ぬいぐるみでひとり遊びするのが好きなアンレー
ぬいぐるみでひとり遊びするのが好きなアンレー

預かった猫が隙間から脱走 ペット探しを依頼するも悪質で失敗、自分たちで探す!

「大切なペットが脱走した!もう戻ってこないのでは……」そう感じている方に知ってほしい。逃げた犬や猫の帰還ストーリーと、経験者に聞く保護のアドバイスです。

(末尾に写真特集があります)

娘から預かった猫

川田さんの娘の愛猫のアンレー(右)とラルゴ(川田さん提供)

【逃げたペットについて】
名前:アンレー
性別:メス
種類:ミックス猫
年齢:脱走当時3歳
逃げた状況:ロックし忘れたペットドアからベランダに出て、隙間から飛び降りた。 
保護までの日数:7日間

 飼い主の旅行中に預かっていた猫が脱走してしまった! そんな絶体絶命の体験をしたのは、京都府で暮らす川田さん。自宅には脱走常習犯の愛猫がいるため、十分な脱走対策を心がけていたつもりだったと話す。

「娘は、アンレーとラルゴという2匹の猫と暮らしているのですが、家を空けるときはよくわが家で預かっていたんです。当時はうちにも2匹の猫と愛犬がいたのですが、うちの子たちにも慣れていたので、ふだんは平穏に過ごしていました」

 そんな安心感から油断があったのか、脱走事件は突然起きた。

「2024年2月のことでした。娘が旅行に行くというので、いつものようにアンレーとラルゴを預かったんです。普段預かるときには2匹のためにわが家にケージを持ち込み、夜の間はそこへ入っていてもらうのですが、そのときはたまたま部屋に新しい家具を入れたばかりでケージを入れるスペースを空けられず、『慣れているから大丈夫じゃない?』と、ケージなしで預かることになったんです。今思えば、そんな油断も脱走の要因になりました……」

小さな隙間から脱走か

「我が家の猫のうちの1匹『メル』は、脱走常習犯。かなり賢い猫なので、窓のロックなどの一般的な対策はしていたつもりでした。ところが、その日はメルが夜中にベランダに出たがったので、ベランダに行き来するためのペットドアはロックしておらず、そのことがアンレーの脱走につながったんです」

 ベランダは2階にあり、手すり壁とサンシェードでふさいでいるつもりだった。ただ1カ所だけ、小柄な猫であれば通れそうな隙間があったと言う。

「前日の夜はアンレーの姿を確認して眠ったのに、朝起きたらいない。パニックですよ。ふと、ペットドアをロックしていないことを思い出して、ベランダを調べてみると、手すり壁とサンシェードの間に、細身の猫なら通れそうな隙間がある。そこからは想像でしかありませんが、夜中にメルを追いかけてベランダに出たアンレーが、隙間をくぐり抜けて下に飛び降りてしまったのではないかと。その日は友人と出かける予定がありましたが、予定をキャンセルして探しに出かけました」

ベランダに出入りするためのペットドア。写真は川田さんの家のメル(川田さん提供)

 アンレーは、生まれてから一度も外に出たことがない家猫だった。逃げたのは自分の家でもないため、匂いをたどって帰ってくるのも難しいかもしれない。川田さんは、アンレーが戻ってこられる可能性は低いと判断した。

「早いうちにプロに頼もうと思い、近隣のペット探偵を検索したんです。すると、ペット探し専門ではなく、ペット探しもしている便利屋のような業者が検索トップに出てきました。問い合わせの電話で料金を確認すると、ペット探しの場合は3人体制で1時間探して18,000円ポッキリという話だったので、3人で探してくれるのであれば決して高くはないと思い、そのまま電話で依頼したんです」

 のちにこの判断が波乱を巻き起こすことになるが、一刻も早くアンレーをみつけたかった川田さんには、冷静に比較検討する余裕がなかった。

【いなくなった時にしたこと】
・迷子チラシを作り、近所に配布し聞き込みをした
・警察、保健所に届け出た
・業者にペット探しを依頼した

業者とのトラブル

「業者さんが来てくれる14時まで、警察や保健所に連絡し、迷子チラシを作って、家族と近所に配りながらアンレーを探しました。約束をキャンセルした友人も事情を聴いて駆けつけてくれたので、途中からは3人体制で探しました。そうこうしているうちに、約束の14時になったのですが、業者さんが現れません……」

 約束の時間を10分過ぎ、20分過ぎ、連絡を入れてもつながらない。川田さんが不審に思い始めたころにようやく20代前半の作業着の男性3人が現場に現れた。おもむろに捜索をスタートしたころには時刻は14時半を過ぎていたという。

「依頼していた1時間、3人は一生懸命アンレーを探してくれているように見えました。でもあきらかに、猫を探すための特別な知識や道具は持っていませんでした」

川田さんの家族にもよく慣れており、預かる際もリラックスしている(川田さん提供)

 業者が捜索を始めて40分ほど過ぎたころ、雨曇りで持ちこたえていた天気が崩れ、ポツリポツリと雨が降り始めた。すると、捜索を終えた業者から、思いもよらない発言が飛び出した。

「3人のうちのリーダーのような青年が、捜索時間中に雨が降り出したということで、『雨料金』としてプラス25,000円を請求すると言うんです。ホームページや問い合わせの電話であらかじめ説明がなかったことと、根拠のない価格に抗議したのですが『受付の者が説明したかどうかはわからない』と、こちらがうそをついているというスタンスで譲らず、結局交渉して値引きをしてもらうことでその場を収めました」

