犬にとって癒やし?それとも迷惑? 意外と知らないトリミング

街を歩いていると、ガラス張りのお店の中で台に乗せられた犬が、毛をカットされているのを見たことがありませんか?そう、犬の美容院です。「犬に美容院なんて必要?!」と思う向きもあるでしょう。しかし、これは単なるおしゃれではないのです。(ライター 福田優美)



 1匹の犬が、健康で充実した一生をおくるためには、どのくらいの費用がかかるのか? シーンごとに犬の飼育にかかわる費用について解説するこのシリーズの第4回は、「トリミング」についてです。聞いたことはあるけど、具体的に何をするのかイメージがわかない人も多いかもしれません。トリミングとはどういうものなのか?必要な犬種や頻度は?そのほか、実際にトリミングサロンで行われている施術について、見てみましょう。

①トリミング

 街角のトリミングサロンをのぞくと、トリマーと呼ばれる犬の美容師さんが、器用に犬の毛を切ったり乾かしたりしている姿を見ることができます。トリミングとは、シャンプーやカットなどで動物の毛を整えること。もともとはヨーロッパで、狩猟犬であるプードルや害獣駆除犬であるシュナウザーが動きやすいように、必要なカットを施していたのがはじまりです。犬がペットとして飼われるようになり、実用的な理由からではなく、外見の美しさをより際立たせるために行われるようになりました。

 コンパニオンアニマルとして人間と犬が共存する現在、トリミングは単なる見た目の美しさのためだけではなく、清潔さや犬の皮膚を正常に保つため、という意味合いもあるようです。特に、ヨーロッパ原産の犬種にとって、高温多湿の日本では皮膚のべとつきや、皮膚病予防のために必要不可だと言われています。

 トリミングサロンで行われるサービスは大きく分けて①シャンプー、②カット、③グルーミングの三つです。このうち、カットが必要なのはプードルやポメラニアンなどの長毛種。柴犬やブルドッグ、スムース・チワワのような短毛種は必要ありません。「SJDドッググルーミングスクール」の鈴木雅実代表はこう話します。

「犬種にもよりますが、犬の毛は1日に約0・023mm、1カ月にするとおおよそ1cm伸びる計算です。1カ月から1・5カ月に1度サロンへ通うことで、カットやブローがしやすい健全な状態を維持できますね。あまり長く放置しすぎると、毛が絡まって毛玉になるんです。毛玉は皮膚が常に引っ張られている状態。痛みや赤み、皮膚疾患の原因です。こまめにカットされていない犬の肌が赤いことが多いのはそのためです」

 一方でシャンプーは、全ての犬種において必要です。シャンプーは、皮膚のトラブルやにおいの原因を取り除き、皮脂がたまるのを防ぎます。鈴木代表によると、シャンプーが十分でない犬は皮脂が過剰にたまっていることがあるそうです。そうなるとハードなシャンプーを使わないといけないことがあり、ひどい場合には丸刈りにせざるを得ない事例もあると言います。

 愛犬のシャンプーは自宅でしたいという飼い主向けに、ペットサロンなどでは犬用シャンプーが販売されています。自宅でのシャンプーは、サロンよりも経済的、かつ犬とのコミュニケーションにもつながります。鈴木さんによると、

「自宅でシャンプーが可能な場合はそれでも問題はありません。ただし、しっかり乾かす自信がないのであればサロンへ連れて行ったほうがいいでしょう。特にプードルのように毛がカールしている犬種の場合、自然乾燥は毛玉の原因になります」

 洗うよりも乾かすほうが大変。そのため、トリミングサロンではブローに時間のかかる犬種ほど、料金を高く設定しているようです。

 以下はカットまでが必要な代表的な犬種とその平均価格です。東京都内のトリミングサロンを参考にしているので、地方によっては大きく下回ることも考えられます。また、サロンによっては、最低金額と最高金額で2倍近くの差が開くこともあります。ご予算や好みに合うサロンを探してみましょう。

②グルーミング(犬のケア全般)

 トリミングサロンで行うことは、トリミングだけではありません。ほぼ全てのトリミングサロンが行っているのが、爪切り、肛門腺絞り、歯磨き(デンタルケア)など、犬の体調管理です。これらは「グルーミング」と呼ばれるものです。

 実は、トリミングもグルーミングの一種なのですが、日本ではトリミング及びトリマーという言葉が浸透し、グルーミングは単に手入れや、ケアなどと呼ばれることが多いのです。

