「君と暮らしてもいいよ」 譲渡会ではヒトが保護犬に選ばれる?
公益社団法人「アニマル・ドネーション」(アニドネ)代表理事・西平衣里です。かれこれ、8年前。私が最初に行った「譲渡会」は、犬もスタッフもとてもイキイキしていて、とても穏やかな空気が流れていた印象があります。今回は、その保護犬や保護猫との出会いの場、「譲渡会」についてご説明します。
本題の前に、少しだけアニドネの近況報告をさせてください。
8月1日にアニドネはサイトリニュアルをいたしました。どんなに準備をしても、やはりオープン前はバッタバタ。スタッフ一同、夜も昼もなく働いて、無事世の中に出すことができました! システム&デザインが一新されております。支援している認定団体様の顔ぶれが変わったり、寄付カテゴリーが増えたり、アニドネの沿革ページができたりしてます。
ぜひ、新しくなったアニドネをご覧になってください。
さて、本題の「譲渡会」です。
私は、犬たちに接していると、人間側ではなく犬が人との暮らしを選んだように思える瞬間があります。なぜここまで人間を信頼してくれるのか、なぜ人間と協働することを至上の喜びとするのか。5万年も前から共に暮らしてきた歴史が証明するよう、犬との暮らしは当然であり、人間にとって必須だと思うのです。そんな犬たちと出会う場は、ペットショップやブリーダー以外にもあります。
今回、一般の方にはまだあまり馴染みがない「譲渡会」についてご紹介したいと思います。
「譲渡会」ってなに?
「保護犬や保護猫を引き取りたいのですが、どうしたらいいのですか?」
よく聞く質問です。
保護犬・猫と出会うためにどう行動するのか、が判らない(知られていない)のだなぁと思います。この質問には「まずは居住地の近くで、保護団体さんや行政施設の譲渡会を探してください」とお答えします。
アニドネと横浜商科大学で一緒に実施した「保護犬猫のマーケット調査」によると、保護犬を、引き取った場所としてナンバーワンなのは、ボランティア団体の保護施設(譲渡会含む)で72.8%、2番目は動物愛護センターなど行政の施設15.6%となっています。
保護動物が幸せな暮らしを得るためには、ボランティア団体の活動が必要不可欠ということを端的に表している結果であり、出会う場が「譲渡会」なのです。
譲渡会を知っていても足を運ばない…
もう一つ注目すべき調査項目、それは少し残念な結果です。
譲渡会の存在を知ってはいても、保護動物飼育の検討をしなかった人が55.6%、保護施設や譲渡会の参加をしなかった人が65.3%。この理由はさまざまなのですが、検討していない人が9割弱に上りました。そのほか条件的に引き取れない、保護施設のことがよくわからない、引き取るまでの過程がわからない、保護施設が近くにない、など。
実際、都内近郊には保護動物のシェルターは数えるほどしかありません。行政の施設(保護センターや愛護センター呼ばれる場所。日本に100カ所以上あります)も、駅前にあるわけではなく、人里から遠く離れた場所にあることが多いのです。
アットホームな、同窓会的な場所
今回は、関東近郊で活動している「ちばわん」というボランティア団体さんが開催している譲渡会を例にご紹介します。
「ちばわん」さんは、なんと250名のボランティアが活躍している大きなボランティア団体。シェルターは持たずに、「預りさん」という一般の家庭で保護動物を預かるシステムです。
「ちばわん」さんのHPには、現在飼い主さんを募集している犬や猫たちが随時アップされています。HPで見た犬や猫と実際に会ってみたい、そう思った希望者が譲渡会に足を運びます。いわば、保護犬・猫と飼い主候補さんたちのお見合いの場なのです。
「ちばわん」さんの譲渡会は、犬と猫で別の場所で行われることが多いようです。今回は犬たちの譲渡会。
新しい飼い主を待つ保護犬たちは、目印に黄色いバンダナを巻いています。保護センターで保護された犬猫たちは、ボランティア団体さんに引き取られなければ殺処分になる運命でした。それでも譲渡会に出ている犬たちはとても生き生きとしています。
個性豊かなミックス犬たち(見た目もオンリーワンが多い、性格も様々!)。遊びたくて仕方がない様子の子や、預りボランティアさんに甘えている子、ちょっと不安そうに上目遣いの子、見ていて飽きません。ボランティアの方もみなさん顔なじみなのでしょう。まるで同窓会のような雰囲気です。
犬たちに選ばれる人になろう
ペットショップと一番の違いは、譲渡会といえども、その日に「譲渡」はしてくれないことです。どういった流れになるか、ご説明すると……
・ HPで見て、いいなと思った犬とご対面
・ 預りさん(一緒に暮らしている)方に、犬の個性や性格などを直接聞く
・ お試し(トライアル)を希望する(通常2〜3週間くらい)
一度は飼育放棄された犬たちをレスキューしている保護団体さんは、次は絶対にそんなことがないようにしたいと強く思っています。そのため、飼い主候補の生活スタイル(家族構成、職業、留守番が長すぎないか、居住場所など)を事細かにヒアリングするアンケートの記入も必須となっています。
そして、私が感じるのは、犬たちも飼い主さんを選んでいるような様子を見せること。犬と暮らしていると、言葉を持たないものが持つ第六感的なものがあるんだなぁと感じるのですが、まさに彼らの感覚で一緒に暮らす人間を見定めている気がします。
「2頭目は保護犬を」
これもよく聞く言葉です。
譲渡会は、いつでも誰でも行くことができます。犬や猫との暮らしを求める友人たちに「譲渡会にも行ってみれば」とオススメしていただくことも大変ありがたいことです。正直、ペットショップで犬を買うより、保護犬・猫と出会うには、はるかに手間がかかります。だけど、真のパートナーを見つけるための必要な過程なのかな、とも感じます。
譲渡会は、自分は犬猫と暮らす(彼らの命に責任を持つ)覚悟があるのか、を見定める場所でもあるし、犬たちの個性にふれる場でもあります。ぜひ、まずは足を運んでみること(できれば家族全員で)をおすすめしたいと思います。
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