 業者とのやりとりにもやもやした気持ちは残ったが、アンレーの捜索に集中したかった川田さんは、ひとまず気持ちを切り替えた。

「脱走に気づいた時から目をつけていた、家の裏の空き家を中心にアンレーの名前を呼びながら探しましたが、結局その日は出てきてくれませんでした……」

空き家で姿を確認

 しかし、川田さんの読みは外れていなかった。2日目の捜索時に、家の裏の空き家からアンレーが現れたのだ。

「そのとき私は他の場所を探していて、息子が空き家を探していたんです。息子によると、アンレーの姿が見えたので、名前を呼びながら餌でおびき寄せたら近寄ってきたそうです。でも、そっと捕まえようとしたら逃げられてしまって、捕獲はかないませんでした」

 とにもかくにも、居場所はつかんだ。次は確実に捕まえたかった川田さんは、プロのペット探偵の捕獲を参考にすることにしたと言う。

「本業のペット探偵がどんな探し方をするのかインターネットで調べてみたところ、猫がいそうな場所に捕獲器を仕掛けると知り、すぐに通販で捕獲器を注文しました」

 翌日には捕獲器が届き、その日の夜、早速空き家に仕掛けることにした。

「翌朝、夫と一緒に捕獲器を見に行くと、猫がかかっていました。しかし、近づいてよく見てみると、近所の野良猫……。知っている顔だったので、ごめんねと謝って逃しました」

捕獲の予感

 川田さんは、アンレーが逃げた日から毎日、朝の出勤時間前と帰宅後の夕方、深夜の1日3回、近所をまわりアンレーを捜索していた。しかし、そんな努力もむなしく、アンレーは2日目以降なかなか姿を現さなかった。

「『アンレー』と呼びながら探していると、空き家の方から応える声がするんです。でも、近くにいるはずなのに、なかなか捕獲器に入ってくれず、イライラが募りました。もうやれることはすべてやろうと思って、ネットで見つけた『猫が帰ってくる呪文』を家に貼って毎日お祈りまでしていましたね」

 そんな状況が続き、1週間たった日の朝、川田さんは予感とともに目覚めた。

「あ、もうすぐアンレーが帰ってくる! 目が覚めた瞬間、そんな気がしたんです。きっと汚れているだろうと思い、猫用のシャンプーとからだを拭く新しいタオルを買いにスーパーに走りました。ついでに捕獲器に仕掛けていた餌も変えようと思い立ち、猫用のかつおぶしと無添加のにぼしも買ってきました。それから、餌をセットする際になんとなくひらめいて、捕獲器の場所をそれまで置いていた空き家から、わが家の敷地のアンレーがベランダから着地したあたりに変えてみました」

家族にかわいがられているアンレー(川田さん提供)

 川田さんは、自分の直感に従いアンレーの帰宅を待った。すると……。

「翌朝5時半ごろでした。捕獲器が閉まる音がして、急いで確認しに行ったらアンレーが入っていたんです!」

 アンレーは捕獲機の中で小さくなっていたが、ケガをしている様子はなかった。

それぞれの猫に合った脱走対策が重要

捕獲した日は、川田さんの夫が仕事を休んでアンレーを送り届けた(川田さん提供)

【今回の脱走から学んだこと】
・他の猫が通らないような隙間でも、猫によっては脱走経路になってしまう。
・ペット探偵を依頼する際は、料金や専門性を比較検討する。契約内容が証明できるようにしておく。

「家に連れて帰り、玄関で捕獲器の入り口を開けると、一目散に走っていきクローゼットに隠れました。汚れたので前日に買っておいたシャンプーで洗ってやると、生まれて初めてのお風呂に動揺したのか、普段はおとなしい子なのに手首をかまれてしまいました」

 きれいになったアンレーは川田さんの夫が仕事を休んで、大阪の娘のもとに送り届けた。娘はすでに旅行から帰っていた。

「飼い主の元に帰宅したアンレーは、一足早く娘の元に帰っていたラルゴにひどく怒られていましたね。普段は穏やかなラルゴがあんなに怒っているのを初めて見たので、私も娘も驚きました。脱走の報告を受けてから旅行を楽しめなかった娘も、アンレーが無事に帰ってきてほっとしたようです。娘に対して罪悪感がありましたが、なんとか許してもらえました」

 自宅の猫の脱走経験から、脱走対応は慣れているつもりだったという川田さんだが、アンレーの脱走を通して、新たな気づきを得たと言う。

「当たり前ですが、猫によって目をつける場所が違う。うちの猫が通らない場所をすり抜けて逃げるとは思いもしなかったので、猫を預かる方や新しくお迎えする方は注意が必要です。もうひとつの反省は、ペット探偵の探し方。テレビなどの影響もありペット探偵を名乗ったり、ペット探しをしている業者は増えているようですが、検索してすぐに出てきたからといって安易に信用せず、『価格が明確であるか』『ペット探しが専門か』を調べて、比較検討しておけばよかったと思います。依頼の際は、メールで契約内容の控えをもらっておくなど、契約内容が証明できるものを残しておくと安心ですね」

 川田さんの経験を脱走対策やペット探偵探しに役立ててほしい。

【前の回】臆病な愛猫がベランダから脱走! 捜索は飼い主の声と半径100メートルがポイント

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原田さつき
広告制作会社でコピーライターとして勤務したのち、フリーランスライターに。SEO記事や取材記事、コピーライティング案件など幅広く活動。動物好きの家庭で育ち、これまで2匹の犬、5匹の猫と暮らした。1児と保護猫の母。猫のための家を建てるのが夢。

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この連載について
迷子のペットが帰ってくるまで
「大切なペットが脱走した! もう戻ってこないのでは……」そう感じている方に知ってほしい、逃げた犬や猫の帰還ストーリーと経験者に聞いたお話です。
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