犬の吠え問題 近所からの苦情にはきちんと対処

お隣さんにご褒美をもらうマロンくん
お隣さんにご褒美をもらうマロンくん

 犬の無駄吠えについて個々の状況での対策を立てる前に、まず多くの吠え問題に共通することからお話したいと思います。私は無駄吠えで相談に来られた飼い主さんには、まず近隣からの苦情があるかどうかを確認します。なぜなら吠え問題で相談に来られる方の多くはご自身がうるさくて耐えられないというより、近隣から苦情が出て早急に対策を取らなければならなくなったという方が多いのです。近隣からの苦情で何度も引っ越したという方もあり、近隣からの苦情がある場合は深刻な問題行動として対処する必要があります。

 近隣から苦情が出ている場合に、まずすべきことは迷惑をかけている人に謝罪することです。獣医師でもあり動物行動学者でもあるイアン・ダンバー博士は、「ただ単にいいワインを1本持って行くだけで隣人の聴力が急に悪くなり犬の吠え声が聞こえにくくなるという効果を生む」と言っています。高価なものでなくて良いので相手の方の好みのものを手土産に挨拶にいくと良いでしょう。

犬を飼ったら近所にあいさつ

 もっと良いのは苦情が出る前に対処することです。そうすればお互いに不快な思いをせずにすみます。吠え声で迷惑をかけているかも知れないと思ったら、早い段階で近所の方に挨拶に行き、「ご迷惑をおかけしてすみません」と声をかけておくことをお勧めします。

 またこのような問題の予防として犬を飼い始めたら近所にあいさつに行き、犬を飼い始めたことを伝え、子犬であれば近所の方に会ったら社会化を兼ねておやつを与えてもらうようにしましょう。犬は近所の方を見ると喜ぶようになり、良い関係を築くことができます。過剰に吠えないようにしつけることはできても、全く吠えないという犬はいません。多かれ少なかれ近所の人は犬の吠え声を聞くことになります。知らない犬であれば不快に聞こえる吠え声も自分を見て尻尾を振りながら駆け寄ってくれるかわいい犬の声であればあまり不快に感じないという効果を生むでしょう。

 もちろん、犬が苦手な人もいるので「ご迷惑をおかけしないようにしつけるつもりですので、どうぞよろしくお願いします」とお願いしておきましょう。

 吠えの問題は子犬期にはそれほど気にならなくても、性成熟期前後より目立つようになります。子犬の社会化は問題行動の予防であることを理解し、人や犬への社会化をしておきましょう。また玄関チャイムの音や来客に吠える問題も成長とともに出てくる問題です。吠え始める前にチャイムが鳴った時に好物を与えたり、来客におやつを与えてもらったりなどして、良い印象を与えておきましょう。

村田香織
獣医師、もみの木動物病院(神戸市)副院長。イン・クローバー代表取締役。日本動物病院協会(JAHA)の「こいぬこねこの教育アドバイザー養成講座」メイン講師でもある。「パピークラス」や「こねこ塾」などを主催、獣医学と動物行動学に基づいて人とペットが幸せに暮らすための知識を広めている。

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この連載について
ペットのこころクリニック
犬や猫の問題行動に詳しい獣医師の村田香織先生が、ペットと幸せに暮すためのしつけや飼い方のコツをていねいに解説します。
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