写真で見初めた保護犬とまさかの出会い じゃじゃ馬も愛らしく
「我が家のじゃじゃ馬に会いますか? どうぞ」
千葉県に住む小関清彦さん(55歳)に案内されて自宅の二階に上がった。エアコンの効いた部屋に大きなケージがあり、そこで甲斐犬(ミックス)の「あられ」(♀・推定2歳)がくつろいでいた。清彦さんを見ると、嬉しそうに立ち上がり、シッポを振った。
(末尾に写真特集があります)
「目が優しくなったわね」と、妻の和子さん(57歳)がケージを開けて、「あられ」を自分のほうに引き寄せる。じゃれて甘噛みすると、「ほらほら」と慣れた口調で話しかけた。
「あられ」は2週間前に、千葉市内のペット複合施設「アニマルライフ」本店からやってきた。アニマルライフは保護犬・猫の譲渡を手がけており、譲渡ブースでは保護犬・猫にいつでも会えるようになっている。
和子さんは6月初旬に「あられ」に会い、写真を家族に見せて「この子どうかしら」と相談。清彦さんと長男の聖翔さんはその日のうちに面会に行ったという。
清彦さんはすぐに「あられ」を引き取ることを決めた。実は3月末に前に飼っていた犬を亡くし、家族みんなでたくさんの涙を流していた。
「『海老蔵』という7歳のラブラドールのミックス犬が3月29日に心臓病で突然死んだんです……ぱたっと倒れて病院で逝ってしまったので家族も茫然。一度はもう犬はいいと思ったんだけど、それも寂しくて……保護犬をもらうのはどうかと思い、しばらくして家内に話したんです」
「海老蔵」はスーパーにあった「子犬譲ります」という貼り紙を見て、迎えた犬だった。その前に飼っていたビーグル犬「ラヴィ」も引っ越しする知人から譲り受けた成犬で、清彦さんにとって犬を譲り受けることは特別なことではなかった。一方、妻の和子さんは農家で生まれ育ち、常に家に犬や猫やウサギなどがいて、動物がいない暮らしはむしろ不自然だった。海老蔵亡き後、嘆き続けるより、新たな犬と暮らしたいという思いに至ったという。
「それにしても不思議」。そう和子さんは「あられ」との出会いを振り返る。
「実は昨年、海老蔵が生きているうちから『あられ』を知っていたんです。ラヴィを埋葬しているペット霊園にお墓参りに行った時、保護犬活動をしている霊園の所長さんが里親募集の犬のファイルを見せてくださって。そこに千葉市動物保護導センターに収容されている『あられ』も紹介されていました。一度見たら忘れられないキャラの子で(笑)、気になっていました」
そして3月末、海老蔵の法要でペット霊園を訪れた時、犬のファイルを見ると「あられ」の写真がなくなっていた。「誰かにもらわれたんだ、良かった」と和子さんは思ったという。しかし実は「あられ」はアニマルライフに引き取られていたのだ。そして6月、和子さんはたまたま店を訪れ、「あられ」と運命の出会いを果たした。
「あのファイルの子だ!とビックリ。縁があったんだと嬉しくなりました」
「あられ」は小関家との赤い糸を見事に手繰り寄せた。アニマルライフ社長の竹堂佳紀さんによると、お店でも人気があり、何組もの家族が興味を持ってくれたが、引っ張る力が強かったため、なかなか新しい家族が見つからなかったのだという。
確かに「あられ」は力が強い。散歩するとき和子さんは首輪(ハーフチョーク)とハーネスをダブル付けし、2本のリードの手に巻きつける。「引っ張りそうになったら“スロー”、とか“ストップ”と声で制して散歩します。この前は、他の犬に会ったら嬉しくて、ぴょんぴょんジャンプして止まらないので、『帰るよ』とすぐ連れて帰りました」
やんちゃなオス犬2匹を育てた経験のある“肝ったま母ちゃん”は、じゃじゃ馬の「あられ」にも動じないのだ。力が強く、扱いが難しいことも、明るくプラスに転じて考える。
「あられ」の顔、がに股、白い胸元を見ると、ブルテリアが混ざっている気もする。ブルテリアは強面だけど、イギリスでは子守犬と呼ばれほど愛情深い。あられもそうだと思う」
長女の有紗さんは5月に結婚して家を出た。「嫁にいった長女と入れ替わるように来た『あられ』は二女。だから夫も可愛くて仕方ないんです」
小関家には81歳の母ていさんも同居しており、「あられ」がもっと落ち着いたら、どんどん仲良くなるだろうと和子さんは思っている。
「前の海老蔵がそうだったように、『あられ』もそのうち、おばあちゃんにおやつをおねだりするようになるわ。皆でゆっくり、いろいろなことに慣れていきましょう」
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