横須賀の小学校で解剖実習を廃止 解剖の是非を問う


 青少年による凶悪犯罪やいじめなどが大きな社会問題となり、「命の大切さ」を子どもに伝えることが一層重要視されています。それにもかかわらず、学校で教師が子どもに、動物を切り刻み、殺すという残虐行為「解剖」をさせることが後を絶ちません。

 神奈川県横須賀市にある「横須賀学院小学校」で2013年、6年生を対象にしたカエルの解剖授業が行われたことがわかりました。この小学校のウェブサイトには、「解剖すなわち『命を学ぶ』授業です。」「切り取っても動き続けるカエルの心臓に、子どもたちの驚きと畏敬の念の混じった眼差しがありました。」など、教師が書いたと思われる報告が出ていました。


解剖は義務付けられてはいない

 JAVAではこれまで、多くの学校の解剖実習を廃止させてきました。しかし残念ながら、授業の一貫として、いまだ実施しているところがあります。文部科学省の学習指導要領では、解剖実習は義務付けられていません。解剖をさせるか、解剖以外の方法で学ばせるかは学校や担当教師の判断で決めることができるのです。

「可哀想だからやりたくない」という気持ちを押し殺したり、生き物を殺す罪悪感に苦しんだり、動物の体を切り刻む光景がトラウマになったり……。そんな辛い思いをしながら「成績に響く」とか「教師に嫌われたくない」といった理由で、嫌々、解剖実習に参加し、深く傷ついている生徒は多いのです。


海外では解剖を禁止する国もある

 欧米では、従来は動物実験が必要不可欠と考えられていた大学の獣医学部や医学部においてさえも、「動物を殺す非人道的な教育を拒否する権利」を多くの学生たちが主張し始めた結果、動物実験を廃止して代替法を用いる学校が急増しました。実際、アメリカとカナダでは、獣医学校の約69%以上(32校中22校)が動物を犠牲にする実験・実習をしないで卒業できるようになっており、医学校の約98%(188校中184校)が生きた動物を用いるカリキュラムがありません。

 初等中等教育での解剖実習については、フランス、オランダ、デンマーク、スイス、アルゼンチン、イスラエル、スロバキアなどでは、解剖実習を法律で禁止するなどの規制を設けているほどです。


動物虐待と凶悪犯罪には深い関連性がある

『動物の愛護及び管理に関する法律』は、1999年に初めての改正がなされましたが、この改正法が制定されるに至った背景には、頻発する青少年による凶悪事件があります。東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤元死刑囚、神戸連続児童殺傷事件の酒鬼薔薇と名乗ったA少年、さらには、佐賀のバスジャック事件の犯人とされる少年などが、殺人事件を犯すその前段階において、小動物の虐待を行っていたという事実が判明したからです。

 最近では、長崎県佐世保市で同級生を殺害した女子高生が、その前段階において繰り返し猫などを解剖しており、また人間の解剖にも興味を持っていたことが報道されています。また、川崎市における中学1年生殺人事件の被疑者の少年も猫やハトを虐待していたとの報道がされています。

 解剖実習がきっかけになって、小動物への虐待行為、さらには人間に対する犯罪へとエスカレートする恐れは多いにあるのです。

 教育基本法には、「生命を尊ぶ態度を養うこと」も教育の目標として規定されています。小学6年生の学習指導要領にも「理科」の目標として「生命を尊重する態度を育てる」と、そして、道徳の内容として「生命がかけがえのないものであることを知り、自他の生命を尊重する」と示されています。

 解剖はこれらの目標に真っ向から反する授業です。「生き物を殺すことによって命の大切さを知る」「解剖もその学習方法の一つ」といった考えが通用するならば、動物虐待犯や動物虐殺を繰り返したうえに殺人を犯した者たちは、命の重さを知った心優しい人間ということになってしまいます。


動物を使わない学習方法が、子供たちにとって最適

 動物を解剖しなくても、生き物の体の仕組みを学ぶ方法には、コンピュータを使用した学習法、ビデオ、3Dの模型など様々あります。そのような代替法を使用すれば、何回でも繰り返しでき、また児童一人ひとりが自分のペースで学習できるなど、多くのメリットがあります。

 解剖を行った場合と代替法で学んだ場合とでは、その知識に差はない、むしろ、代替法で学んだ場合の方が優秀であったことが、海外の研究で証明され、論文が発表されています。つまり、子どもたちに生き物の体の仕組みを学ばせ、知識を身に付けさせたいと本気で考えるならば、こういった、動物を使わない方法で学ばせるべきなのです。

 JAVAは2014年5月、解剖のこうした問題点を指摘し、横須賀学院小学校には二度と解剖を行わないことを求めました。

 後日、横須賀学院小学校の校長からは「今後一切、動物の解剖授業は行わない」との回答がありました。また、この小学校の運営母体である学校法人横須賀学院に所属する中高一貫校、高等学校についても「中学・高校では解剖の授業カリキュラムはない」と確認でき、横須賀学院の児童徒たちは、これから解剖をやらされないですむのです。

JAVA
NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)。1986年設立。動物実験の廃止を求める活動を中心に動物の権利擁護を訴え、世界各国の動物保護団体と連携しながら活動している市民団体。
この特集について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する特集です。
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