供養の形 お骨はどこに? 自宅?お墓?納骨堂?

愛犬が死んでしまった時、土葬にして自然に返すよりも火葬にする方が、現代では一般的です。ではその後はどう供養するか。たとえ遺骨になっても、愛犬を身近に感じていたいのが飼い主の心情でしょう。遺骨をずっと手元に置いておくのか、それとも納骨堂のようなところに預けるのか、はたまた家族と一緒に入れるお墓に葬るのかーー時代とともに、供養に対する考え方や方法も様々に変わってきました。(ライター・福田優美)


(写真は本文とは関係ありません)
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 1匹の犬が、健康で充実した一生をおくるためには、どのくらいの費用がかかるのか? シーンごとに犬の飼育にかかわる費用について解説するこのシリーズ、最終回の今回は「供養」です。火葬後、愛犬の遺骨を納める場所として、納骨堂、供養塔、お墓があり、最近では手元供養も人気です。それぞれの特徴と費用を見ていきましょう。


■納骨堂・供養塔

 ペットの遺骨を安置する場所として、最も一般的なのは納骨堂です。火葬から納骨まで一貫して手がける斎場やお寺もあれば、火葬を担当する斎場と納骨堂を持つお寺が提携しているケースもあります。

 横浜市にある「よこはま動物葬儀センター」は、車で5分ほど走った場所にある「妙蓮寺 ペット納骨堂」と提携しています。同センターで愛犬の火葬を終えた飼い主は、当日中に妙蓮寺へ移動して納骨の手続きをすることができます。同センター代表の神山孝さんは「当日納骨される方もいらっしゃいますが、火葬後いったんご自宅に持ち帰り、四十九日の法要が済んでから納骨にいらっしゃる方も多いです」とのこと。

 納骨堂の中は、約20センチ四方に区切られた納骨用の空間が縦横にずらりと並んでいます。それぞれの場所には、骨つぼ、生前の写真、フードやおもちゃなどが供えられています。毎朝、妙蓮寺の僧侶が冥福祈願のための読経供養をしてくれます。

 一匹ずつ個別に火葬する個別火葬で焼かれた遺骨は「個別霊座」に安置されます。個別火葬の料金の中には1年目の納骨料が含まれているので、支払いは2年目からになります。1年ごとに継続の手続きをし、更新料を支払います。

 他家のペットとともに複数匹で火葬する合同火葬で焼かれた遺骨の場合は、同じ火葬炉に入ったほかの犬たちとともに一つの骨つぼに納められて「合同霊座」に安置されます。合同霊座は納骨から1年が経つと、供養塔に埋葬されて永代供養されるので、更新料はありません。

 近所にペットの納骨場所がない、都心に住んでいるが自然豊かな土地で納骨してあげたい、といったニーズに応えて注目されているのが「ペット納骨便」です。石川県能美市にある総合ペット霊園「ピースリー」が提供しています。個別納骨堂か合同墓かを選び、遺骨を郵送するだけです。

 ペットの供養は人間と比べて選択肢が広いので、余裕があるときに比較検討し、予算や好みに合ったものを選ぶといいでしょう。

■お墓

 納骨堂ではなくお墓に埋葬したい人もいるでしょう。お墓の場合、納骨堂に比べて価格が高く、屋外にあるのが一般的なため定期的な維持が必要になります。

 日本最大級の動物霊園のひとつ、多摩犬猫霊園(東京都府中市)の動物専用墓地には約2千基のお墓があります。緑あふれる敷地内には、人間用のそれと同様に、ペットの名前が彫られた縦長の墓石が並んでいます。中には、犬や猫など生前のペットの姿をかたどった墓石もあります。1頭分の遺骨だけ納めている墓もあれば、家庭で飼ってきた何頭ものペットを一緒に納めているものもあるそうです。

