野良の子猫、梵天丸がわが家に 猫用ミルク勢いよく飲み干す
ガリガリに痩せて、右目がつぶれかけて、鼻には膿が詰まった状態で。でっかく「珍味」と書かれた段ボール箱に入って、ヤツは三重県から我が家にやってきました。現在12歳になる梵天丸が、我が家にやって来たころのお話です。
深夜にミルク調達
帰宅したのは日付が変わるころ。長旅の疲れで人間ふたりはクタクタ。ですが、このボロボロの新米猫をどうにかしなきゃなりません。
「お腹減ってるはずだよね」。「このぐらいの子猫って、何をあげたらいいんだろう?」
その時点で、猫4匹犬1匹の多頭飼育。中学時代から猫と暮らして来て、そこそこ経験はあるつもりだったけど、手のひらサイズの子猫を育てるのは初めてです。
「とりあえず、ペット用ミルクだ!」
夫は24時間空いているドン・キホーテへと車を走らせ、ペット用ミルクと哺乳瓶、缶詰の離乳食を買ってきました。鼻づまりで干物のにおいすら嗅ぎ取れなかった子が、果たして食べてくれるのか。
何を興奮してるんだか、ぎゃんぎゃん騒ぐ子猫をむんずとつかみ、人肌にあたためたミルクを入れた哺乳瓶を口元へ。
「みーっ! みーーーーっっ!」
ダメだ。哺乳瓶を押しのけて、じたばたと大騒ぎ。我が家の猫たちは遠巻きに「何が来たの…」と眺めるばかり。犬(黒柴系雑種のネネちゃん)だけが、ハッハッと笑顔でしっぽを振って、「なにこれ? 誰この子?」と寄ってきます。
「えーい、うるさい。いいから飲みなさい!」。みーっ! と大声を出したタイミングで、口の中にちゅっ、とミルクを押し出してみました。すると……
「みぃぃぃーーーーーーっ!」
びっくりした。ものすごい声。何事かと思ったわよ。両前足で哺乳瓶をガシッとつかみ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ……
すごい勢いです。最後はじゅーっ、じゅーっ、と音を立てて最後の一滴まで飲み干したかと思うと、空っぽの哺乳瓶を今度は突き放し、「んなーっ」
あ。鳴き方変わった。
「げふっ(げっぷの音です)」
何なのよ、もう。「もっとよこせってよ」。「じゃあ、缶詰与えてみる?」。ドロドロの離乳食は、今で言うなら「ちゅーる」にも似た香り。その気配に、今度は先住猫たちが色めき立つ。
「こら、あんたたちはいいの!」
指先にドロドロをすくってはなめさせ、すくってはなめさせ。寒いといけないからパスタソースの空き瓶に熱湯を入れてタオルで何重にもくるんで湯たんぽを作ります。ようやくお腹がぽんぽんになった子猫は、さっそく湯たんぽに「半のっかり」してうとうと。
「珍味」より大きい段ボールに入れて、猫たちが入れない部屋へ。ようやく落ち着いたのは深夜3時。明日は動物病院へ連れて行こう。
2か月は隔離してください
「あー。やっちゃいましたねえ」。かかりつけの獣医さんは私と子猫を見るなり、苦笑した。「拾っちゃったんですか。え? 三重県から?」
およその体重から、生後1か月ほどだろうと推測。ならばもう離乳も済んでますから、一般の子猫用のドライフードでいいですよ、と。
血液検査の結果、猫エイズ(FIV)と猫白血病(FeLV)はともに陰性。まずこの時点でほっとしました。先住猫たちは全員陰性でワクチン済みだから、この子が陽性だったらどうしよう……と思っていたのです。
「安心するのはまだ早いですよ」。先生の一言に思わず緊張が走ります。え? なんで……?「これらの病気は、感染してから陽性反応が出るのに1、2か月かかるんです。だから2か月後に、もう一度検査しましょう」
なるほど。
「だからそれまでは、できれば他の猫とは別の部屋で飼ってください」
ええええーっ? 12年前の私は、そんなことも知らなかったのです。
【前の回】橋の上にいたフラフラの子猫、魚にも気づけず 梵天丸との出会い
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