ペットロス、飼い主の思いに寄り添うサービス 人間同様の葬儀も
犬や猫などを亡くして深い悲しみに襲われる「ペットロス」。飼い主のそんな思いに寄り添って人間同様に弔ったり、ありし日を語り合ったりするサービスが広がる。ペットも高齢化していて、飼い主が健康管理などにお金をかけるようになってきた。
ペット葬 祭壇を前に住職がお経
生花が飾られた祭壇を前に、住職がお経を唱える。「遺族」が見つめる先にあるのは、籐(とう)でできた小さめのひつぎ。犬の亡きがらが納められていて、式のあとに火葬される。
大阪市の川田初美さん(56)は今春、生まれて14年になるメスのトイプードル犬「らんちゃん」を心不全で亡くした。一般的な葬儀と同じように弔った。
家族同然だった。飲食店を切り盛りし、父の介護で神戸市の実家を往復する日々。深夜に疲れて帰るといつも元気づけてくれた。葬儀の間は涙が止まらなかったが、「住職から『あなたが泣いているとペットも悲しみますよ』と声をかけられ、区切りがついた」。
川田さんは、ユニクエスト(大阪市)が4月に始めたペット葬を使った。犬や猫、ハムスター、ウサギ、鳥にも対応し、一般的な相場より高めの5万円(税抜き)からメニューがある。
儀式にこだわり 高価格化も
近年は単なる火葬ではなく、飼い主が儀式にもこだわるようになった。「ペットセレモニー ウェイビー」(神奈川県平塚市)はペット葬「あしあとプラン」を20万円(税抜き)で提供するなど、高価格化も進む。遺族の自宅に花を敷き詰めた祭壇を設け、亡きがらは桐箱(きりばこ)のひつぎに入れる。骨壺(こつつぼ)は大理石や九谷焼製で、東京都内の富裕層を中心に人気だ。井上充社長(39)は「人間並みの品質で、オンリーワンの葬儀をめざしている」と話す。
霊園・墓石のヤシロ(大阪府箕面市)は「ペットと一緒に眠れるお墓」を扱う。墓石の代わりに樹木を飾るタイプ(税込み150万円から)が売れ筋で、ペットと入れる墓を選ぶケースが目立つという。墓に飾るプレートにペットへの思いを込めた言葉やイラストを記すこともできる。
東京・原宿には「ペットロスカフェ」がお目見えした。ペット用仏具を製造・販売するインラビングメモリー(東京都渋谷区)が直営店に設けたもので、来店客がペットとの思い出を語り始めることから「ゆっくり話せるように」と企画。店員もペットを亡くした経験があり、聞き役にもなる。
来店客の8割が女性で、北海道や沖縄の遠方から来る人もいるという。店長の関口真季子さん(34)は「寂しさが癒えないお客さんも多い。飼い主の心を少しでも元気づけることができたら」と話す。
高齢化するペットを支援 老犬ホーム、健康診断も
ペットフード協会によると、犬の年齢で「高齢期」とされる7歳以上の割合は2018年が55.7%で、10年に比べ7.9ポイント増。猫も7歳以上は47.3%で、同年比5.3ポイント増えた。平均寿命もそれぞれ延びていて、高齢化するペットを支援するサービスも相次ぐ。
京都府京丹波町にあるのは「老犬ホーム あん」。飼い主から預かった約80匹の犬が入所し、多くが認知症や糖尿病を患う老犬だ。「充実した余生を過ごさせてあげたい」と福島耕太郎代表(49)。月2万7千円(税抜き)からで、スタッフが24時間態勢で見守り、獣医師とも連携する。
京都市の右京動物病院ヘルスケアセンターは、10種類の検査をする健康診断「プレミアムコース」を用意する。大型設備を使って人間と同じように半日かけて検査。費用は9万5千円(同)で、病気の早期発見につながるケースもあるという。平野隆爾(りゅうじ)院長(33)は「『病気のペットの姿をみるのはつらい』と言って来る方が目立つ」と話す。
ペットの健康のため お金をかける傾向も
ペットの健康のために、お金をかける傾向もうかがえる。「SBIいきいき少額短期保険」は昨年、犬などペットの申し込み年齢の上限を「7歳11カ月」から「11歳11カ月」へと引き上げたところ、新規契約数が改定前の2.5倍に増えた。ペット保険大手のアニコム損害保険が、ペットのために支出する金額を契約者にたずねた18年調査では、犬は前年比7.7%増の年48万円、猫は10.5%増の年23万円で過去最高だったという。
ペット業界に詳しい三菱UFJリサーチ&コンサルティングの大久保亮一氏は「少子化や単身世帯の増加でペットへの愛情が深まりやすい生活環境になった。高額なサービスも受け入れられやすい」とみている。
(神山純一)
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