 そもそも、グルーミングは、犬が家畜化したことで必要になったものばかりです。たとえば、爪は、犬が土の上で生活していた頃は、自然に研がれるものでした。しかし、一日のうち数時間しか散歩に出歩かない犬にとって、爪は切らなければいけないものになったのです。

 歯磨きも同様です。自然界の犬が歯磨きをするはずもありませんが、それは食べるエサの違いによるものです。生肉をかみちぎるように食べる野生の犬と、人間が作ったペットフードを食べるペットでは、食べる物も、そこに含まれる酵素も、歯の使い方も違います。そんなわけで、人間同様いろいろなケアが必要になったというわけです。

 これらのケアは単品で受けさせることも可能ですが、その他のケアとセットになって割安になっていることもあります。犬や飼
い主によっては、自宅ですることも可能です。どれも慣れればできるものですから、子犬の頃から少しずつ習慣づけておきましょう。

③その他のオプションサービス

 全国で登録されている第1種動物取扱業者のうち、トリミングサロンにあたる保管業は1万7493件にのぼります(2014年4月1日現在、環境省調べ)。トリミングサロン業界では、よその店に負けないよう各店しのぎを削っているようです。

 トリミング、グルーミングにこだわる店もあれば、お迎えサービス、施術後の写真撮影など、従来のケアの枠を超えるサービスを提供する店も目立ちます。また、ペットホテルやしつけ教室を併設し、そのまま預けることができるサロンもあります。サービスの種類は無限とも言えるので、ここではその一部を紹介します。

・マイクロバブル(ナノバブル)
 極小サイズの泡のシャワーや温浴で、毛穴の汚れを取り落とすもの。皮脂がたまりやすい犬におすすめです。一方、使いすぎると皮脂を過剰にとってしまい、乾燥の原因になることも。フケが出だすと乾燥のサインなので、その時は控えたほうがよいでしょう。

・炭酸泉
 炭酸が入った水でシャワーや温浴をするもの。毛を柔らかく、ふわっとさせる効果があります。炭酸泉は血管を広げ、血行を良くすることから、人間の糖尿病患者の治癒にも使われています。とは言え、犬はもともと血行がいい動物。やりすぎるとかえって体に悪影響を及ぼす可能性も否定できないので、心臓が弱い子にはむやみに行わないほうがいいかもしれません。

・パック
 人間は肌質をきれいにするためにパックを行いますが、犬にとってのパックは、毛質を改善するためのものです。ハーブパックや、クレイパック、泡パックなどいろいろな種類がありますが、基本的には、毛をサラサラに柔らかくすることを目的としたものです。種類が豊富なので、好みの香りや効用などから選びましょう。

 以上が、トリミングサロンで行われているサービスの一部です。いずれも人間顔負けで、「お犬様時代」の再来と思えるものまであります。前出の鈴木代表によると、飼い主に人気なのはやはり犬の健康や美容面で、即効性のあるメニューだそうです。

まとめ

 以上が、トリミングに関する基本的な情報です。ゆくゆくは、愛犬をサロンに連れて行きたいと考えている場合は、なるべく若いうちから体験させておいたほうがいいようです。

 トリミングサロンデビューは、初年度のワクチンが終了したら、いつでもできます。最初は爪切りなど短い時間でできる施術から始め、少しずつ慣れさせることで犬も受け入れやすくなるでしょう。ほとんどのトリミングサロンでは、毎年、ワクチン証明書の提示が求められます。これは狂犬病をはじめとする病気を蔓延させないために大事なことですので、必ず守ってください。

 トリミングサロンの中には、プードル専門、シュナウザー専門など、専門性を打ち出しているサロンがあります。こういったサロンでは特定の犬種のカットに自信がある、あるいは、ドッグショーで活躍する有名なトリマーが在籍しているなど、他店とは違う強みを持っています。いろいろなカットを楽しみたい、個性的なカットをさせてみたいという方は、そういうサロンに行くのも犬との生活をより楽しむ方法の一つです。
凝ったカットや過剰なサービスは必要ない、という方でも、飼い犬と相性の良いトリマーを探すのは大切です。

 いずれにせよ、トリミングの必要・不必要と、その頻度は犬種によるところが大きいと言えます。トリミングを面倒と感じるか、いろんなカットができて楽しいと感じるか。特定の犬種を検討している場合は、飼う前にそのあたりまで考慮したほうがいいかもしれません。犬を飼うときの基準の一つにしてみてください。
 
sippo
sippo編集部が独自取材した記事など、オリジナルの記事です。

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