おだやかに家族を和ませる老犬 夏に倒れ、ゆっくりと回復へ

「ムクちゃんの取材に伺いたい」と、東京都内に住むMineさんとKazuさん夫妻に連絡を入れると、「2週間ほど前に倒れて具合があまり良くないのですが、そんな老犬でもお役に立てることがあればぜひ協力させてください」と答えてくれた。今年7月のことだ。
(末尾に写真特集があります)
「どんな様子だろう」と心配しながら取材先へ向かう。バス停を降りると、ムクはMineさんに抱っこされて、私を迎えに来てくれた。パッと見た感じでは顔色(?)や毛づやもよく、とても老犬には見えない。少し白髪交じりになった、黒い顔のなかのくりっとした焦げ茶色の目がかわいらしいオス犬だ。
ムクがMineさん一家の家族に迎えられたのは2008年の秋ごろ。当時、推定5〜6歳と言われていたので、現在は14〜15歳だという。
「うちに来たばかりのころは、飛び乗った椅子からテーブルに上がり、人の夕飯のアジの干物を食べてしまったりと、やんちゃなところもあった」とKazuさんは懐かしそうだ。
「でも性格はおだやかかだし、車酔いもせず、体も丈夫だったので本当に飼い主孝行なんです」とMineさんは話してくれた。
Mineさんが勤めていた会社の同僚に、動物愛護のボランティアをしている人がいて、その人を通してミグノンを知ったという。動物の殺処分のニュースに心を痛めていたMineさんは、「犬を飼うなら保護犬を迎えたい」と思っていたそう。それまで犬と暮らした経験がなかったため、飼い方の本を読んだり、食べてはいけないものも勉強したそうだ。ムクという名前は娘さんたちがつけた。
「ムクは、毎日家族の誰かの布団で寝ます。最初はケージに入れる練習もしましたが、ケージをかんでほえてしまうので、家の中で自由にさせています。家族で旅行に出かけるときは、預けてしまうのが嫌で、犬が泊まれるホテルに行くようになりました。伊豆や箱根、鬼怒川など、ムクと一緒にいろんな場所に出かけています」とMineさん。
ムクを通して家族の会話が盛り上がったり、朝晩のお散歩で友達ができたりすることも、Mineさんにとっては、ムクと暮らすことの喜びだという。
倒れた日、ムクは1日に6度もけいれんを起こし、歩けなくなってしまった。「すぐに病院に連れて行きましたが老犬のため、全身麻酔などあまり負担の大きい検査や治療はしない方がいいと言われ、点滴と通院で治療中です。歩けるようになってからも、家の中をぐるぐると徘徊したり、寝てもすぐに起きてウロウロしたりと本当に様子がおかしくて心配でした。トイレにも行けなくて、昨日までオムツだったんですよ」とMineさん。
Kazuさんも「もうダメかもしれない」と覚悟したそう。独立した娘さんたちもムクのことを心配して、頻繁に連絡を取り合ったという。
「生きていてほしい、まだ一緒に暮らしたい、元気になってほしい」。
そんな家族の思いが通じたのか、ムクは回復していった。
取材に伺ったとき、ムクは動きが多少ゆっくりではあるけれど、食欲も全開になっていた。デザートに大好きなスイカをもらった後に「もうないんですか?」と言うかのようにキッチンをのぞきに行って、私たちをなごませた。
ムクの体調が気になりつつ、秋を迎えた。先日、Mineさんに電話で現在の様子を聞くと「夏に取材していただいた時と、それほど変わらない感じです。“元気いっぱい”とは言えませんが、のんびり、ゆっくり暮らしています」と話してくれた。
きっとこれからは老犬特有のチャーミングさまで身につけて、夫婦や家族の時間にムクがいることの温かさを感じさせてくれるのだろう。
(新海三太)
<ムクの出身団体>
ミグノンでは、東京都動物愛護相談センターから犬猫、ウサギなどを受け入れ、動物たちが新しい家族と出会えるように毎月第2日曜日と第4土曜日に譲渡会を開催するなど、さまざまなイベントを企画しています。
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷4-3-5
mail:info@rencontrer-mignon.org
HP: http://rencontrer-mignon.org/

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