 広報情報局長の杉崎哲哉さんによると、最も多いのは、四十九日に遺骨を納骨堂に納め、三回忌もしくは七回忌以降に合同墓地へ移す流れだそうです。

「お墓を建てる飼い主さんと合祀(ごうし)を選ばれる飼い主さんで、ペットへの愛情に差があるとは思いません。お墓は継続的な管理が必要です。お墓参りに来られるご家族がいらっしゃらない場合は、納骨堂か合同墓地をお薦めします」(杉崎さん)

 お墓の価格は基本的には敷地料金と墓石代で決まります。土地代は区画によって、また墓石代は石質や加工の度合いによって異なるので一概には言えませんが、全体で数十万から数千万円と、人間用と同様に幅があります。

 東京都世田谷区にある「世田谷メモリアル常福寺」は、ペット訪問火葬の「ペットPaPa」や猫専門の斎場「キャットPaPa」を運営する「Ecoアース」と提携し、動物の供養をしています。ここでは、人とペットが一緒に入れるお墓が人気です。さらに最近新たに登場したのが「人とペットの樹木葬」。遺灰を木の根元に埋め自然に返るとして人間用でも注目されている自然葬が、ペットとともにできるのです。墓石はなく、松の木がある庭園に、飼い主とペットが一緒に埋葬されます。

(写真は本文とは関係ありません)
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■手元供養

 納骨堂やお墓といった従来の供養以外に、最近話題を集めているのが手元供養(自宅供養)です。手元供養とは、遺骨や遺灰の一部を自分の手元、すなわち自宅や身のまわりに置いて供養すること。供養の方法には、遺灰の一部をペンダントやカプセルなどに納めたり、それをもとに宝石を作ったりするメモリアルジュエリーや、遺骨や遺灰を納めて飾るインテリア調の箱や墓石などがあります。

 ペット葬儀会社、ジャパンペットセレモニー(同世田谷区)は、手元供養のための商品を多数そろえています。同社代表の藤本政光さんによると、自宅にペット用の仏壇を置く人はあまりいないそうです。「亡くなった子を身近に感じたい場合、ガラスや陶器のケースに遺灰の一部を入れ、ご自宅に置かれる方が多いようです。これらは一見、供養の品には見えないので、採り入れやすいのでしょう」

 葬祭業大手のメモリアルアートの大野屋(同新宿区)は、遺灰を納められる装飾品「ソウルジュエリー」シリーズを提供しています。ブレスレットやネックレスなどの、裏側の目立たない部分に小さな穴があり、中に遺灰を入れられます。形見として肌身離さず持ち歩くことがきるため、人気だそうです。

 愛犬を写真や動画でしのびたい人向けの商品も。「メモリアルムービーボックス」は、7センチ四方程度の小さな箱のふたを開けると、ふた裏にはめ込まれた液晶画面にあらかじめ制作した映像が流れるものです。発売元はエフカ(東京都)。

 ペットの墓石専門店メモリアル・プロストーン社(高松市)は、自宅で室内やベランダに置ける、小さなサイズのペット用墓石を作っています。同社のある高松市は、最高級の墓石素材とされる庵治(あじ)石の産地。屋外のペット霊園用の墓石も、もちろん製造しています。

 手元供養は現代の住環境に適しているだけでなく、納骨堂やお墓に比べると、維持補修がはるかに安くて簡単なのが利点です。

まとめ

 供養は、死んでしまった愛犬の冥福を祈るためのものですが、同時に、残された飼い主がペットの死と向き合う「喪の儀式」でもあります。自分の死生観やライフスタイルに合った供養をすることでペットロスが避けられるとも言われます。ペットを飼うことは、死に立ち会うことが必至です。飼い始める前に、最後まで想像してみることも大事な作業かもしれません。

sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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この連載について
犬を飼うと、何にいくらかかる?
家に迎え入れてから、供養まで、犬を飼うのにはどのだけお金がかかるか、ライフステージごとに解説した連載です。
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