ブリーダーの元から保護、仲良く静かに暮らす2匹のペルシャ猫

ブリーダーが経営破綻し、多頭飼育されていた猫が保護される事件が相次いでいる。そんな劣悪な環境で育てられ、救出後、保護猫カフェを通じて、引き取られた2匹のペルシャ猫(チンチラ)の家を訪ねてみた。

(末尾に写真特集があります)

「2匹はいつも一緒。仲よしです」

 3月初め、埼玉県内の一戸建て住宅を訪ねると、飼い主の佐藤ゆかりさん(59)が明るく迎えてくれた。ディズニーのキャラクターが飾られた玄関から居間へ入ると、シルバーの美しい毛並の猫が2匹いた。2匹そろって、こちらを見る姿は、そっくりだ。

「よく見ると、大きさも顔だちも違うんですけどね。大きい方が5歳のカマンで鼻ぺちゃ。小さい方が7歳のクランで鼻筋が通ってる。両方とも女の子です」

マンションで数十匹飼育

 カマン、クランという名前は、生い立ちに由来する。2匹は神奈川県鎌倉市のマンションの1室で、数十匹の同種の仲間とともに育った。

「姉妹ではないにしても、従妹とか、親戚関係にあるようです。チンチラシルバーだけ繁殖するブリーダーさんが猫を増やし過ぎて面倒をみきれなくなり……経営破綻ですね。それで複数の団体が救出に入ったそうです。現場はゴミだらけで、多くの死骸もあったとか……」

 そんな2匹との出会いは偶然だった。一昨年1月、娘の美冬さん(21)と行った近所の保護猫カフェ「ねこかつ」で、クランを見そめたのだという。

毛づくろい中のクラン
毛づくろい中のクラン

「少しびびりで、他の猫が遊ぼうと寄ってきても、椅子の下に隠れたり、逃げるように棚に乗ったり。でも娘が近づくと、グルグル喉を鳴らしたりして、この子がいいね、と親子で惹かれました。もしクランと仲良しがいたら一緒に引き取りたい、と店長さんに話したら、『実は同じ場所にいた子が……』と、保護の経緯を話してくださいました」

 店長の梅田達也さんによれば、カマン、クランは救出時には、人に慣れておらず、毛玉だらけで、トイレの仕方も覚えていなかった。しばらく自宅で預かり、梅田さんの母が愛情深く世話をした。その上で、保護猫カフェにお目見えしたのだった。

「これぞ縁だと思う」とゆかりさんはいう。

愛犬のペットロスを経て

 ゆかりさんは、カマン、クランと出会う少し前、愛犬のダルメシアン『パディータ』を老衰で亡くしていた。

「近所でうろうろしていたところを当時高校生だった娘の友達が見つけて、知らせてくれたんです。ディズニーの『101匹わんちゃん』に出てくる犬にそっくりでした。昔から大好きな犬種だったし、もし迷い犬ならうちで一時的に預かろうと思ったんです」

 警察などにも確認したが、飼い主は名乗り出ず、そのまま家で引き取ることにしたという。推定7歳。珍しい犬種ため、近所の犬好きにも慕われ、家族みんなで愛した。だが、足腰が弱くなり、介護の甲斐なく旅立った。

「大きな存在だったので、私はその後ペットロスになって。そうしたら、保護猫を飼わない? と娘やパパが言ってくれて、2匹との出会いに繋がった。さかのぼって考えると、『パディータ』が来た時もペットを亡くしたばかり。不思議に縁が巡るんです」

一緒に食事中
一緒に食事中

 愛犬『パディータ』を迎えた時は、13年暮らした元野良猫『ウンゴロ』が20歳で大往生したばかりだった。

「その猫は優しくて、幼かった娘の子守もしてくれて、猫のイメージを変えてくれました。カマン、クランをトライアルする時、『初めて飼うお宅には、長毛猫は薦めないですが、安心です』と梅田店長に言われました。我が家には『ウンゴロ』と暮らした経験があるし、水のみやお皿やトイレなどグッズもいろいろあったので」

穏やかに過ごす2匹

 話を伺っている間に、カマン、クランはごはんを並んで食べ、隣の和室へ移動した。2匹は本当に静かだ。

「私も傍にいることに気づかない(笑)。来た頃に、足にぶつかりそうになったことが何度かあるので、首輪におそろいの鈴をつけたんですよ」

 2匹は同じ方向で寝たり、同じ動きをしたり。その行動に、愛おしさが募った。

「最初は2匹の仲が険悪でしたが、だんだんなくてはならない親友みたいになりました。クランのほうがお姉さん気質で、カマンを舐めてあげる。かと思うと、クランだけ動物病院に連れていった時は、“どこにいる?”というようにカマンが鳴いたり。以前は犬も猫も1匹で留守番させるのに抵抗があったけど、今は2匹でつるんでいるので安心です」

 夫の政勝さんも「うん、かわいいよね、癒される」と目を細めた。

佐藤さん夫妻に撫でてもらうカマンとクラン
佐藤さん夫妻に撫でてもらうカマンとクラン

 結婚してから野良猫、捨て犬、そして崩壊現場から救出された猫と、すべて“おとな”になってから迎え入れている。

「“おとな”はどんな性格がわかっている点がいい。『パディータ』は大型犬で4年しかいなかったけど、濃密なよい時間でした。『ウンゴロ』なんて亡くなる当日、僕が仕事に行く時に玄関先まで挨拶しに来たし……いなくなる時は寂しいけど、犬も猫も年齢に関係なく可愛く、尊いです」

 鎌倉育ちのカマンとクラン! この心優しき家族と一緒に、素敵な思い出を重ねていってほしい。

(撮影=庄辛琪)

藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は18歳の黒猫イヌオと、4歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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この連載について
ペットと人のものがたり
ペットはかけがえのない「家族」。飼い主との間には、それぞれにドラマがあります。犬・猫と人の心温まる物語をつづっています。
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