多頭飼いが条件の保護猫「チセ」、相棒の「ウヌ」迎え家族に

 引っ越しを機に動物のいる暮らしを叶えたいと、ペット探しを始めた勝也さん(40歳)・祥子さん(39歳)夫妻(東京都在住)。当初は、祥子さんが飼ったことのある「犬」を希望していました。ただ、共働きのライフスタイルを考えた結果、夫妻は初めてとなる「猫」との暮らしを選択するのです。祥子さんの知り合いは、東京都文京区にある保護猫カフェ「ネコリパブリック東京お茶の水店」(以下、ネコリパ)を運営していて、そこに2人で足を運んだのが今回紹介するチセ&ウヌとの出会いのきっかけとなります。

 ネコリパでは、20匹以上の譲渡募集中の猫たちに迎えられ、その数に圧倒されました。どの子も可愛くて個性的です。「やはり見た目で?」との質問に、「チセに一目惚れしたんです。おやつをあげる機会があったのですが、他の猫に譲ってなかなかこちらに来ない。仕方なく口元に数粒持っていくと、1粒食べてはポトリと落とす。不器用でよそよそしく控えめな性格と、ちょっと短めの足も何とも愛おしくなりました」。夫妻は、キジトラの「チセ」(3歳・女の子)の譲渡希望をスタッフに伝えました。

チセの定位置。安心スポットにゃのだ。
チセの定位置。安心スポットにゃのだ。

 譲渡の面談に進むと、想定外の条件に今まで猫と暮らしたことがない勝也さんと祥子さん夫妻はびっくり! 多頭生活が長く寂しがり屋のチセは、保護主さんの強い意向で、2匹以上の多頭飼いが必須とのこと。「え? いきなり2匹!?」。

 戸惑った2人は数週間話し合います。「やっぱりチセのことは諦めきれない」。この決断により、チセの相棒探しが始まりました。しかし、チセとも夫妻とも相性の良い猫はなかなか見つかりません。ネコリパに何度も通い、スタッフとも相談を重ねました。このまま相棒は見つからないのではと心配するようになった頃、同じくキジトラで丸顔の女の子「ウヌ」(1歳)がネコリパにやって来たのです。人をじっくり観察しながら、穏やかにケージの中で佇むウヌをもう1匹の候補として申し込みを決めた時、チセとの出会いから4ヶ月が経過していました。さあ! いよいよトライアル開始です。「猫じゃらしで遊んでくれるかな」「一緒の布団で寝られるかな」。想像を膨らませて待っていた夫妻の期待は、初日からことごとく打ち崩されるのでした。

ウヌは来客が苦手? (テクニック1)
ウヌは来客が苦手? (テクニック1)

 ネコリパから夫妻の家に到着した2匹は、新しい環境に慣れるためにまずは1室(書斎)で生活してもらう段取りでした。しかし、ビビリな2匹はケージから出た瞬間にピューッと逃げ出して、チセはテレビの裏に、ウヌは本棚の本の裏に隠れてしまったのです。ネコリパでリラックスして遊んでいたようなチセとウヌの姿を期待していたのですが……。そう簡単にはいきませんよね。2匹はともに元野良猫でいろんな保護先、場所を変えて、その都度「この先どうにゃるのか?」と怯えていた過去があるのですから。

 夫妻は書斎に、遠隔でも動画を見られるペット用の見守りカメラを設置していました。同じ家にいながらの愛猫の見守りが始まります。2日目にようやく引きこもり場所からこっそり出てきた2匹の様子をカメラ越しに見て歓喜し、3日目には「ちゅ〜る」(いなば)で誘うと姿を見せるまでに。4日目には祥子さんが部屋に入っても逃げなくなったなど、手帳には「初めて記念」がぎっしり。2週間後には書斎のドアを開け、寝室や2Fのリビングも行き来できるようにと猫が暮らす空間を徐々に広げていきました。今、リビングルームでカメラを構える私の目の前にチセが座っています。ここに来るまでに勇気がいったね。優しい飼い主さんで良かったね、と涙でピントが合いません。

ウヌさん、日向ぼっこかい? (テクニック2)
ウヌさん、日向ぼっこかい? (テクニック2)

 新しい飼い主になってから、劣悪な環境にいた野良時代の2匹の写真を見る機会があった勝也さんと祥子さんは、「改めてチセとウヌの2匹で良かった、ずっと一緒にいようと思った」と話します。猫との暮らしを始めて約3ヶ月。2匹同時に飼うことを躊躇していた夫妻は「いい出会いがあればもう1匹迎え入れたい」と願うまでに。一日一日の猫の変化を夫妻で楽しみ、2匹にとっても穏やかで気ままな暮らしを続けられるように日々考えているそう。夫妻はまだまだ猫たちの距離を感じていると言っていますが、私には立派な家族に見えますよ。2匹の成長が私も楽しみです。

来客はちょっぴり怖いけど、オヤツの誘惑には勝てない猫たちであった。 <br />(テクニック3)
来客はちょっぴり怖いけど、オヤツの誘惑には勝てない猫たちであった。
(テクニック3)

チセとウヌのInstagram:@chise_unu

【撮影テクニックの説明】
テクニック1
ウヌと私の微妙な距離感、関係性を伝える写真。猫の撮影は上から下から、同じ目線で、いろんな角度から撮影するとバリエーションが増えてグッド!

テクニック2「前ボケ」
何もない背景でも手前にある緑の植物を入れ込むことによって全体が華やかに。

テクニック3
アップの写真は必須。懸命な様子を狙った。

ケニア・ドイ
写真家。人物、商品撮影を得意としながら、犬猫カメラマンとしても活躍。雑誌「ねこのきもち」「いぬのきもち」掲載多数。長寿猫をテーマにしたフェリシモ猫部「猫又トリップ」の連載は100回を超える。著書に「ぽちゃ猫ワンダー」「ご長寿猫がくれた、しあわせな日々」。現在、黒を背景にしたペット撮影会「ドイブラック」(Instagram:@doi_black)で全国行脚中。

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この連載について
ツンデレラたちの撮りセツ
美しい猫の写真で知られる写真家ケニア・ドイさんが保護猫たちを取材します。ストーリーに加え、猫写真の撮影テクニックも解説します。
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