食いしん坊な猫「まんぷくちゃん」 まん丸な顔や体は幸せの証し

 まん丸なお顔にまん丸な目。体もまあるい。そして、見る人の心までまあるくしてしまう、まんぷくちゃん。安藤家の箱入り息子となるまでは、それなりに苦労したであろう外暮らしの猫だったのに、どうしてキミはそんなに癒し系の不思議キャラなの?

 

(末尾に写真特集があります)

 


体型に合わせて箱が膨らんでいく
体型に合わせて箱が膨らんでいく

箱が大好き、箱入り息子

 休日の午後。千葉市に住む安藤重幸さん(37歳)と理絵さん(33歳)夫妻の居間には陽光が射し込んで、のどかな時間がふんわりと流れている。笑顔のふたりの視線の先には、文字通りの箱入り息子「まんぷくちゃん」がいる。さっきから、箱の中であれこれ不思議なポーズをしては笑わせてくれるのだ。本人はいたって真面目にいろいろな体勢に取り組んでいるらしく、その証拠に、眉間にはシワが。一生懸命になると、まんぷくちゃんは眉間にシワが寄るのである。


 推定4歳半。安藤家に来て、1年半がたった。来た日から、その円満顔と不思議キャラでパパとママの心をとろけさせてしまった。いや、保護主さんの家で初めて出会った日からパパの心はとろけ、ママにいたっては里親探しのサイトで一目見た日からとろけきっていたに違いない。

 

 

おうちを探そうね

 こう見えて、まんぷくちゃん、1年半前まで一人ぼっちで外暮らしをしていた保護猫なのである。


 都内の川べりにある大きな公園に隣接した団地の敷地内で、半年以上うろうろしていたらしい。今と同じくまん丸体型で、おっとりと人なつこかったから、元は飼い猫だったようだ。この地域で個人的に保護活動をしている女性2人が、そんな彼に出会ったのは、2年前の秋の終わり。事故や病気はもちろん、人なつこさゆえの心ない人からのいたずらも心配になり、保護して里親探しをすることに。ケージを用意したものの、難なく抱っこで部屋まで運べたという。


 外ではいろいろな人に可愛がられていたらしいが、ご飯を与えると、一気にむさぼるように食べるのが哀れを誘った。半年前の春にすでにまんぷくに出会い、気にかけて、自転車の荷台に寝場所をつくってやったりしていた人の話では、当時の彼はかなりやせていたという。石を投げようとする子供がいたり、猫嫌いの住人もいる環境で、人間不信にならず、無邪気なままだったのは、持って生まれた性格なのだろうか。


「まんぷく」という名を付けたのは、保護した方。「万福」と「満腹」をかけた意味を持ち、たくさんの福を集め、食べ物に困ることなくずっと幸せな日々を、という、全ての外猫への思いを込めた。

 

古くなっても捨てられない、お気に入りの段ボールハウス
古くなっても捨てられない、お気に入りの段ボールハウス

サイトで一目惚れ

 理絵さんが、ネット上でまんぷくちゃんの写真を見たのは、ほんの偶然だった。


「もともと犬派だったんですよ。その日は、会社での昼休みに『引っ越しもしたばかりだし、動物でも飼おうかなあ』と里親探しサイトをふとのぞいてみたんです」


 お供えもちのような猫が、目に飛び込んできた。日曜床屋で母親に前髪を切られ過ぎたようなおでこと、美しいオッドアイを持っていた。それまで猫には「自分勝手でいたずら」という手こずるイメージしかなくて、飼う自信はなかったのだが、しばし見とれ、このキュートな子と暮らしたくてたまらなくなった。猫など飼う気がまるでなくて渋る重幸さんを説得し、二人でお見合いに行くことに。


 会いに行くなり、まんぷくちゃんは、重幸さんの膝元にやってきて、ごっろーんの親愛ポーズ。膝に手をかけて、おやつをねだる。これには、重幸さんの口元も思いきりほころんでしまった。「よく相談してから」と保護主さんに伝えて帰宅したものの、その日のうちに「わが家に迎えたい」と正式申し込み。大人猫の里親申し込みはなかなかないのだが、まんぷくちゃんには、サイトに出したとたん何件も申し込みがあって、理絵さんたちは一番乗りだったという。


 やってきた日のまんぷくちゃん。家の中の探検をすませた後、すぐにくつろいだので、保護主さんも大安心で帰っていった。


 名前は「まんぷく」のままに。二人であれこれ考えてはみたものの、「まんぷく以外にはない」という結論になったのだった。

 

保護主さんお手製のシュシュで今日はおめかし
保護主さんお手製のシュシュで今日はおめかし

まんぷくがいる幸せ

「猫がこんなにも愛嬌のある生き物とは知りませんでした。まんぷくがいるだけで、もう毎日笑ってます」


 そう声をそろえる重幸さんと理絵さん。お二人とも平日は会社勤め。まんぷくちゃんのことを想うと、早く帰宅したくてたまらなくなる理絵さん。会社で写真を見せては「可愛い~」と言われるのがうれしい猫バカに変身の重幸さん。まんぷくちゃんは重幸さんを玄関で待ち受け、そのあと、餌皿の前に移動し、お行儀よく座っているのだとか。


 ほんわかおっとりのまんぷくちゃんが、ワイルドな顔に豹変するのは、大好きなチューブ入りおやつをもらうとき。待ちきれず、ガブリと噛みついてしまう。その時も、眉間にはシワが!


 食いしん坊は相変わらずだが、保護された時にはガサガサだった肉球はプニプニとなった。今日も、まんぷくちゃんは、保護した方たちが願った通り、全身から万福オーラをふりまき、周りを笑顔にさせている。

 

(文・佐竹茉莉子 写真・芳澤ルミ子)

辰巳出版が隔月で発行している猫専門誌です。猫愛にあふれる企画や記事の質に定評があります。

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