野犬の子を引き取り、子育てと両立 元保護団体スタッフ
飼いにくく、もらい手がつきにくそうな犬をあえて引き取って一緒に暮らす。しかも、小さな子どもを育てながら。かつて保護団体のスタッフだった主婦に会いに行ってみた。
もらい手がつかなそうな犬
立石さんは、犬や猫の保護団体ARK(アーク)に6年間勤めていた。ARKは、イギリス人のエリザベス・オリバーさんが代表を務める動物保護団体。大阪と東京に拠点があり、25年間、犬や猫の保護活動をしている。1991年~2017年に犬を3779匹、猫を1829匹譲渡した実績がある。立石さんはそのスタッフとして働き、結婚を機に仕事を辞めた。今は大阪で2人の子育てをしながら、保護犬と暮らしている。
立石さんは犬や猫の世話を仕事にしてきただけに、動物との接し方には慣れている。
「里親になると決めた時には、もらい手がつかないような、難しい子の中から1匹選ぶと決めていました」
立石さん宅には、長女と、年子でやっと立って歩けるくらいの次女がいる。そのため、引き取るのは、小さな子どもたちが元気いっぱいに振る舞っても、苦にならない犬という条件もあった。何匹かの候補の中から選んだのが、雑種犬のトレスだった。
山の中で生まれた野犬の子
トレスは、山口県の山の中で、野犬の母犬が産んだ子犬4匹のうちの1匹。別の母犬が産んだ子犬4匹も合わせて、計8匹の子犬をARKが引き取った。
地方では山中などで野犬として生まれ育つ犬が今でもいる。産まれた子犬を保護しないと、野犬がさらに増える悪循環に陥る。トレスは地元の保護団体が捕獲し、警察を通じてARKにやってきた。
母犬を見守っていた保護団体によると、トレスは2017年7月20日生まれ。立石さんが出会った時は生後9ヶ月で、やんちゃ盛りだった。子犬の兄弟の中でで育ち、同じ年頃の犬と同じ犬舎にいたので、犬との接し方は分かるのだが、山深い所にあるARKでは限られた人としか触れ合うことができない。そのため人との接し方や自動車やバイクなどの社会音は、ほとんど知らずに育ったという。
「このまま成犬になると、人との触れ合いが乏しく、一生もらい手がつかない可能性が高い。甘噛みがひどいので子犬のうちならなんとかなる。そう思ったので、この子にしました。子どもたちが騒がしくても付き合ってくれますし」
臆病な子がだんだん慣れてきた
トレスが立石さん宅にやってきて、はや4ヶ月たった。
初日は、ご飯も食べず、排泄もできず、机の下にもぐったまま出てこなかった。もともと野犬だったので、社会化が必要な時期に人との触れ合いが少なかったそんな極度の緊張も、立石さんにすれば、想定内の出来事だった。
2日目、夜になってやっとオシッコをして、近くの公園にも出かけられた。しかし、それから2週間、2日間我慢して、やっとオシッコを出す日々が続いた。立石さん宅は都市部にあるため、自動車やバイクの音でパニックになることもあったという。
周りの環境に少しずつ慣らすことで、やっと30分ほどは散歩ができるようになった。それでも人への警戒心が強く、今も知らない人が家に来ると机の下にもぐって出てこない。ただ、人に興味がないわけではなく、そっと後ろから近づいてお尻の匂いを嗅ぐこともあるという。
立石さんはいう。
「テレビで保護犬が取り上げられることも増えたのは良いことですが、保護犬を迎えると、散歩に行こうと思っても歩かない、「おいで」と呼んでも寄ってこないなど、思うようにいかないこともあります。犬を飼うと、病院代やトリミングなど、お金もかかることも知ってもらいたいです」
トレスにとって今は、立石さんが「お母さん」。信じ切っているようだった。
アニマル・レフュージ関西(ARK)
さまざまな理由で保護した犬や猫の心身のケア、社会化トレーニング、里親探しなどを行っています。
住所:〒563-0131 大阪府豊能郡能勢町野間大原595 アニマルレフュージ関西
HP:http://www.arkbark.net/
営業時間:10:00~16:00
Tel:072-737-0712/Fax:072-737-1886
E-mail: ark@arkbark.net
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