2匹目の犬を迎える時の注意点は? 犬にも相性や嫉妬がある

(写真は本文と関係ありません)
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  • :既に犬を飼っているのですが、新たに保護犬を迎えようと考えています。気を付けたほうがいいことはありますか?
    :動物臨床医学研究所が運営している保護施設「人と動物の未来センター・アミティエ」(鳥取県倉吉市)にも時々、「2匹目として保護犬(保護猫)を飼いたい」という方がきます。保護犬に限らず、先住犬のいる家庭に新たに犬を迎える際にまず大切なのは、犬同士の相性です。

    犬もそれぞれに性格の違いがあり、合わない場合はとことん合いません。相性が悪いまま飼い続ければ、どちらかがストレスで体調を崩すこともあります。ですからアミティエでは、犬同士の相性を見極めることなどを目的に、2~4週間のトライアル期間を設けています。ほとんどの動物愛護団体がトライアル期間を設けていますので、この間に犬たちの様子をよく観察し、場合によってはかかりつけの獣医師にも相談してください。先住犬との相性が合うことがわかって初めて、その保護犬を引き取る決断をしましょう。
  • :望ましい組み合わせはありますか?
    :個々の相性が最も大切なので、どの組み合わせが望ましいというのは、一概には言えません。一般的には、性別が異なる2匹のほうが仲良くできるといわれています。ただその場合、不妊・去勢手術が必要です。不妊・去勢手術は多頭飼いをしていなくても必要なものですが、オスとメスをペアで飼う場合は必須です。

    また最近の猫ブームで、犬と猫を一緒に飼うケースも目立ってきました。ケンカをするという報告はあまり聞きませんが、動物病院では犬と猫の診察室をわけたり、出入り口を別にしたりといった工夫をしているところがあります。これは猫のストレスを軽減するためです。家庭でも、特に猫のほうが犬から安全に避難できる場所を設けてあげることを心がけましょう。
  • :相性の問題がなかったとして、どう慣らしていけばいいですか?
    :新たに来た犬のほうはまず、ケージ内で飼育しましょう。時間をかけて徐々に先住犬と近づけていくことで、トラブルを避けられます。

    そのうえで保護犬は、以前に虐待を受けるなどして、心に傷を負っている場合があることを考慮しましょう。極端に怖がりだったり、急に攻撃的になったりすることがあります。でも新たな飼い主があたたかく接しているうちに、そうした犬も心をひらき、驚くほど穏やかな犬になることが多いです。根気強く、付き合ってあげてください。

    もう一つ大切なのが、先住犬の気持ちです。それまでは飼い主の愛情を独占していたのに、新入りにそれを奪われたらいい気はしません。犬にもやっかみはあるのです。エサをあげたり、抱きかかえたりする時には先住犬を優先してあげてください。

    最後に、忘れてはいけないのは飼い主の問題です。家族全員が同意しているのか、2匹以上のペットを世話する時間的、経済的な余裕はあるのか――人間の側の事情もよく検討しておきましょう。「かわいそうだから」といって増やしすぎたら、不幸な結末が待っています。


(朝日新聞タブロイド「sippo」(2017年7月発行)掲載)

 


イヌ・ネコ ペットのためのQ&A

監修: 山根義久
編著: 公益財団法人動物臨床医学研究所
発行: パイ インターナショナル

山根義久
1943年生まれ。動物臨床医学研究所理事長、倉吉動物医療センター・米子動物医療センター 会長、東京農工大学名誉教授。医学博士、 獣医学博士。2013年まで日本獣医師会会長を務めた。

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この連載について
診察室から
動物臨床医学研究所の理事長を務める山根義久獣医師が、ペットの病気に関する質問にわかりやすく答え、解説するコラムです。
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