別れた夫婦に捨てられた犬 新しい家で生気を取り戻す
動物が保護されるのは、悪徳な繁殖業者からの救出や多頭飼育崩壊のケースに限らない。ごく普通の一般家庭でペットとして飼われていた動物が捨てられ、保護される場合もある。別れた夫婦のもとから保護され、引き取られたミニチュアシュナウザーに会いに行ってみた。
別れた「妻の犬」
ミニチュアシュナウザーの「グラウくん」は、ある夫婦に飼われていた。最初に犬を飼いたいと言い出したのは、妻だったという。ところが、夫婦仲が悪くなり、ある日、妻が犬を置いて出ていってしまった。残された夫は、ベランダでグラウくんを飼っていたが、ついに「自分の犬ではないので、可愛くない」と手放したのだという。
グラウくんは保護され、大阪の一時預かりボランティアの鳥飼さんの家に来た時は、推定5歳だった。とても痩せていて、無表情。生気がなかったという。動物病院にも行っていなかったようで、フィラリアは強陽性で、お腹の中は虫だらけだった。
「まるで寄生虫の博覧会のようやな。おそらく、古い食餌に継ぎ足し、継ぎ足しして、食事をさせていたのだろう」と獣医師があきれるほどだったという。
預かりから情が移り
鳥飼さん夫妻は、保護犬の新しい飼い主が見つかるまでの預かりボランティアをしている。以前、預かったミニチュアシュナウザーの「よもぎちゃん」は、蓄膿症の手術をして、そのまま帰らぬ子となった。夫妻は悲嘆に暮れていたのだが、そこにやってきたのがグラウくんだった。
特に、夫が愛着を感じ、だんだん手放したくなくなったという。だが、グラウくんは保護団体から一時的に預かった犬だ。譲渡希望者が現れたため、次回の譲渡会に出す準備をしなければならなかった。その準備をしているうちに、次第に夫が不機嫌に。「うちで飼いたい」と言い出し、正式に家族として迎える決断をしたという。よもぎちゃんの生まれ変わりとして、受け入れることにした。
瞳の輝きを取り戻す
当初、グラウくんはまるで生きることを諦めたような目つきをしていた。ご飯もあまり食べなかったという。「ベランダの中の限られた世界のことしか知らず、愛情をかけられたことがないので、心に傷があったのだと思います」
外の世界には、5歳にして初めて目にする怖いものもたくさんあった。鏡に映る自分の姿を見ては吠え、テレビも怖がった。先住犬のゴールデンレトリーバーも怖くて、慣れるのには時間がかかった。
しかし、普通のペットとして可愛がっているうちに、だんだんと心の傷も癒え、3~4ヶ月後には、ペットらしくなったという。
「グラウ!」と呼ぶと、嬉しそうに駆け寄ってくる。ご飯もごほうびをあげて慣らすと、よく食べるようになった。野菜が好きで、家庭菜園のブロッコリーやにんじんも大好きだ。おもちゃでも遊べるようになり、できることや好きなことがいっぱい増えていったのだ。
ぬいぐるみのように買われ、そして、捨てられた。いま、やさしい家族と暮らす喜びを知り、グラウくんの瞳は輝いている。
- <グラウくんの出身団体>
- Ley-Line(レイライン)
現在は主に繁殖場への交渉・引き取りをしています。 これから動物を迎えようと思っている人に、ペット産業の裏側を知ってもらえたらと思い、「癒しを求めるなら彼らに平和を返そう」というコンセプトで活動しています。
HP:http://ley-line.info Mail : saco@ley-line.info
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