動物園の余剰動物問題 死んだシマウマは天王寺動物園の「バロン」

捕獲作業でシマウマが死亡……、感じたいくつかの疑問

 愛知県内の乗馬クラブから逃げたシマウマが3月23日、岐阜県内のゴルフ場に逃げ込み、捕獲作業によって死亡するという痛ましい事件がありました。シマウマは、愛知県内の移動動物園業者が乗馬クラブに預けたものだと報道されており、吹き矢で麻酔薬を何発も打たれた後、池に倒れこんで溺死しました。テレビや新聞などで大々的に報道されましたので、多くの方が、心を痛めたことと思います。

 しかし、報道を見ていて、疑問に思ったことがありました。一つは、この捕獲方法でいいのか?ということです。

 ゴルフ場で人間がシマウマを取り囲み、捕まえようとしてはヒョイと避けられるようなことをしていましたが、本当にこれで捕まえられるのか? 結果として亡くなってしまったことについても、シマウマなど扱ったことはないであろう警察官や獣医師を簡単に責めるわけには行きませんが、多くの人が疑問を抱いた のではないでしょうか。

 そして、シマウマは3月22日の乗馬クラブ搬入直後に脱走したものでしたが、シマウマがもといた場所はどこなのだろう?という疑問もわきました。

 移動動物園のような業者が手に入れる大型の野生動物といえば、ありうるのは、どこかの動物園が手放した余剰動物です。2歳のオスのシマウマ(おそらくは成長してきて要らなくなったシマウマ……)を手放した動物園はどこなのだろう? 

 乗馬クラブと移動動物園業者はシマウマの扱いについて明らかにプロではなく、何も期待できませんが、その動物園は捕獲作業には関わらないのか?というのも疑問でした。


縞の特徴が一致する! 天王寺動物園の「バロン」

 インターネット上には、大阪の動物園から来たという書き込みがありました。そこで、グラントシマウマを飼育している大阪の2カ所の動物園のシマウマの情報を見ていたところ、なんと天王寺動物園(大阪市)が2014年9月1日に「アフリカサバンナゾーン」の草食動物エリアで展示を始めたと報道されているグラントシマウマの赤ちゃん(雄、当時名前未定)の縞模様の特徴が、岐阜県のゴルフ場で亡くなったシマウマの縞と合致することに気がつきました。年齢も合います。

 翌日の朝、天王寺動物園に確認したところ、亡くなったシマウマは同園から搬出したもので間違いないとの答えが返ってきました。名前は「バロン」。

 まさか天王寺動物園のような有名動物園が、今回の移動動物園業者のようなところに動物を放出しているとは驚きですが、3月22日まで同園にいたことは間違いありません。

 同園はバロンの譲渡先を見つけることができず、他の動物とまとめて動物商と動物交換を行ったとのことでした。バロンの譲渡先を決めたのは動物商であり、天王寺動物園は報告を受けただけですが、行き先の施設がどのようなものかの確認もせずバロンを搬出してしまったのは、やはり天王寺動物園の過失ではないでしょうか。

 シマウマを逃がした乗馬クラブには、死亡の当日、愛知県の動物愛護行政が立入を行っており、報告の提出を命じるなど指導中の状況ですが、やはりシマウマのために用意した施設が不十分なものだったことが原因というのが、今のところの見解です。


シマウマの死亡は、動物園の余剰動物問題の延長だった……

 そもそもバロンの繁殖自体が不幸であったと思います。オスであるために、もらい先もなく同園からも出さなければならない。要らなくなる動物が出るとわかっていても繁殖を行い、将来手放す動物であっても集客のため何かと広報する動物園。結局譲渡先は確保できず、動物商だのみ……。

 動物園は、本当にこれでいいのでしょうか。今、動物園業界が騒いでいる「動物がいなくなる!」は、「ほしい動物がいなくなる」の意味であって、いらない動物はいらないままなのです。こういう動物たちは、余剰動物と呼ばれています。

 天王寺動物園の広報誌のサイトに載っている、あどけないバロンの写真を見ると、胸がつまります。お母さんと引き離されて、見知らぬところでトラックから降ろされ、とても怖かったから逃げただけなのに……。まさか、たくさんの人間に追い掛け回されて死ぬことになるとは、思っていなかったでしょう。

 これは本当に悲しい出来事でした。でも、他の多くの余剰動物たちが、譲渡先で「生きていても地獄」の生を送っていることも、忘れてはいけないことなのです。


捕獲にも助言ができたのでは… 

 天王寺動物園によれば、シマウマを何もないところで捕獲するのは難しく、柵のあるところなど、どこか捕獲できるような場所に追い込んで網などを使う必要があるとのことでした。

 バロンが逃げたことは知っており、到着までに時間がかかるので出動しなかったとのことですが、遠隔から指示を出すことはできたと思います。バロンを助ける気持ちがあれば動けたのではないでしょうか。

 バロンは、天王寺動物園では、飼育員が直接接することのない間接飼育で育てられており、お母さんも一緒に暮らしていました。インターネット上に残っている移動動物園業者のツイッターの投稿によると、天王寺動物園内で3月8日から馴致作業をしていたかのようですが、これはあくまで移動用の檻に慣らす作業を開始しただけの話です。

 人間に慣れている馬とは違うのですから、ある程度シマウマのことを知っている園の協力が不可欠だったのではないかと思います。


大阪市に抗議書を送付しました

 きちんとした施設を用意できない業者に動物を放出したこと、そもそも余剰動物が生じるような繁殖が行われていること、また捕獲作業に関与しなかったことについて、大阪市に対して抗議書を送りました。

 私たちは、この事件が天王寺動物園、ひいては動物園業界全体に改善を及ぼすものであって ほしいと願っています。

この特集について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する特集です。
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