「しゃもしゃも欲」に冷や汗 元野良猫「梵天丸」を立たせる日々

幼かった顔がすっかり大人びてきたころ。涼しい顔して、いろいろやらかすんです!
幼かった顔がすっかり大人びてきたころ。涼しい顔して、いろいろやらかすんです!

 さて、無事に歯も生え変わった梵天丸ですが、元野良ならではのトラブルが勃発!冷や汗をかく事態となりました。

(末尾に写真特集があります)

知らぬ顔の梵天丸 欠けたビニール袋

 梵天丸と先住犬猫たちとの生活も軌道にのってきたころ。それは起こりました。

 夜、お風呂から上がって冷たいものでも飲もうと暗いキッチンへ行ったら…。あれ? 床に何か落ちています。見れば、ボロボロになったベーコンのパック! 料理に使って、ゴミ箱に捨てたはず。我が家はすべてのゴミ箱がフタつきのタイプなのに。

「なんでここに?どうしたのこれ?」

 明かりをつけて、ぐちゃぐちゃのパックを広げます。おもちゃにして破いただけなのか、それとも…?

 真空パックの形を復元してみると一部が欠けています。床じゅうはいまわって、かけらを拾いましたがどうしても足りません。さては食べたか? でも誰が?

 お察しのとおり。梵天丸でした。

仕事部屋のコピー機が大好き。猫のせいで何度紙詰まりを起こしたことか
仕事部屋のコピー機が大好き。猫のせいで何度紙詰まりを起こしたことか

 梵天丸が家族と合流してから、まず起きたこと。それはスーパーの袋の取っ手がなくなることでした。

 ビニールというビニールに反応して、引っ張り出す、食い破る。お腹を空かせてさまよっていたころの記憶が抜けないのでしょうか。「しゃもしゃも」とビニールを食べようとするのを、何度あわててやめさせたことか。

 それもあっという間にやるのです。買い物から帰って、ちょっと買い物袋を床に置いただけで、もう取っ手がない。いつしか、買ったものはすぐに片づけるのが習慣になっていました。

 まさか、フタつきのゴミ箱に捨てたものまで引っ張り出すなんて。にわかには信じられませんでした。フタもそれほど軽くはありません。今まで、ゴミ箱まで荒らされたことはなかったのに…。

 本猫は知らん顔をして顔を洗っています。ほかの猫たちはとっくに2階の寝室へ行って、ご相伴にあずかった子はいないようですが…。

「梵ちゃんを立ててください」って?

 案の定、翌朝から様子が変です。食欲もないし元気がない。やばい! 病院に直行です。

 ビニール袋はレントゲンに映らないので、造影剤を入れて撮影。やっぱり多少飲み込んでいるようでした。

「なんとか吐き出せるようにやってみましょう。まだ胃にあるのが幸いです」

 最悪の場合、開腹手術になるといわれ、飼い主の私も意気消沈です。

 結果、嘔吐を促進する薬を使って、なんとか吐き出させました。シュリンクパックの分厚いビニール。かみちぎったとはいえ、ゴツゴツしています。それを胃から口まで逆流させたのですから、胃壁や食道に傷がつきました。

 薬のせいで気持ち悪さが続いているのか、家に戻っても薄い血混じりの、水のようなゲロを吐くばかり。

 先生の指示で自宅療養が始まりました。

 まず食事の前には粘液保護剤を飲ませます。食事も普段のものはダメ。処方されたウェットフードをお湯で溶いて流動食を作ります。そして食事が終わったら、猫用ミルクを水で薄めて飲ませること。

「食道に食べ物が張り付いたままにならないように、ミルクですすぐんです。本格的な食道炎に発展してしまうと困りますから」

「あ。それからね。梵ちゃんをできるだけ、立ててください」

 は?

「食後に限らず、事あるごとに梵ちゃんを立たせるんです」謎の指令を受けて帰宅しました。

旦那 「猫を立ててくださいって…ヨイショしろってことか?」

私  「殴るわよ」

 冗談抜きに、梵天丸を立てる日々が始まりました。

「梵ちゃんを立ててください」の再現写真。当時はもうちょっと小さかったかな…?
「梵ちゃんを立ててください」の再現写真。当時はもうちょっと小さかったかな…?

 なぜ梵を立てるのか。

 自分で四つんばいになってみるとわかります。食道が地面に水平になりますよね。四つ足動物はそれだけ、食べ物がこびりついたり胃酸が逆流したりしやすいのです。食道が垂直な人間よりも、食道炎の治りが遅いということ。そのために「ことあるごとに立てなさい」という指示だったのでした。

 幸い、1日、2日で嘔吐も収まり、食欲も戻ってきました。とはいえ内部についた傷がすぐ治るはずもないので、梵天丸を見かけるたびに立たせる日々。ただただ本猫は困惑顔でされるがままになっていました。

 さて、これは今から10年以上前の話。今の梵天丸は目の前にビニールがあろうと見向きもしません。それはビニールに代わるものをみつけたから。

 なんと、野菜です。

 飢えていたころの習性もあったようですが、それ以上にビニールの触感が大好きだったようです。キャベツや白菜、レタス、ホウレン草、小松菜…とにかく葉物野菜を買ってくると突進してきます。いざ与えてみると、そんなにたくさん食べるわけでもないんですけどね(もちろん、ネギ類、アボカド、アスパラガスは厳禁です)。

 差しさわりのない範囲で、料理の途中で少しだけご相伴。それでどうやら「しゃもしゃも」欲は満たされるみたいです。なにしろ他に野菜なんぞ欲しがるライバル猫もいないので「自分だけ」なのがうれしいのかもしれません(笑)

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浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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猫と暮らし始めて、気が付けば40年! 保護猫ばかり6匹と暮らすライターの、まさに「カオス」な日々。猫たちとの思い出などをご紹介します!
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