(どうぶつ弁護団提供)
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どうぶつ弁護団「小さくともできることを」 活動報告と、そこに見る動物虐待の実態

 動物たちを虐待から守るために、2022年に立ち上がった「NPO法人どうぶつ弁護団」(Animal Defense Team)。当連載では、どうぶつ弁護団に所属する弁護士・獣医師メンバーからの便りを紹介します。

 今月の連載は、どうぶつ弁護団事務局より、設立から現在までの活動報告を通して、動物虐待の実態や、一人ひとりができることについて考えます。

我々にしかできないことは何なのか

 2022年9月の設立より、あっという間に2年と4か月が経過しました。この間、当法人としてどのような活動をしてきたのか、そしてメンバーが何を感じているのか、外からはなかなか見えにくいであろうことを、この場をお借りして皆さまにお伝えしたいと思います。

 まず、設立当初は15名だったメンバーは、2025年1月現在、6名増えて21名となりました。ご存知の通り当法人は、動物虐待をなくしていくために専門家の立場からできるアクションに取り組む団体で、弁護士、獣医師が多く在籍します。新たに仲間に加わったのも、長く地域と動物に関する問題解決に取り組んできた行政獣医師や、昔から動物虐待の問題に法律家として切り込んでいきたいと考えていた弁護士などです。

 さまざまな立場から動物虐待をなくす活動に向き合うことができると思いますが、当法人としては「我々にしかできないことは何なのか」、を常に考え、専門家が集まってこそ可能な解決策を見出していきたいと考えています。

勇気づけられる賛助会員の存在

 また、活動をスタートさせてからはその資金源を確保するための助成金申請などをしながらも、同じ想いを持つ人々に広く応援してもらえる方法として、賛助会員の募集も始めました。当初ゼロだった賛助会員数は、2025年1月現在、221名(!)となりました。こんなに多くの方がご支援くださっている事実に、メンバー一同いつも背中を押される気持ちで、もっともっと活動を広げ、深めていきたいと勇気づけられています。

 引き続き、賛助会員さんも大募集しています

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 ご入会いただくと、定期開催中の「賛助会員限定オンラインセミナー」や、ざっくばらんに会員さん達とお話する「zoom座談会」などにご参加いただくことができたり、活動の告知・報告等のメール配信を受けたりすることができようにしています。

 目指すは、全国各地にどうぶつ弁護団のメンバーがいて、賛助会員さんもいて、どの地域で事件が起こってしまっても、その場で迅速に対応できる組織となることです。

告発事案、処分等の求めの推移

 では実際、この間どのような活動をしてきたのかを数字でご報告してみたいと思います。

 これらの数字を見て、案外少ないね、と思われるかもしれません。しかし、動物虐待という罪を犯した者を裁くための刑事手続は、冤罪回避や、確実に裁かれるための適格な証拠集めなどを、とにかく慎重に、そして水面下で進めなければいけないという性質があります。

 皆様から多くの情報提供を受ける中で、「これは対応できる事案だ」と迅速に告発手続きに移行したとしても、その一連の活動は内密に進めなければならず、万一被疑者本人に知れると、求めるべき結果が得られなくなってしまうのはお分かりいただけると思います。

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 先に紹介した「処分等の求め」とは、行政手続法に基づいて、法令(例えば、ペット業者に対し飼育頭数の上限やケージの広さなどを規定した「数値規制」等)に違反する事実の是正のために、行政機関に対して処分や行政指導を求めることです。

動物虐待情報提供の推移と、その内容から見る動物虐待の実態

 次にその法的アクションのベースとなる作業についてご説明します。

 どうぶつ弁護団ホームページへ設置したフォームへは、一般の皆様より日々数多くの動物虐待情報をお寄せいただきます。1件1件に対してメンバー内で事案検討をしていくのですが、告発やその他法的アクションにつなげられる情報というのはやはりそう多くはありません。

