保護した猫の譲り先が決まらない… 悩みながら世話を続ける女性
最近は個人で野良猫の保護から譲渡までする人が増えている。保護した猫をケアし、ポスターやネットで紹介したり、譲渡会に参加したりして、引き取り手を探す。だが中には、なかなか“縁”をつかめない場合もある。3年近く、猫の譲渡先を探し続けている女性に話を聞いた。
東京都の城南地区。マンションを訪ねると、10畳ほどの明るい居間で、2匹の白い猫がくつろいでいた。
「この子たちがナナとココ、姉妹なんですよ」
猫の“同居人”のゆうさんが、優しい口調で説明してくれる。鼻の下に小さなひげ模様があるのがナナ。ナナより一回り体が大きく、鼻に黒い逆ハートのような模様があるのがココ。どちらも目がくるっとしていて、愛嬌たっぷりだ。
壁際にはおそろいのケージが2つ並び、中に置いたトイレはとてもきれい。床にはフリースや綿など様々な素材の猫用ベッドが置いてあり、2匹が大切にされていることがわかる。
「ナナは少し恥ずかしがり屋で、ココはわりと好奇心旺盛。2匹とも甘えん坊だけど、健康だし、手もそうかかりません。でもこの秋で、もう3歳なんですよね」
ふつうなら健やかな成長は嬉しいはずだが、ゆうさんは複雑な面持ちだ。なぜなら2匹は飼い猫ではなく、“家族募集中”の保護猫だからだ。
野良猫が生んだ子猫
ゆうさんが2匹と出会ったのは、2015年11月。生後2カ月ほどの幼いナナとココを実家の近所で保護したのだという。
その1年前、別の場所で野良猫が生んだ7匹の子猫を保護して譲渡した経験があり、“人生で2度目”の保護活動だった
「スナックのママが店先で避妊せずに餌付けしてしまい、野良ちゃんが増えて代わる代わる食べにきていました。その中に、まだ小さなナナとココがいたんです。寒くなる時期だったし、まだ幼いこの子達に家族を見つけてあげたいと、その一心だけでした」
当時ゆうさんは実家で母と暮らしていたが、家には心臓を患って闘病中の犬がいた。犬の負担を考えて、ナナとココは一時的に近所の猫好きなお宅で預かってもらうことにした。その上でゆうさんはトイレの世話と給餌に通った。
「犬の看病をしながら、毎日毎日ナナとココの世話に行きました。そうしながら、7匹の子猫の時と同じように、ポスターを作って動物病院に貼ったり、ペットサイトに写真を掲載したりしました」
以前保護した7匹の中には猫風邪で目の状態が悪かった子もいたが、知人関係やポスターで譲渡先が決まり、みな幸せをつかんだ。ナナとココは病気もなかったし数も少ない。だから「すぐに行先が見つかるはず」と思っていた。だが、予想に反してなかなか決まらなかった。
「保護から2~3カ月して2匹に興味を持ってくれた人がいたのですが、“避妊をした時期”が原因で断られたこともありました。最近は早期に保護猫の避妊をする風潮があり、ナナ、ココも保護して間もなく避妊手術をして頂きました。それを知ると『そんなに早くしたの? 不安だから要らない』と言われてしまいました」
2匹が1歳になる頃、看病していた実家の愛犬が亡くなった。それを機に、ゆうさんは預かり宅から2匹を引き取り、今のマンションに引っ越して来た。
折り合いがつかず破談
それを機に本腰を入れて家族を探そうと、譲渡会にも出るようになった。そこで決まりかけた家があったが、ぎりぎりで破談になってしまった。
脱走防止についての意見があわなかったからだと、ゆうさんはいう。
「お申し込みがあった家が、国道沿いの一軒家でした。簡単なものでいいので玄関に柵を取りつけてくださいませんか、とお願いしました。はじめは納得して下さったのですが、うまく柵を付けられなかったというんです。話し合いをしているうちに、お爺さんが出ていらして、『うちは人間メインだから柵は無理。この話はなし!』と仰って……」
また別の家族は「2匹一緒にぜひ」と申し出てくれたが、以前飼っていた猫をベランダや敷地内の庭に出していた事がわかった。
「前の猫は大丈夫だったから、と仰いましたが、ベランダや玄関は猫がスルッと出てしまう危険な場所です。やはり理解し納得して脱走防止の対策をして頂かないと心配でした。せっかく繋いだ命なので、大事にしてくれる方に託したいんです」
2匹はずっと一緒に育ってきたため、ゆうさんは今では2匹一緒に送り出したいと思っている。とくにナナは慎重で、ココを真似て行動するところがあるので、離しがたいという。
「今もスーパーや動物病院に家族を探す貼り紙をしています。譲渡会にも参加しますが、猫たちは“なんでここに連れて来るのよ”という感じで固まってしまい、全くアピールしてくれないんです。ふだんは愛嬌たっぷりで可愛いのに(笑)。周囲の話を聞くと、うちより長く、かれこれ5年くらい預かっている方もいるようだけど、“仮”でなく本当の住まいを早く見つけて安定させてあげたい。こればっかりはご縁ですけどね……」
年頃の娘を持つ母のように、ゆうさんがしみじみと言った。
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