「飼い猫を置いていけない」車で過ごす人も 熊本地震
14日夜の地震で最大の震度7を記録した熊本県益城町。発生から丸1日たった15日夜も、公民館や学校に設けられた避難所で住民が肩を寄せ合って過ごしていた。支援物資やケアの整備が進むが、自宅に戻れるのか分からない不安定な状況は変わらない。
益城町立広安小学校では、各教室に数家族が毛布や体育用のマットを敷いて寝起きしている。同日午後5時半、「昇降口にパンが届いています」という校内放送が流れると、近隣の家からも人が訪れ、長い列ができた。子ども4人を連れた女性(37)は「食事が頻繁に出るのでとても助かる」。玄関には飲み物やカップ麺のほか、持ち寄られた紙おむつやイチゴも並んだ。
町保健福祉センターでは同日午前9時過ぎ、災害派遣医療チーム(DMAT)が救護所を設けた。宮崎、熊本、大分各県の医師らが避難者の診療にあたった。
前夜は、町指定の避難所だった公民館や小学校体育館の壁や天井が地震の影響で崩れたことなどで、避難者約200人が屋外で一夜を過ごしたが、15日になって町が別の避難所に誘導して「野宿」は解消された。
だが、困窮は続く。佐藤めぐみさん(31)は、生後9カ月の幼児ら子ども3人を連れて同センターに避難している。地震ですべての家具が倒れ、散乱したアパートの部屋を後にした。「子どももいるので身動きが取れず、避難で精いっぱい。余震も続いて怖くて家に戻れない」
センターにいた81歳の一人暮らしの女性は、家の壁が崩れ落ち、屋根と柱だけしか残らなかった。15日昼に戻ったが「手がつけられなかった」と途方に暮れる。持ち物は財布の入ったバッグのみ。すぐに身を寄せられる肉親もおらず、「着替えもないのに」とため息をついた。
同日朝に町内で2820人に上った自主避難者は午後9時現在で1890人に減った。ただ、避難所に寝泊まりせず、車などで過ごす「屋外避難者」もおり、町も正確な人数を把握できていない。
夕方になって同センターであった食べ物の配布にやって来た埜口きぬこさん(68)も、そんな一人。
前夜は夫と息子の3人で、自宅駐車場にとめた軽自動車内で眠った。飼い猫を置いて避難所に身を寄せるのがしのびなく、屋根瓦が飛んだ自宅を片付けながら、車内で過ごしている。大人3人と猫1匹に軽自動車は狭い。「夜は車の中なので憂鬱(ゆううつ)です。でも余震が怖いから、あと1週間は我慢しないと」
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