 なぜなら、「そこに法律の条文に根拠を置ける犯罪事実があるかどうか」が前提となるからです。

 皆様が「動物虐待では?」と感じ、心を痛め、何とかしてあげたいと思われるお気持ちや、その先で苦しんでいるかもしれない動物がいることに、メンバーも同じように、「ひどい、けしからんケースだ」「情報不足だがそれでも、何とかできる道はないのか……」と歯がゆい気持ちになることが事案検討の場の常でもあります。

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 虐待情報提供内容種別の528件の情報提供内容を見ると、群を抜いて「SNS情報提供」、「近隣の飼育動物のネグレクト」、が多いことが分かります。(2番目に多い項目は、一昨年の上げ馬神事の影響が大きく表れています)

 少しだけ詳細をお伝えしますと、全体の3割以上を占めるYouTubeやX、TikTokなどSNS上の動物虐待コンテンツに関する情報提供についてですが、具体的には、(書くのもつらいですが)「ハムスターをトイレに流す」「アライグマを撲殺する」「野良猫を捕獲し解体して食べる」など、あまりにも非道な行為ばかりです。

 想像ですがおそらく、掲載者本人の承認欲求などのために動物が犠牲になってしまうという許しがたい構図がそこにできてしまっています。そしてこれらの動画は瞬く間に拡散され、それがまた掲載者の思うつぼになってしまうという側面もあります。

 これらのSNS投稿に関して、情報提供者から寄せられる文面からもとても強いお気持ちが伝わってきますし、もちろん社会的にも放置できない問題だと改めて痛感し、今後の活動につなげたいと考えます。

 また、最近よく見られるのが「ネグレクト」の情報提供です。特に猛暑が続く時期には外飼い、つなぎ飼いの犬の飼育環境を指摘する内容が多く、また、規模の大小にかかわらず動物保護に関わる団体、個人、またはペット関連業者の飼育環境を指摘する情報提供も増加しています。

 近年の動物との暮らし方に対する世間一般の意識向上が、多くの情報提供へつながっているものと思われます。ここだけ見るとよい変化だと感じますが、ではこれを受けて具体的に、法的な対処ができないのであれば何ができるのか、を考え行動していくのが私たちどうぶつ弁護団の使命だとも考えています。

 sippoをご覧の皆様はきっと、日頃より動物たちのことを大切に考え、接してこられている方々だと思いますが、少し目線を広げると、つらい、痛い、悲しい、寂しい思いをし続ける動物たちが数え切れないほど存在するのがこの日本の現状です。

 でも、「ハチドリのひとしずく」のお話のように、小さくてもそれぞれができることをしていくことが動物たちを取り巻く社会環境を変えていくことになると信じています。

 どうぶつ弁護団も、これからも我々にできることをしていきます。

(次回は2月26日公開予定です)

【前の回】「懸命に鳴き続けた子猫の命を未来へ」 動物遺棄・虐待に遭遇した際のチラシを制作

NPO法人どうぶつ弁護団
2022年に設立した、理事長の細川敦史弁護士を筆頭に弁護士と獣医師で構成された、動物虐待事件について捜査機関に対する刑事告発などを行うNPO法人(英語表記:Animal Defense Team)。警察へ被害届を提出することも、動物病院へ行くこともできない声なき動物を護るため、専門家と連携して動物目線で動物の声を伝え、人と動物が共生する優しい社会の実現を目指している。https://animal-dt.org/

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この連載について
どうぶつ弁護団からの便り
どうぶつ弁護団
動物たちを虐待から守るために、2022年に立ち上がったどうぶつ弁護団(Animal Defense Team)は、動物を愛する弁護士たちが中心となって活動しています。当連載では、動物虐待に関する情報や、どうぶつ弁護団への思い、ときにはかかわった事件の話など、どうぶつ弁護団に所属する20名以上の弁護士・獣医師メンバーからの便りを紹介します。
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