心強いですよね…和香ちゃんもお忙しいから大変だとおもいますけど、もう少しだけ頑張ってみてね〉

   和香子さんは昨年からインスタグラムを始め、ゆうさんが飼うかわいい三毛猫「いろは」のファンになり、フォローしてコメントを送るようになった。年上のゆうさんは親身に返事をくれる憧れの存在。ペット以外にも仕事のことを相談をするなど、信頼を寄せていたため、「頑張って」という言葉が大きな支えになったようだ。

   そして、最初に鳴き声を聞いてから2週間、捕獲器を仕掛けて4日目、ついに子猫が捕獲器に入った。

「夜中12時過ぎにえさを仕掛けて3時過ぎに見に行くと、ガチャガチャ音がしていて。インスタで報告すると、いろんな方が喜んでくれました。おかあしゃんも“ああ~保護できてよかったです、おつかれさま”とコメントをしてくれて。嬉しかったですね」

保護当初、ケージでも耳を倒してシャーシャーいっていた (提供写真)
保護当初、ケージでも耳を倒してシャーシャーいっていた (提供写真)

膝に乗られ、夫も骨抜き

 小さな子猫を捕獲器ごと家に連れて帰り、「捕まえた!」と夫を起こした。子猫はシャーシャーといって威嚇した。手袋をして夫婦ふたりがかりでケージに移した。動物病院に連れて行くと、推定生後2カ月。ノミはいなかったが、お腹に虫がいた。駆虫薬をもらって帰り、馴れるまでケージで様子を見ることにした。

 夫もかわいい子猫に目を細め、「真夏だから『まなつ』は?」と名前を考えてくれたのだという。出会ったのも、何かの縁。“寝室にいれない”などアレルギー対策をしながら、家で飼うことにした。といっても野生味が強く、一筋縄ではいかない。

   家に迎え入れて2日間は、そばにいると何も口にせず、3日目になって、ようやく人前で食事をするようになった。5日たつとケージから前脚を出したが、表情は険しいまま。ケージから出すようになっても、体には触らせなかったという。

 抱っこなんて夢のまた夢…。そう思っていたのだが、9月に入ってから、大きな変化が起きた。

   夫婦で旅行にいくため、動物病院に「まなつ」を預け、約1週間後に迎えに行った夜のこと。和香子さんがお風呂から出ると、「え?」と驚く光景を目にした。

和香子さんの夫の膝に乗り、じっと見上げるまなつ。「ふふ、いちころね」
和香子さんの夫の膝に乗り、じっと見上げるまなつ。「ふふ、いちころね」

「『見て、見て~!』と夫に言われて、何かと思ったら、『まなつ』が夫の膝にちょこんと乗っていたんです。私のほうが長い時間一緒にいて世話もしてきたのに、先を越された(笑)。夫はその一件で骨抜きになりました」

「まなつ」の“夫の膝デビュー”をインスタに載せると、ゆうさんがコメントをくれた。

〈まなつちゃん、パパっ子になりそうですね~。和香ちゃん、負けてられないですよ~〉

 それからほどなくして、「まなつ」は和香子さんにもすっかり心を許したそうだ。取材の際は、 “ママ大好き~”というように柔らかな表情で何度も膝に乗っていた。

「よくぞここまで馴染んでくれました。空気清浄機も用意して、夫と『まなつ』とみんなで仲良く暮らしていきたいですね。これからもインスタで成長ぶりを報告していきます」

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藤村かおり
ペットライター。小説等の創作活動を経て90年代後半から、ペットの取材を手掛ける。2011年~2017年週刊朝日記者、2017年からsippoメインライター。丹念な取材と独自の目線から、動物と人の絆、動物と共に生きる人の心をすくい取る記事に定評がある。ペット関連の著書に『長寿猫』『明日にアクセス』など。現在は保護した黒猫、キジ猫と暮らす。

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