自衛隊ヘリが犬を一緒に救助 「置いてこられず」 関東豪雨

 台風18号の影響による関東・東北地方の豪雨は、鬼怒川の堤防が決壊するなど、死者7人という大きな被害をもたらした。被災された方々に心からお見舞いを申し上げたい。

 私はちょうどその日、海外出張のために日本を離れていたが、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)の2頭の災害救助犬、夢之丞とハルクを含むレスキューチームは、9月10日に広島を出発し、捜索・救助のため被災地に向かった。私は出張先に着いてすぐ堤防決壊の報を受け、日本に残らなかった自分の判断ミスを呪いつつ、現場に指示を出した。

 1年前の広島土砂災害以来の国内での出動となった今回の水害では、夢之丞とハルクの出番は結局なかった。茨城県常総市の現場に到着してからも水かさが増えるという難しい状況のなか、チームは11日早朝から、孤立した老人福祉施設にゴムボートや水陸両用車を使って職員や物資を運んだり、企業から提供された支援物資を避難所に届けたりした。

 この水害で気になったことの一つが、被災地域で飼われていたペットたちのことだ。チームメンバーの報告を聞くと、避難所に犬や猫を連れてきている人は数えるほどしかなく、保護団体が提供するペットの一時預かりサービスを利用しようとする人もほとんどいなかったという。

 茨城県内だけでも1万件以上が浸水被害を受けたとされる被災規模から考えると、避難先でスタッフが見かけたペットの数はあまりに少ない。おそらく、人が逃げるのに精いっぱいで、家に取り残されて水害の犠牲になった犬や猫がたくさんいたのではないか。そう思うと、愛犬家の一人として胸が詰まった。

 一方で、濁流にのまれた家の屋根から、飼い主と犬が一緒に自衛隊のヘリで救助される映像には、思わず目が釘付けになった。無事救助された女性は「自衛隊の方に『お願いします』と言って(犬を)連れてきた。子どもの犬なので置いてこられなかった。本当にほっとしました」と話していた。大切なパートナーを助けてもらった女性の実感だろう。

 この映像はネット上でも話題になり、緊迫した人命救助の局面で犬を助けることに賛否両論が渦巻いたが、「一緒に暮らしているペットは家族同然だ」「命の重さは一緒だ」など、多くは肯定的な内容だった。私も同感だ。PWJが人命救助に取り組むなかで、救える限り動物の命も救っていきたいと、あらためて思った。

大西健丞
1967年生まれ。NPO法人「ピースウインズ・ジャパン」代表理事。広島県神石高原町にシェルターを設け、捨て犬の保護・譲渡活動に取り組むプロジェクトを運営している。

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この連載について
大西健丞のピースワンコ日記
NPO「ピースウインズ・ジャパン」代表の大西健丞さんが、殺処分ゼロをめざして犬の保護活動に取り組む日々を語ります。
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