災害時はペットも一緒に避難 「同行」避難の訓練を!
災害が起きた時、まずは自分の身の安全を確保することが大切。でも、できたら飼い主はペットと一緒に避難してほしい――。そんな思いから静岡県裾野市の犬の訓練士、中村明美さん(61)が、ペットと一緒に避難する「同行避難」の訓練を実施している。避難所ではペット用のスペースの確保などが課題になっている。
昨年12月、御殿場市神山の訓練場。飼い主とペットが段ボールのトンネルをくぐり抜け、約500個のペットボトルで再現した「がれきの山」を越える。
1人だと簡単そうだが、ペットと一緒だとそうもいかない。暗くて狭い空間に入りたがらなかったりペットボトルの音に驚いたり。中村さんは「同行避難の現実を体験し、普段からしつけなどをしていないと災害時に一緒に避難することがいかに難しいのかを感じてもらえれば」と話す。
東日本大震災では、多くの犬や猫が自宅に取り残され、餓死したり野生化したりしたとされる。
災害救助犬や嘱託警察犬の訓練士として活動してきた中村さん。「人命の救助だけではなく、犬の救助にも目を向けたい」との思いで、2012年から毎年2回、沼津市の商店街で同行避難のデモンストレーションなどを住民ら向けに行ってきた。昨年からは障害物を使った同行避難の模擬体験も始めた。
昨年9月に開いた訓練には県内外から犬猫約50匹が参加。「待て」「おいで」などのしつけ、ケージの入り方から、近くの動物病院の看護師らを講師役にペットが骨折した時の応急措置の方法なども教える。12月の訓練にはリピーターも足を運んだ。
熊本地震では、避難所でペットが抱えるストレスも浮き彫りになった。中村さんによると、鳴き声などが他の避難者の迷惑になるケースもあるという。「ペットを飼う以上、飼い主は責任を持ってしつけをしてほしい。そうすることで避難所でのトラブルがなくなれば」と中村さんは話す。
参加者からは「ペットを飼っている者として絶対に知っておくべきことと強く思った」「本当に来てよかった」などの反応があったという。3回目の訓練は4月に行う予定だ。
ペットの同行避難訓練は自治体も行っているが、県衛生課によると、今年度は昨年末時点で7市町にとどまる。また、市町による訓練は避難所での受付やケージの入れ方などのデモンストレーションが中心で、中村さんのように模擬体験をさせるのは県内では珍しいという。
■南海トラフ発生の場合、12万匹を想定
南海トラフ巨大地震が発生した場合、県内で犬猫は最大約12万匹が避難すると想定されている。県はこうした事態に備え、15年に策定した「災害時における愛玩動物対策行動指針」で、避難所でペット用の場所を事前に決めておくよう市町に求めた。
だが、県衛生課が市町を対象に実施したアンケートによると、計19市町がすべてもしくは一部の避難所でペット受け入れ態勢を「整備済み」とする一方で、計16市町が「検討中」「未整備」と答えたという(昨年末時点)。
理由として各市町の担当者は▽人の避難対策が追いつかない中でペットまで手が回らない▽ペットが苦手な人や避難所の施設管理者との調整ができていない――などを挙げた。同課によると、「整備済み」とした市町でも避難所のペット用スペースまでは決めていないところがあるという。
県の担当者は「ペットと避難するという考え自体がそもそも地域に浸透していない」と話し、今年度から市町の担当者だけではなく自治会の自主防災組織に同行避難の重要性について説明を行っている。また、避難所でのペットに関する様々なトラブルの解決を図るボランティアリーダーも、昨年度から育成中だという。
県動物保護協会の齋藤俊夫事務局長(62)は「東日本大震災や熊本地震の時のような事態を避けるためにも、事前に場所の確保と態勢を考えないといけない」と指摘する。
(北川サイラ)
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